36 / 70
アルゴーの集落編 〜クーリエ 30歳?〜
X-36話 眠ったまま
しおりを挟む
「僕は、何回でも胸をはって言うけどさ神童だったわけ。それこそ、集落中に名前を轟かせるほどに。だからこそ、一番に目をつけられたとも言えるけど。
初まりはいつだったのかは覚えてないんだけど、でも着実に秘密裏にこの集落で行われていたのは間違いないね。僕も、気づくことができなかったから他の場所に住んでいる人なら余計に分からなかったと思うよ。
そこで行われてたのが、天恵の複数所持の実験。突発的に始めたとかではなかったと思うんだけど。確か、誰かが頼みに来たとかいう話を聞いたことはあるけど。
まぁ、これは今は関係ない話か。そんなこんなで、僕がその実験対象として選ばれて、あのにっくき博士に出会ったんだよ。彼がこの実験の代表をしていて全ての権限を握っていた。莫大な資産と共にね」
「つまり、今集落にいる医者の中にも君の実験に関与していた人がいるっていうことかい?」
尋ねる俺に、彼は首を盾には振らなかった。
「今回の集落全焼事件がなんで起きたと思う?」
突然質問を振られ、思わずたじろぐ。
「いや、急に言われてもだな・・・」
「勘で良いからさ。別に正解を言えって話じゃない。あなたがどのように考えるのか聞きたいだけだから」
「そういうことなら。うーん、俺が思うにはだな・・・。実験中に事故が起きた、とかじゃないか? よくあるだろう、何かの手違いで急に機器にエラーが起きて負の連鎖みたいに異常事態が発生するみたいな感じのパターンで」
「おー! 結構近いよ! 簡単な話なんだけどさ、仲違いしたんだよ、研究してた博士同士で。片方はこのままこの研究を続ける派。もう一方は、もう中止にした方がいい派。
どっちにも言い分があってね。一応天恵の複数所持は僕の実験を持って成功が確立されたから、もう良いんじゃないかと待ったをかけるのを、止めたい人たちもいたってこと。
辿り着いた答えがこれ。僕を薬の投与で精神コントロールを行い、天恵を暴発させた。結果としてさ、みんな死んだよ。研究に関わってた人はさ。意識が薄らいでいく中、確実に僕が殺した。人を焼き殺すという衝動に耐えられなかった僕の落ち度は計り知れない。
一応、隣で寝ている人がその権限を握ってた博士で、僕に薬を打った張本人なんだけど、多分死んでると思うよ。研究結果だけ奪われて、危険な行動を伴う奴は用無しだからね」
「何!?」
俺は急いで彼のベットを仕切るレースを払い除けると、相変わらず姿勢の整った体勢で眠り続けているはずの博士のところに駆け寄る。変化は特に見られない。外傷も——特に目立つものはない。俺は、その手で彼の首元を触れる。生きているのであれば、この手に心臓が打つ鼓動という生きている衝撃を感じることができるはずだ。
だが、それは待てど待てど感じることはできなかった。彼は、健やかな表情のまま、言葉通り眠ったまま命を落としていた。
初まりはいつだったのかは覚えてないんだけど、でも着実に秘密裏にこの集落で行われていたのは間違いないね。僕も、気づくことができなかったから他の場所に住んでいる人なら余計に分からなかったと思うよ。
そこで行われてたのが、天恵の複数所持の実験。突発的に始めたとかではなかったと思うんだけど。確か、誰かが頼みに来たとかいう話を聞いたことはあるけど。
まぁ、これは今は関係ない話か。そんなこんなで、僕がその実験対象として選ばれて、あのにっくき博士に出会ったんだよ。彼がこの実験の代表をしていて全ての権限を握っていた。莫大な資産と共にね」
「つまり、今集落にいる医者の中にも君の実験に関与していた人がいるっていうことかい?」
尋ねる俺に、彼は首を盾には振らなかった。
「今回の集落全焼事件がなんで起きたと思う?」
突然質問を振られ、思わずたじろぐ。
「いや、急に言われてもだな・・・」
「勘で良いからさ。別に正解を言えって話じゃない。あなたがどのように考えるのか聞きたいだけだから」
「そういうことなら。うーん、俺が思うにはだな・・・。実験中に事故が起きた、とかじゃないか? よくあるだろう、何かの手違いで急に機器にエラーが起きて負の連鎖みたいに異常事態が発生するみたいな感じのパターンで」
「おー! 結構近いよ! 簡単な話なんだけどさ、仲違いしたんだよ、研究してた博士同士で。片方はこのままこの研究を続ける派。もう一方は、もう中止にした方がいい派。
どっちにも言い分があってね。一応天恵の複数所持は僕の実験を持って成功が確立されたから、もう良いんじゃないかと待ったをかけるのを、止めたい人たちもいたってこと。
辿り着いた答えがこれ。僕を薬の投与で精神コントロールを行い、天恵を暴発させた。結果としてさ、みんな死んだよ。研究に関わってた人はさ。意識が薄らいでいく中、確実に僕が殺した。人を焼き殺すという衝動に耐えられなかった僕の落ち度は計り知れない。
一応、隣で寝ている人がその権限を握ってた博士で、僕に薬を打った張本人なんだけど、多分死んでると思うよ。研究結果だけ奪われて、危険な行動を伴う奴は用無しだからね」
「何!?」
俺は急いで彼のベットを仕切るレースを払い除けると、相変わらず姿勢の整った体勢で眠り続けているはずの博士のところに駆け寄る。変化は特に見られない。外傷も——特に目立つものはない。俺は、その手で彼の首元を触れる。生きているのであれば、この手に心臓が打つ鼓動という生きている衝撃を感じることができるはずだ。
だが、それは待てど待てど感じることはできなかった。彼は、健やかな表情のまま、言葉通り眠ったまま命を落としていた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる