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アーミーナイト入学編

第7話 告げられた事実

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 微笑交ざりに、その場に居合わせた人全員に一気に鳥肌を感じさせるほど恐怖を感じらせる程の低い声。だが、それにはまるで暗殺者を思わせる殺気をたっぷりと含ませ、全員に聞こえるように言い放つ。今まで吹きやむことのなかった春風も凍りついたように、草花が揺れる事もない。

彼?がゆっくりと手をあげ、顔を隠していた兜を両手でゆっくりと空に向かって動かすだけの動きだけでもその流暢な全ての動きが洗練されているのが感じ取れた。百戦錬磨が故に溢れ出る強者としての余裕であり、自信。その姿にシルは先ほどまでの威勢は綺麗に流れ落ち、ただその場でじっと黙って座っていることだけで精一杯に陥る。

 上から降り注がれる太陽の光が、次第に仮面の下に隠されていた姿を露わにさせていく。シルは口元が露わになったその瞬間に、再び大きな絶望を味わうことになった。

何故なら彼が明らかに

顔いっぱい横に広がった巨大な口で微笑を浮かべることで少し口元が緩んでいるからか、その隙間からはまるで鮫の牙を彷彿させるほどの鋭い歯がびっしりと並んでいるのが垣間見える。それもどれもが数多の生き血を吸ってきたかのように赤色が染み込んでおり、赤褐色を輝かしている。やがて、奴の顔の全貌が隠されていた兜から解放されていった。

口元だけでなく、瞬きすら必要としないのか真っ赤に充血させた目で戦場を舐めるように見渡す。その姿を直視したシルは声を漏らさずにはいられなかった。

「闇の副士官⋯⋯ なのか? 歴史書記の中でもその登場は限りなく少なくその存在すら疑わしかった闇の一族の後継者の次の実力者とも歌われるほどの実力を持っているという。同じ種である他の闇の一族からも恐れられるほどの恐怖と暴力の体現者。ふふふ・・・ははは!!!」

 伝記のなかでも名前しか出てこない伝説の悪魔の内の一人。気づけばシルは大きな声で笑い飛ばしていた。戦場が凍りつき、目の前の化け物二人が困惑して、こちら側に視線を送っているのが手に取るようにわかる。奴らはどうせシルの頭がイかれてしまっただけ、と考えているんだろうなとシルは思う。

実際その通りだった。この最悪としか言えない状況、手の打ちようがないシルに残されたのはこの状況を笑い飛ばすことだけだ。もはや命は無いに等しい。サキュバスだけでもシル1人では対応できず、今隣で気を失っているマシュが目覚めそれでも勝機はかなり少ないという状況だったのにも関わらず、そこに闇の副士官まで現れてしまった。その戦闘力は恐らくだがサキュバスの数倍以上。

そんなサキュバスに苦戦していたシル達が今度は闇の副士官に歯が立つとは思えない。そもそも、敵側サイドは2体に加え、周りでよだれをダラダラと地面にこぼしているゴブリン。それに加え、こちら側でまともに戦闘をできるのはシル一人だけ。もはやこうなってしまっては、そういう場に出くわしてしまった自分の不幸を嘆き、笑い飛ばすしか取れる行動が無い。

「失敬、お主は先ほど私のことを、守護者、そう呼んだな?」

一通り笑い飛ばして静かになった時に副士官がシルに向かって声をかける。

「あぁ、それがどうした。あの甲冑姿。あれこそ、まさに俺が小さい頃、書記を片っぱしから読んで思い描いていた守護者の姿を具現化したものだった。俺たちの心の拠り所、最後の希望。そして、お前らの人生に終止符を打つものだってな!」

 シルの咆哮にも奴は動揺一つ見せることはない。それどころか、この現場に現れて以降一番口元を歪ませ、鋭く尖る歯を露出させていた。なぜだか分からないが、奴は笑っている・・・のか?

「ふむ、いや不思議だなと思ってね。何故なら彼らは⋯⋯ !!」

 高らかにそう笑い飛ばす闇の副士官の目には嘘を言っているようには見えない。一切恐怖を浮かべない瞳がシルの身体を冷たく突き刺す。絶望に浸る反応を待っているようだったが、咄嗟のことでシルの思考は完全に停止してしまい、絶望を味わうことすらできなくなっていた。


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