上 下
12 / 42

12日目 式の後に授業があるのはおかしい!!

しおりを挟む
夕焼けに染まる山中の中舗装された通学路を僕は歩いていた。当然、背中にリュックに両手に旅行カバンと普通のカバンという荷物は変わらず、汗をかきながら朝と同様に歩いている、ただ、一つだけ朝の時と違うところがある。それは一人ではいないことだ。隣には先ほど僕に思いっきり尻餅をつかせた張本人でもあるこの学園の生徒会長であり、これから一年間相部屋として生活を共にするパートナーでもある、八重樫さんが歩いていた。

ちなみに、保健室にいたもう一人の女子学生。僕と同級生に当たる吉良一美と名乗った彼女は、「一美って呼んでね!」と衝撃の相部屋発言があった後に、自己紹介を兼ねてウインクを僕の方に飛ばしたが、その直後に保健室に入ってきた担任の先生に怒られながら連れて行かれた。どうやら式の後の授業を放棄してここに来ていたらしく、事前に八重樫さんに密告されてきていた先生が出るタイミングを見計らっていたのだとか。

連れて行かれる寸前まで、式があった日に授業があるのはおかしいと異議を唱えていた。だが、そのために寮制度を整えているんだと反論されると何も言わずにそのまま潔く連れて行かれていった。僕はこの後授業に参加した方がいいのかと先生陣に尋ねたが、体調のことを考えて今日はゆっくりしろという命令を受け、身支度を整えて保健室を後にした。

そんなことがあって、八重樫さんと二人で寮まで戻ることになったのだが、彼女はこの道をもう歩き慣れていると言わんばかりにスタスタと中々の歩速で進んでいく。僕はそれに遅れないように必死に歩くのだが、なにぶん彼女は全く荷物を持っていないので一人だけ息を荒くしている状況に陥っていた。時折、彼女は周りの風景であったり、この学園で有意義に時間を過ごしていく方法などを教えてくれたが、生憎僕の耳に残ることは無かった。頭にあったのは、いつになったらこのくそ重たい荷物を置くことができるのだろうか、という低レベルな考えのみだ。

 それを表情で察せられたのだろうか。彼女は今まで何の躊躇いもなしに歩いていたところを急に立ち止まる。そして、僕の方をじっと見つめて・・・見つめるだけで何も口にしようとしない。一体何があったのだろうか。もしかして、僕がアホみたいにかきまくっているこの汗の匂いが気になるのだろうか? もしそうなら今すぐ消臭剤を全身に浴びたいところだが、そんなものを今は持ち合わせていない。一人焦る僕だったが、そんなことを気にもしないように彼女はゆっくりと口を開くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...