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「第四章:勇者一人前」

「レインの告白」

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 ~~~レイン・アスタード~~~



 ──んでさあ……わかるかよ!? その権利ってのにはさあ! 自由ってのにはさあ! 好きなコのために生きる権利と、死ぬ自由もあるんだよ! それは永久不変で! 誰にも取り上げられないもんなんだよ! いやいやいや、今まさに俺が具体的に誰を好きとか、そうゆーのがあるわけじゃないぜ!? あるわけじゃないんだけど……でも! このコは死なせたくないなとか、俺はともかくとしてこのコには生き延びて欲しいなとか、そうゆー気持ちはあるんだよ! ふつふつ湧いてくるんだよ! 動かしがたいものなんだよ!

 勇者様のその言葉は、ボクにとって予想外のものだった。
 初めて聞いた、そうゆー話・ ・ ・ ・ ・
 誰が好きとか、そのためにどうしたいとか。
 死の瀬戸際せとぎわになってあふれ出て来た、勇者様の本音、勇者様の男の子な部分。
 
「へっへっへ……」

 ボクは笑ってしまった。
 顔が赤くなって、体が熱くなって、笑みがこぼれた。

「えっへっへっへ……」

 おかしかったんだ。
 と言っても、勇者様のことがじゃないよ?
 おかしいのはボク自身のこと。

 だって、ボクは思ったんだ。
 勇者様が思う、自らを犠牲にしてでも生き延びて欲しいなって女の子。
 それがボクだったらいいなって。

 アールでなくて。
 ベラさんでもなくて。
 このボクだったらいいなって、思ったんだ。

「……あーあ、おっかしいね」

 目の端に浮いた涙を拭いながら、ボクは言った。
 
「まさか、こんな状況で気づくなんて。もっといい雰囲気の時だったらよかったのに」

 認めよう。
 もう、認めるしかない。

「……あのね、勇者様。ボクはね?」

 けれどまだ、恥ずかしいから── 
 誰にも聞こえないよう、小さな声でつぶやいた──

「キミのことが好きみたいだ」

 つぶやくと、かっと体が熱くなった。
 体の底から力が湧いてきて、居ても立っても居られなくなった。

 だけどもちろん今は傷の治療に集中しなきゃだから、ボクは深呼吸して気持ちを静めた。
 頭の中でカウントダウンを始め、自らの戦線復帰のタイミングを、ジャカとパヴァリアを刺すべき最適のタイミングを計り始めた。



 ──傷の回復まで、あと60秒。
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