40 / 42
40日目 約束の対価が重すぎるよ!!
しおりを挟む
「約束ってあれ? あの、登校中に話してた・・・」
「そう! それに決まってるじゃん!」
確かに、僕と一美はある約束をした。それは・・・僕の話し方を見れば分かるかもしれないが、大きく分けて二つのことを約束したんだ。一つ目は、呼び方。僕は、彼女のことを一美と呼び、彼女は僕のことを龍馬君と呼ぶことを認めること。
なんでこんなお願いをしたのかは、僕にも分からない。同じ部屋の八重樫さんに対して、何かしらの対抗心を燃やしているのは、流石の僕でも分かったが。それでも、次の要求が理解することができなかった。
「私と、君との間に隠し事はなし!もし、それを破ったら龍馬君が保健室で話してた寝言の話を、クラスを越えて全学年に向けて暴露する。もう忘れたの?」
「それさ、朝も話したと思うんだけど、僕だけがダメージ大きくない? 一美ノーダメージじゃん。仮に、僕に対して嘘をついてたとしても」
そう返すと、彼女は無邪気な笑みを浮かべてみせた。
コンコン・・・
つま先を地面にぶつけ、少しズレていた靴の位置を正す。話の方向性をリセットするように、高らかになった音は瞬く間の間に冷たい地面に吸収されていく。
「う~ん。その件なんだけど、私昼休みの間考えてたの! どうしたら、私と龍馬君の間に対等な約束事を結べるかなって!」
「昼休みに考えてくれてたの? あっ! もしかして、そのことに集中して、僕が厄介ごとに巻き込まれている時、見て見ぬふりをしてたんじゃないの!? 助け舟を求めるように、一美の方に視線を送ったのに!!」
「え? 私と昼休み目線合ってたっけ?」
「合ったよ!! そしたら、自分で何とかしなさい!、みたいな勢いで首を横に振られたよ? 証拠はないけど!」
「あ~、きっとあれね。色々考え事をしてて、これじゃないわね、って意味で首を横に振ったんだと思うわ。だって、龍馬君と目線が合ったの記憶にないもの。いい考えを思いついて、伝えようと思ったら龍馬君教室から姿消してたし!」
なるほど。どうやら、僕が彼女に見捨てられていたと言うことはなさそうだ。だけど、周りが見えなくなるまで必死に考え事ってするのか? そんなに考え抜かれて出された意見って、ちょっと怖いんだけど・・・。
「・・・それで、何か妙案でも浮かんだの?」
「浮かんだわ!!」
下駄箱に響き渡る大声。これは、簡単には発散していきそうになかった。この場所で残響がいくつも残り、遅れて鼓膜を何度も震わせる。
「もし、私が嘘を吐くことがあれば・・・龍馬君と付き合ってあげる! それなら、多分だけど釣り合うんじゃないかな?」
「対等通り越して、圧倒的に天秤が一美の方に振り切ったよ!!!」
今度は僕が大声を上げてしまった。久々の大声で、喉の奥が言い終わった後の今でも、少し痛い。でも、叫ばずにはいられなかった。だって、彼女の家は僕とは釣り合わないほど大金持ち。それは、身分の高い人で、イケメンな人からの求婚も引くて数多だろう。そんな彼女と付き合うなんて、約束の対等としても重すぎる!
「え? 私と付き合いたくないの?」
「そう言うことじゃないんだけど・・・。とにかく、もう一回ちゃんと考えてください。そして、もう一度話し合いましょう!」
「え~。結構真剣に考えたんだけどな~。誕生日プレゼントを選ぶときくらい!」
「その時の真剣さが、僕には分かりません・・・」
さて、こんな話をしながら、今日は帰路に着こうかと身体を出口に向けた瞬間。
「あ! こちらにいらっしゃいましたか・・。探しましたよ・・北村君」
「高野さん? 私たちに何か御用でしょうか? もう帰ろうかと話をしてたところなんですが・・?」
僕が返事を返す前に、一美が先に返事を返したようだ。二人の間になぜか火花散るほどの、視線の交錯が見られる。え、この二人って仲悪いのかな? なんて邪推をしてしまうほどの、睨み合いで合った。
「あなたには用はありません。私が、いつあなたに話しかけましたか?」
「一緒に帰ろうとしている友達に話をかければ、それは私にも声をかけたのと同義では?」
「埒が明きませんね。北村君! 先生が学級代表の件で招集をかけているんです。一緒に着いてきてもらえないでしょうか?」
「先生が——? それは、サボるのは無理そうだね」
「ちょっ、ちょっと! 先にしてた私との約束よりも、そこの女を取るわけ!?」
「そんな言い方しないでよ・・、一美。僕だって早く帰りたいけど、先生からの呼び出しを無視するのは良くないことじゃん」
「なら! 私ここで待っとこうか? すぐ終わるだろうし、なんなら付いていってもいいわよ!」
「部外者は早く帰ってください。それに、下校時間はとうの昔に過ぎています。学級代表として、強く!! 即刻帰宅することを言い渡します」
「あんたに聞いてないじゃない! 私は、男子学級代表の龍馬君に聞いているのよ!!」
この状況。僕に収拾をつけることはできるのだろうか。二人の罵倒は、まだまだ止みそうになかった。
「そう! それに決まってるじゃん!」
確かに、僕と一美はある約束をした。それは・・・僕の話し方を見れば分かるかもしれないが、大きく分けて二つのことを約束したんだ。一つ目は、呼び方。僕は、彼女のことを一美と呼び、彼女は僕のことを龍馬君と呼ぶことを認めること。
なんでこんなお願いをしたのかは、僕にも分からない。同じ部屋の八重樫さんに対して、何かしらの対抗心を燃やしているのは、流石の僕でも分かったが。それでも、次の要求が理解することができなかった。
「私と、君との間に隠し事はなし!もし、それを破ったら龍馬君が保健室で話してた寝言の話を、クラスを越えて全学年に向けて暴露する。もう忘れたの?」
「それさ、朝も話したと思うんだけど、僕だけがダメージ大きくない? 一美ノーダメージじゃん。仮に、僕に対して嘘をついてたとしても」
そう返すと、彼女は無邪気な笑みを浮かべてみせた。
コンコン・・・
つま先を地面にぶつけ、少しズレていた靴の位置を正す。話の方向性をリセットするように、高らかになった音は瞬く間の間に冷たい地面に吸収されていく。
「う~ん。その件なんだけど、私昼休みの間考えてたの! どうしたら、私と龍馬君の間に対等な約束事を結べるかなって!」
「昼休みに考えてくれてたの? あっ! もしかして、そのことに集中して、僕が厄介ごとに巻き込まれている時、見て見ぬふりをしてたんじゃないの!? 助け舟を求めるように、一美の方に視線を送ったのに!!」
「え? 私と昼休み目線合ってたっけ?」
「合ったよ!! そしたら、自分で何とかしなさい!、みたいな勢いで首を横に振られたよ? 証拠はないけど!」
「あ~、きっとあれね。色々考え事をしてて、これじゃないわね、って意味で首を横に振ったんだと思うわ。だって、龍馬君と目線が合ったの記憶にないもの。いい考えを思いついて、伝えようと思ったら龍馬君教室から姿消してたし!」
なるほど。どうやら、僕が彼女に見捨てられていたと言うことはなさそうだ。だけど、周りが見えなくなるまで必死に考え事ってするのか? そんなに考え抜かれて出された意見って、ちょっと怖いんだけど・・・。
「・・・それで、何か妙案でも浮かんだの?」
「浮かんだわ!!」
下駄箱に響き渡る大声。これは、簡単には発散していきそうになかった。この場所で残響がいくつも残り、遅れて鼓膜を何度も震わせる。
「もし、私が嘘を吐くことがあれば・・・龍馬君と付き合ってあげる! それなら、多分だけど釣り合うんじゃないかな?」
「対等通り越して、圧倒的に天秤が一美の方に振り切ったよ!!!」
今度は僕が大声を上げてしまった。久々の大声で、喉の奥が言い終わった後の今でも、少し痛い。でも、叫ばずにはいられなかった。だって、彼女の家は僕とは釣り合わないほど大金持ち。それは、身分の高い人で、イケメンな人からの求婚も引くて数多だろう。そんな彼女と付き合うなんて、約束の対等としても重すぎる!
「え? 私と付き合いたくないの?」
「そう言うことじゃないんだけど・・・。とにかく、もう一回ちゃんと考えてください。そして、もう一度話し合いましょう!」
「え~。結構真剣に考えたんだけどな~。誕生日プレゼントを選ぶときくらい!」
「その時の真剣さが、僕には分かりません・・・」
さて、こんな話をしながら、今日は帰路に着こうかと身体を出口に向けた瞬間。
「あ! こちらにいらっしゃいましたか・・。探しましたよ・・北村君」
「高野さん? 私たちに何か御用でしょうか? もう帰ろうかと話をしてたところなんですが・・?」
僕が返事を返す前に、一美が先に返事を返したようだ。二人の間になぜか火花散るほどの、視線の交錯が見られる。え、この二人って仲悪いのかな? なんて邪推をしてしまうほどの、睨み合いで合った。
「あなたには用はありません。私が、いつあなたに話しかけましたか?」
「一緒に帰ろうとしている友達に話をかければ、それは私にも声をかけたのと同義では?」
「埒が明きませんね。北村君! 先生が学級代表の件で招集をかけているんです。一緒に着いてきてもらえないでしょうか?」
「先生が——? それは、サボるのは無理そうだね」
「ちょっ、ちょっと! 先にしてた私との約束よりも、そこの女を取るわけ!?」
「そんな言い方しないでよ・・、一美。僕だって早く帰りたいけど、先生からの呼び出しを無視するのは良くないことじゃん」
「なら! 私ここで待っとこうか? すぐ終わるだろうし、なんなら付いていってもいいわよ!」
「部外者は早く帰ってください。それに、下校時間はとうの昔に過ぎています。学級代表として、強く!! 即刻帰宅することを言い渡します」
「あんたに聞いてないじゃない! 私は、男子学級代表の龍馬君に聞いているのよ!!」
この状況。僕に収拾をつけることはできるのだろうか。二人の罵倒は、まだまだ止みそうになかった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる