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アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜

X-44話 僕を騙していたのか?

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「人? 誰かに会いにきたのか?」

 零すユウシはどこか拍子抜けのような反応を見せた。同様に隣のコルルも呆気に取られている。そんな薄い目的で、なんて思われていそうだな。

「あぁ。 彼の名前はカーブスと言ってな。生憎だが、名前しか分かってなくて、顔も知らない。もちろん、年齢も知らない。だが、ある程度高齢者であることは間違い無いだろうな。もし、知っているならユウシ教えてほしいんだが」

 ユウシは少し下を向いたまま黙って動かなくなってしまう。もしかすると、自分の記憶の中にいるかもしれないカーブスという人物を探してくれているのだろうか。俺は彼に話しかけることなく、相変わらず首を傾げている隣の幼気な彼女に視線を落とした。何か言いたそうに唇を尖らしているのは、先ほどからずっと感じていたからだ。

「カーブス? 私も聞いたことのない名前だけど。クーリエさんと何か関係があるの?」

 そう尋ねる彼女が浮かべる何も疑っていない清楚あふれる笑顔。俺はその顔の前では嘘をつけそうにもなかった。

「関係か・・・。ないことはないのかもしれない。あくまで、かも、だけど。少し会って話したいことが、というか確認したいことがあって」

 その瞬間だった。すでに夜も明け、朝日が俺たちがいるテントの隙間から僅かに入ってきているかといった頃合い。警戒心など一つもなかった。それゆえに、一瞬にして足元に走ったの一線に俺は大きく遅れて回避の行動を取るという後手の方法を選ばされた。後方に大きく仰け反って回避したため、後ろにあったテントの壁ごと俺は後ろに飛び跳ねてその炎を避ける。視界がテントで覆われている上に、足場までテントのビニールが邪魔をして上手く掴むことができない。

次の攻撃が追撃してくると一発は攻撃を受けてしまうな、という考えが頭を瞬時に駆け巡るが、不思議なことに次の攻撃が来ることはなかった。そして、俺がテントを払い除けた後、視界にまず飛び込んできたのは全身に炎を巡らせたユウシの姿だった。

集落全域を炎に閉じ込めた時とは違って今では正確に支配されている炎の威力。先ほど走らせた炎の一撃もテントの床の部分を僅かに焦がすことはしたが、それ以上に延焼する気配は見せない。彼の顔には笑顔など見せる様子もない。鋭く尖った殺意が俺の身体を突き抜けていく。

 はっとしてコルルの安否を確認するが、さすがコルルといったところだろうか。咄嗟の攻撃であったが、天恵を使用して一気に距離を取って遠く離れているのが目に入った。ひとまずその事実に胸を撫で下ろすが、目の前の状況は何ら変化していない。俺は大きく息を吸い込むと、一気にそれを放出する。

「どういうつもりだ、ユウシ? 危うくまた怪我人を出すところだったぞ」

「僕をいたんだな・・・」

「なに?」

 小さくか細い声が空気を僅かに振動させる。そこには力強さであったり、自信といったものは一切感じ取ることができなかった。

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