上 下
25 / 42

25日目 小さすぎる声〜照れを添えて〜

しおりを挟む
「それで、その向かいが私の部屋。出来る限り、入ってこないようにお願いしたいわね。一応、私の私物なり、着替えとかも置いてて見られて気持ちのいいものじゃないの。これは別にあなただからと言うわけではないわ。常識的に考えての話ね」

 一通り自分の部屋で満喫して、廊下に出た時に生徒会長からそう声をかけられる。その顔は至って真剣だ。いや、それこそ当たり前の話なんだが。

「わ、分かってますよ。逆に、先輩には僕が人の部屋に勝手に入っていくような人に見えますか?」

「——それは分からないわね。人の心って中々読めないモンだから・・・」

 少し間があった気がしたぞ、今。え、僕ってそんな変態に見えるもんなのだろうか。決してそうじゃないと、ここで断言しておきたい気分だ。でも、彼女はそんなことを一切気にする様子はない。スタスタと歩き、突き当たりにある扉に近づく。そして、右手でドアノブを僅かに開け、扉の先を少し垣間見させる。

「見てわかる通り、ここから先は洗面所になるわ。まず、洗濯機やら洗面台があるこの場所。洗濯機は二台あるから取り合うことはないと思う。だけど、洗面台は一つしかないから、時間が重なると結構めんどくさいことになりそうね。早起きを共に心がけましょう。そしてなんだけど、この場所を起点として二つ扉があると思うんだけど、左手にある両開きの扉がお風呂につながっていて、奥にある小さな扉がお手洗いにつながっているわ。脱衣所は特に用意されてないから、この後にでも時間割をしておきましょうか」

「なるほど。分かりやすい説明ありがとうございます。玄関から続く廊下を見ると、この部屋って狭いのかな。って不安に思っていたんですが、そんなことはなさそうで安心しました。これは、快適に暮らせそうですね」

 笑みを浮かべて、僕は彼女にそう話しかける。しかし、返ってきたのは冷静な真顔から発さられる小さな声だった。それは、もはや呟きと同類。周りに騒音を上げるものもなく、限りなく静寂であったにもかかわらず、僕は彼女の言葉を聞き取ることができなかった。だが、彼女の頬が少し赤くなったことには流石に気づいたが。

「だって、この部屋、生徒会長仕様になっているから」

 彼女は、僕のことを右手で少し奥に押すと、そのまま何も言わずに共有スペースに戻っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...