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5日目 生徒会長って誰だよ
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「最後に。諸君らは今まで背負っていた学校の看板を下ろし、今日からはこの私立天龍丘高校の学生の一員として下界に暮らす庶民の皆様に対して見られるわけです。そのところをしっかりと理解した上での行動を取るよう常に自分に問いますようお願い申し上げます。これで校長からの挨拶は以上とさせていただきます」
長い。僕は思わずそうこぼしてしまいそうになった声を両手で制止する。クラス分けも何も聞かされないまま、とりあえず超豪華な体育館らしき建物に連れて行かれた。これは世間一般で言うところの体育館なのだろうか。僕はこの場に足を踏み入れたその時から疑問に思っている。天井にはシャンデリア。ステージに登る階段は黄金比に則った螺旋階段。いっそのことダンス会場として使った方が効果的なのではないだろうか。
しかし、周りを見渡しても他のどの学生もそのことを気にも留めていないようで各々がステージ上に立つ教師の発言を一言一句逃さない気迫を出しながら見守っている。正直な話、集中できないまま話を聞いているのは僕だけのような気がする。やはり、これもさっきの校長先生の言葉を借りれば庶民との差ってやつなのかもしれない。だが、僕のそんな空虚な思考の連続とは関係なしに入学式は着実に進んでいく。
気がつけば今回の入学式のプログラムの最後にまで差し掛かっていた。
「新入生代表、ありがとうございました。お立ちになった保護者の皆様は御着席ください。続きまして、今式の最後のプログラムになります。在校生とからのエールと称しまして、生徒会長より新入生に対してお言葉をいただきたいと思います。生徒会長の、八重樫 櫻さん。ステージの上にお願いします」
ここまで式を円滑に進めてきた進行役が最後の上段する生徒の名前を呼ぶ。途端に静まり返っている体育館に響き渡るはっきりと、それでいてどこか清楚を感じさせる声。声が一通り体育館の中を反響し終わると、その声の主はスッと立ち上がり、乱れぬことのないピンと天井から吊るされているのかと疑ってしまうほどの体勢を維持し、スタスタとその姿勢のまま螺旋階段まで向かう。
僕は思わずその姿を目で追ってしまっていた。後ろ姿しか見えないが、動く振動だけで左右に揺れる見ただけで心をときめかすサラサラの長髪。そして、すらっと伸びた高身長。全てがこれぞ男子が描く理想系の女性というものを体現していた。
階段を登りきり、ステージの真ん中に置かれたテーブルの上に設置されたマイクを少し調整する。前の人が身長が高いためか、それともステージ上に上がった女性が下を向いているせいなのか、よくその顔が見えない。
「あー、新入生のみなさま。ご入学おめでとうございます」
マイクの位置まで修正し終わったあと、彼女は新入生がただ何列もなして並んでいるフロア全体を自信に満ちあふれた顔で眺めてみせた。僕もはっきりとその時彼女の顔をこの目で捉えることができた。紛れもなく、彼女は朝に会ったあの時の女性であった。
長い。僕は思わずそうこぼしてしまいそうになった声を両手で制止する。クラス分けも何も聞かされないまま、とりあえず超豪華な体育館らしき建物に連れて行かれた。これは世間一般で言うところの体育館なのだろうか。僕はこの場に足を踏み入れたその時から疑問に思っている。天井にはシャンデリア。ステージに登る階段は黄金比に則った螺旋階段。いっそのことダンス会場として使った方が効果的なのではないだろうか。
しかし、周りを見渡しても他のどの学生もそのことを気にも留めていないようで各々がステージ上に立つ教師の発言を一言一句逃さない気迫を出しながら見守っている。正直な話、集中できないまま話を聞いているのは僕だけのような気がする。やはり、これもさっきの校長先生の言葉を借りれば庶民との差ってやつなのかもしれない。だが、僕のそんな空虚な思考の連続とは関係なしに入学式は着実に進んでいく。
気がつけば今回の入学式のプログラムの最後にまで差し掛かっていた。
「新入生代表、ありがとうございました。お立ちになった保護者の皆様は御着席ください。続きまして、今式の最後のプログラムになります。在校生とからのエールと称しまして、生徒会長より新入生に対してお言葉をいただきたいと思います。生徒会長の、八重樫 櫻さん。ステージの上にお願いします」
ここまで式を円滑に進めてきた進行役が最後の上段する生徒の名前を呼ぶ。途端に静まり返っている体育館に響き渡るはっきりと、それでいてどこか清楚を感じさせる声。声が一通り体育館の中を反響し終わると、その声の主はスッと立ち上がり、乱れぬことのないピンと天井から吊るされているのかと疑ってしまうほどの体勢を維持し、スタスタとその姿勢のまま螺旋階段まで向かう。
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階段を登りきり、ステージの真ん中に置かれたテーブルの上に設置されたマイクを少し調整する。前の人が身長が高いためか、それともステージ上に上がった女性が下を向いているせいなのか、よくその顔が見えない。
「あー、新入生のみなさま。ご入学おめでとうございます」
マイクの位置まで修正し終わったあと、彼女は新入生がただ何列もなして並んでいるフロア全体を自信に満ちあふれた顔で眺めてみせた。僕もはっきりとその時彼女の顔をこの目で捉えることができた。紛れもなく、彼女は朝に会ったあの時の女性であった。
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