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029 目覚め

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 目が覚めると俺はふかふかのベッドの上で仰向けになっていた。目の前は天井で見覚えがある。

 「ここは客室の天井か。ということは誰かに連れてこられたのか」

 あの後は途中で意識が朦朧として目の前が真っ暗になって、気を失ったんだっけ。
 外はまだ暗く、夜。まだ夜が明けてないのか、それとも明けて2日目の夜なのか。寝ていた時間が解からなければ、今の時間も解からない。
 部屋は近くに置いてある蝋燭が周りを薄暗く照らしている。
 そして、大きな傷を負った背中はしっかりと感覚があり、温かい。回復薬の効果が効いたのか。

 「というか、このままだったら誰が居るのか解からないな」

 まだどこか痛い場所があるのかもしれないから、ゆっくり起き上がる。
 
 「どっこいしょ」

 背中に何か違和感があるか不安だったが、特に違和感も痛みも無い。回復薬がしっかり効いた証拠だ。これだったら警備兵も何も言えないはず。それにしても、回復薬の効果は凄まじいな。あんな傷も治せる事が可能とかデレシの病も治せそうだが、そう簡単にはいかないんだな。
 誰かに依頼するぐらいなんだから、回復薬を飲んだりして効果が無かった証拠。
 そして周囲を見渡す予定だったが、目の前に居る子が居たことでこの部屋には2人しかないと自然と理解できた。

 「リューには少し辛い事をさせてしまったかな」

 リューは俺が寝ていたベッドを枕にして、すうすうと寝息をたてながら寝ている。精神的にも体力的にもきつかったのか。それとも食後だったから眠たくなったのか。俺には解からないが、幸せそうな表情で眠っていた。
 そして何故か無意識にリューの頭を撫でたくなり、手が頭向けて伸びる。

 ぽんぽん。

 俺が眠っている時ずっと看病してくれたんだな。ありがとう。
 すると感謝の気持ちが伝わったのか、ふふふっと嬉しそうに眠りながらも微笑む。そして、夢で何か起きているのか俺の手を握り頬にすりすりと擦り出した。

 「コウさん~コウさん~温かいです」

 夢の中の俺はどんな事をしているんのか。少し気になるが、寝ている邪魔をする訳にはいなかいしな。
 結局のところ、そっと腕をリューから引き離そうとしたが、さらにぎゅっと握られたので逃げようにも逃げれなかったので、邪魔は出来なかった。
 
 「で、俺はいつになったら抜け出せるのかな」
 
 随分寝たからなのか、眠気は全く無くない状態。
 そして、リューが手を離してくれない限り、俺に自由の時間は無い。
 これは……スーパーハイパー暇状態に予感しかしない。祖を見たら、まだ夜は明けない様子。
 手をゆっくり抜いてリューの睡眠を邪魔しなければ良いんだ。そうだ。そっと引き離せば良いんだ。

 リューはまだ幸せそうな顔で夢の世界に入っている。
 今がチャンスだ!
 ゆっくり、ゆっっくりリューの手から手を引き離す。

 「むにゃむにゃ~」

 そして、リューの手から自分の手を離すことに成功する。睡眠の邪魔をしておらず、一瞬寂しそうな顔になったがそれはきっと夢の中の俺が何かしたのだろう。そうに違いない。
 やっと自由になれた俺は、まず状況確認をすることした。確認することは、今の日にちと時刻。俺はあの後どうなったか。もし、俺が倒れてから数時間しか経っていないのなら、もしかしたら皆食事をした場所にいるのかもしれない。まず最初にそこに向かう。そこに誰も居ないのなら、デレシの所……はやめておこう。あの人は病人だ。こんあ夜遅くに訊ねたら睡眠の妨害になってしまう。
 食事をしたところに居なければ、状況確認は諦めよう。

 リューお起さないようにゆっくり扉を開け。ゆっくり閉めて目的の場所へ向かう。
 皆食後で城内の仕事は終わったのか、廊下には誰も人は居ない。人気すらない。
 これは全員寝た可能性が高いな。
 それでも、食事をした場所に居るという可能性を信じて向かう。
 角を曲がった所で、廊下の奥のほうから誰かの話し声が聞こえる。耳を澄ませれば複数人の声にも聞こえる。もしかしたら、まだ居るのか。だったら、俺は数時間ぐらいしか寝ていないのか。時計が無いので、もしかしたら1時間も寝てないのかもしれない。
 声がするなら、期待はかなり高い。

 食事をした所へ近づく程、話声はだんだん大きくなる。遠くに居る時は複数人いるかもしれないと、可能性だったが、近くに行くと複数人の声がして確実に居る。

 「コウ様がこれで本物だと解かりましたでしょう。最初から信じないから今回こういう事態を招いたのです。貴方達には反省してもらいます」

 これはマールの声だな。
 食事をした場所に入る入り口付近で会話を聞いているが、もしかして反省会なのだろうか?

 「デレシ様は怒っています。貴方達の行為を今までは目を瞑っていましたが、今後このような客人に失礼な事をした場合は解雇をする可能性。そして、最悪王に報告することになりますので言葉、行動には気をつけるように」

 どうやらあの警備兵達は普段から客人に突っかかる行為をしていたらしく、それで今回でデレシの我慢は限界に達したらしい。流石に俺みたいに突っかかってはいないと思うけど、客人に色々と突っかかるのは不味い。普通は1発でクビなるところがデレシの優しさで何とか首が繋がったところ。
 それはあの場に居る者全員。デレシが言っている事は『貴方達の代わりは沢山居るんだよ』と言っているようなものだ。

 空気は重いかもしれないけど、そろそろ出て行かないと。入った後の反応を想像しただけでも入るのを躊躇してしまうが、そこは仕方ない。

 そして、部屋の中に足を踏み入れる。

 「これで回復薬は本物だと理解できましたか?」

 第一声は何にすれば良いのか迷ったが、ここはまだあの話の続きだとしよう。
 その方が面倒なことには巻き込まれないのかもしれない。

 「あ、あれ? どうしましたか?」

 全員何も言わずに、ただただ俺に視線を送るだけ。特に大きなリアクションもすることなく、ただただ口を半開きにして、こっちを見ている。マールとデレシは特に大きなリアクションをすることなく、微笑んでいたが。

 「お、お前生きているのか」
 「生きているから今こうして目の前に居るのでは?」

 突っかかってきた警備兵が指を指しながら、質問してくる。俺が突然現れたから頭がよく働かないのか、当たり前の質問をぶつけてくる。現実を受け止めてられてないのか、それとも自分がした事に責任を負っているのか怖がっている様子。指は震えて、歯もカタカタと震わせてる。

 「これで私が本物の薬師で回復薬も作れる薬師だと解かったと思います。私はデレシ様の病の期限までに治せる薬を作ります。私は他の薬師とは違います。なので、私を信じてください」

 俺っぽくない事を言っているような気がするが、今は大丈夫だろう。言っていることは本当だし、今回の依頼もこなすつもり。迷宮完全攻略が出来なくても、何とかして薬を作る。

 「では私は明日の準備の為、ここで失礼します」

 その場で礼をし、後ろからの言葉も無視して堂々と客室に戻る。
 そして、その後俺は2度目の眠りについた。
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