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アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜

X-65話 カーブスの大罪

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「この場所に広がっていた光景・・・? そんなの、まさに地下に構える秘密の実験場みたいな感じだったよ。大きなガラスで囲まれた空間もあるし、実験器具も多数置かれてあったし」

 そう呟く俺に、ユウシは更に深いため息をこぼした。なんか、呆れられているか?

「多分、まだ目が上手いこと機能してないから分からないと思うけど。今、この場所を埋め尽くすものと、さっきの説明は大きくかけ離れているよ。だって、カーブスによって、『幻影』を見せられていたんだから」

「幻影、だと?」

「うん。恐らく、カーブスはあなたがこの場所に、実験場を探しにくることを知っていた。だから、それに合わせて先手を打ったんだ。この、焼け野原の場所をあたかも、今なお稼働している地下室だと思い込ませた。そして——」

 ユウシは、地面に転がる一つの土を固めただけの、粗悪品なコップを睨みつける。そして、縁に点在する僅かな水滴を見て、唇に前歯を強く押し当てた。

「あなたに、何かの飲み物を幻影で化かした上で渡したんだ・・・! あなたは、特に疑問すら抱くこともなく、ただ普通にそれを口にした。だけど、それが、正真正銘の神経毒を含ませたものだったんだよ!」

 未だ痺れが残る下半身。ユウシの言葉には、どれも強い説得力を含ませている。というか、それが間違いなく先ほど起きた事象の全てなのだろう。だとすれば、あの人は俺を最初から殺そうと決めていた、ということになるのか? いや、俺にはどうしてもそうは思えなかった。

「ユウシ・・・。俺は、カーブスがユウシがそこまで嫌うほど悪い奴だとは思えないんだ・・・」

 その言葉にユウシは噛み付くように、勢いをまして反論してくる。

「何を馬鹿なことを。あなたが苦しんでいるのは、紛れもなく彼の仕業だ!! 自分の命を狙われたんたぞ!! 楽観視にもほどがあるよ!!!」

 彼の激しく動く口から溢れる唾液が、俺の肌に触れるとそのまましっとりと滑らせる。そこから、地面に向かって滴り落ちていくことはない。じっと、その場で蒸発するのを待つように、気泡を含ませていた。

「命を・・・狙われたことは間違い無いだろうな・・。ユウシの言う通りだと思うよ。でも、それすらも理由があるような気がするんだ」

「あなたは、カーブスのことを何も知らない——!! あいつは、今、シントーイン地方だけじゃない、大陸全土で指名手配されている大犯罪者なんだよ。あいつは、紛れもなく悪人なんだ!! だからこそ、このアルゴーで行われていたような、極悪非道な実験を思いつき、実行できるんだ!!」

「実験を考案したのはカーブスだが、それを悪用した人物は他にいるような話し振りをしていたよ。それに、犯罪者とは言うが、どのような罪状で大陸から追われているんだい?」

「また、やつの口車に踊らされているんだ! いいさ、やつの犯した大罪を今教えてあげるよ。あいつは、この世で唯一ウェルム教に牙を向いているんだよ。この宗教は間違ってるって言いふらしている、頭のおかしい奴なんだよ!」

「俺を、幼少期ウェルム教に引き合わせた張本人がか? 矛盾しているんじゃ無いのか?」

 俺の一言に、ユウシの威勢は静かに衰えていった。





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