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31日目 表情に出やすいね

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 さぁて、回想はここまでだ。そんな状況ですやすやと眠れる男はこの世にいるのだろうか。いや、いないよ。きっと、いない。僕も、もちろんその例にもれることはなかった。今でも、彼女の柔らかな身体と、温もりが忘れられない。胸の高鳴りこそ抑えられたが、それ以外の興奮は夜を過ぎても消し飛ぶことはなかった。


「はぁ。なんで、僕だけがこんな目に・・・」

 そういえば、朝になって僕の身に起きた事象を説明していなかった。もちろん、八重樫さんも眠れる森の美女ではない。朝になれば、ちゃんと目を覚ます。まぁ、彼女が目を覚ましたのは、朝の5時という信じられないほど健康的ではあったが。

「はぁぁ。また——朝になってしまったのね・・・。って、キャァーー!!!!!」

 断じて、僕は目を閉じていた。彼女が目を覚ます兆候を見せたあたりから、狸寝入りをしていたのだ。だが、彼女にとって、僕が同じベッドに転がっているという状況が、既に許せないものだったらしい。この部屋が、誰のものか確認する前に、強烈な痛みが僕の頬を打った。

「いてぇぇぇ!! 女子の平手打ちってこんなに痛いのか!?」

 心の中で、涙と共にそう叫ぶ。だが、決して言葉にすることはなかった。言葉にして、彼女に起きているということが分かってしまうと、もっと激しいものが飛んでくるような気がしたから・・・。

「おはよう!! あれ、なんか表情暗くない? もしかして。夜更かしでもしたの?」

 気がつけば、かなりの距離を歩いていたみたいだ。いつの間にか視線の先にある学舎の姿に少し驚きを覚える。そして、背中をポンッと押して、挨拶をしてくれた赤い髪の彼女。瞬時に体調不良を見抜かれてしまうところが、何でも表情に出てしまう僕らしい。僕は、一つため息をつくと、彼女に挨拶をし返すのであった
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