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しおりを挟む私、神崎智啓(かんざきちか)と隣の席でぐっすり眠る彼、杉浦陵一(すぎうらりょういち)は、この学校じゃ知らない人はいないってぐらい有名なカップル。
でも本当は、カップルなんかじゃなくて陵一から持ち出された話に乗っただけの偽造のカップル。
でも、どうしてそれがバレないか。
そんなの簡単なことだ。カップルとしてやるべきことはやっているから。
デートもキスも。………体を重ねることだって抵抗さえ無く終えた。
元々、陵一の好きな人は私ではない。
今、私の友人である稲葉陽綺(いなばはるき)のことが好き。
私と陵一、陽綺に來優は謂わばいつメンと言うもので、友人のことを好きになる陵一の気持ちは分からなくもない。
何故なら、私も陵一のことが好きだから。
「智啓、HR終わったよ?」
「……あっ、ボーッとしてた。陵一起きて。」
陽綺が友人として触れる陵一と、私が彼女として触れる陵一。
陵一としてはどちらが嬉しいのだろう。なんて考えたこともあったけれど前者なのは間違いない。
「…んぅ?……ふぁぁああ、よく寝たわ」
……ねぇ、陵一。
貴方が陽綺の事好きなら、私の気持ちわかってくれてもいいんじゃないの?
なんて、私の八つ当たり。
陵一は私のことを友人としか見ていないのも確か。それなのに、体を重ねることができるなんて、なんて冷たい人なんだろう。
「またな~、陵一、智啓」
「じゃあね、ほら陵一帰るよ」
來優に声をかけられて、私は陵一の腕に触れる。
………冷たい人なんて思っててもやっぱり、好きなのよ。
嘘をついてでも隣にいたいと思う。
嘘で固めても私を欲して欲しいと思う。
陽綺が羨ましくて、仕方がない。
*○*○*○
「……ねぇ、陵一……」
「んー?」
私と陵一は、帰路を終え今私の家で寛いでいる。私が貴方の名を呼べば貴方は優しくきき返す。
じゃぁ、陽綺が貴方の名を呼んだら、貴方は私の声さえ届かなくなるのだろうか。
「……キスしてよ…」
「…智啓、どしたの?」
「………私のことを…欲しいと思ってよ……」
「………」
キスをしたのだって私から、キスをせがむのも私から。
それも当然の話。
勿論陵一は、2人っきりでいる時に私のことを女だと見たことは無いのだから。
「……智啓…」
「…りょ、い……んっ」
私を利用して
もっともっと利用して、陽綺の事なんて頭からなくしてよ。
段々と激しくなる舌の動きと、息が上がる私。
陵一は楽しそうに微笑んで、私をソファーへと押し倒す。
その熱っぽい目線も、子供のように必死になる姿も、苦しそうなその顔も、男らしいその体も、腕も、今だけは私のものだと思わせて。
「………はるっ、き……」
「……っっ」
『……智啓、俺と付き合ってよ。』
『……いいよ…』
あの日、涙を流した貴方に同情して付き合うんじゃなかった。なんて胸が痛くなることもあるけれど
愛してるの、貴方を。
……だからこんなにも、苦しいの…
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