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キリの村編 〜クーリエ 30歳〜
X-9話 怪物の居所
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通路自体は狭かったが、それを抜けてしまえば中は思ったよりも広かった。通路を抜けた先には上下に伸びる大きな柱のような役割を果たしていると思われる空洞があった。蟻の巣を連想させるように、その壁に沿うようにして幾つもの穴が点在し、そこに行くための狭い道が螺旋状に張り巡らされている。光源は相変わらず魔性石に依存しているので、空洞の高さまでは正確には計り知れいない。それどころか、一つ一つの穴がどこに伸びているのかすらも把握できない。全てが謎に包まれている洞窟であるが、それもそのはずだ。なぜならここは、人類が足を踏み入れない未踏の怪物の住処なのだから。
「これは、どこから探すのが正解なんだ? こんなに幾つも穴があったら一つ一つをしらみつぶしに探しても時間がかかりすぎるぞ」
こんな時にコルルがいてくれれば、ふとそんなことを考えてしまう。彼女の天恵があればこんな場所ほんの数分で全て把握してくれるただろうに。そんな甘い考えを思い浮かべてしまうが、すぐに頭を振り払う。
「今は、考える時じゃない。動く時だろ!」
とにかく何もヒントがない中、俺は現在地から一番近くにある穴にへと移動する。中に入っていくと、先ほど通ってきた通路よりかは広く感じたが、それでも依然として狭さを覚えるほどの幅で奥に進むのも体力を奪われる。特に、この通路では奥に進むほど魔性石の露出が減少しているためか、光源が失われ視界が暗闇に染められていくのも、歩く速度を遅くする。だが、立ち止まることはなく身体を拗らせ、砂を顔や服にまといながらも着実に前に進んでいく。
「これは——なんだ?」
通路の終着点にまでたどり着くのにそれほど時間は掛からなかった。通路の側面には魔性石があまりみられなかったが、今通路を塞ぐ土壁には大量の魔性石が乱雑に点在し、その前にある景色をより強調するような形をしている。俺の目の前には、まず藁が重なりあうように置かれていた。それも、通路いっぱいにだ。重なり合うそれは、明らかに何かを外敵から守っているように見える。慎重にかつ大胆に俺は、それとの距離を縮めた。藁を踏んだ時には、隠された何かを壊してしまわないかと不安に襲われたが、幸いなことに藁の端の方にはそれは置かれていないようだ。そして、中心部までたどり着くと俺は右手で積もる藁を掴むと一気に剥がしとった。
藁に包まれていたそれが一気に魔性石から溢れる光に当てられその姿を露にする。
「この縦長の円形をした白いものは何だ。まさか、怪物の卵!? だとすると、この藁の下は!!」
俺は身体に走った衝動に身を任せそのまま一気にこの場に広がる覆い被さるように置かれた藁を全て払い除ける。藁と共にその上に薄く積もっていた土までも同様に空中に舞い上げられ途端に目を細める。だが、うっすらと捉えた視界のその先には先ほど、頭をよぎった最悪な景色が広がっていた。
「一体いくつ産んでんだよ、この怪物は・・・!」
払い除けられた藁の下にはびっしりと下の地面が見えないほどの数の卵が埋めつけられていた、つまるところ、側面に広がる穴の先には卵を育てる機能を持たせてい他のだ。さしずめ、魔性石の光は太陽の光か。青白く光るその光線の温かさで孵化のタイミングを今か今かと待っているのだ。じっと見つめていると、どの卵も微かに横に移動している。その時が近づいているのは間違いない。
「こいつらが一気に孵化するとコルルの父さんの救出は——ほぼ不可能になってしまう!」
俺は、一気にその場から駆け出すと先ほど通ってきた道を前の半分以下の時間で戻りきる。上にも下にも点在する穴には先ほどと同様に大量の卵が存在し、人間を小虫のように殺すことができる怪物が今か今かとその時を待っているのだろう。俺は、数多くある穴から目を逸らす、その遥か下まで伸びている穴の底を睨みつける。
「怪物はきっとこの底だ」
確信があった。現状、自分が集めた情報を冷静に分析するとたどり着いた答えは一つ。この怪物はキリの村での戦闘で何かしらの昆虫が天恵により怪物化したものだと俺の頭の中では答えが弾き出されていた。それは、飛翔するまでの時間で断定できた。鳥類ならもっと早く飛翔することができるし、仮に『空を飛ぶことができる』という天恵を持つ怪物だとしても同様でその時間は早い。だとすると考えられるのは、元から限られた飛翔能力しかないにも関わらず、怪物化という強大な力を持ったことにより、そのバランスがさらに激しく歪んでしまった、この一択だ。
そして、もう一点。この怪物の死期は近い。この大量に産まれた卵がそれを物語っている。俺が侵入した穴は不自然な点がいくつかみられた。一つは、異常なほどの卵数。そしてもう一つは、魔性石が通路にはなく、行き止まりの壁に大量に存在したという2点。前者は、もしかしたら大量に卵を産む生物と考えられるかも知れないが、後者を先に考えるとその説は容易に覆された。怪物はエネルギー源として魔性石を食す。つまり、食すのであれば一気に食べればいいのだ。そう、通路のように手当たり次第に。だが、あれほどその先の壁に魔性石が埋め込まれていたのにも関わらず食そうとした形跡が一つも見られないのはおかしい。だとすれば、通路を掘っている最中には何かエネルギーを大量に必要とする行為を行なっていたこう考えるのが道理ではないだろうか。
つまり、卵を産むというエネルギーを大量に必要とする行為を。それを中間層であるこの穴でも見て取れるのだ、上に行けばいくほど、怪物がいる場所に遠くなればなるほどその工程の感覚が狭まっているということを表している。さて、なぜ怪物がこの堂々と恐怖の対象として存在する穴の底に怪物がいると俺が想定したかというと、その答えはこれまでで一番シンプルなものだ。この洞窟の隣は分かるように湖だ。そして、排卵には少なからず血液なり、その他体液が体外を撒き散らかしての行為だと俺は認識している。だから。
汚れた身体って綺麗な水で洗い流したくなるものじゃないの? ただ、それだけの考えで俺は、下に向かって走り出していた。
「これは、どこから探すのが正解なんだ? こんなに幾つも穴があったら一つ一つをしらみつぶしに探しても時間がかかりすぎるぞ」
こんな時にコルルがいてくれれば、ふとそんなことを考えてしまう。彼女の天恵があればこんな場所ほんの数分で全て把握してくれるただろうに。そんな甘い考えを思い浮かべてしまうが、すぐに頭を振り払う。
「今は、考える時じゃない。動く時だろ!」
とにかく何もヒントがない中、俺は現在地から一番近くにある穴にへと移動する。中に入っていくと、先ほど通ってきた通路よりかは広く感じたが、それでも依然として狭さを覚えるほどの幅で奥に進むのも体力を奪われる。特に、この通路では奥に進むほど魔性石の露出が減少しているためか、光源が失われ視界が暗闇に染められていくのも、歩く速度を遅くする。だが、立ち止まることはなく身体を拗らせ、砂を顔や服にまといながらも着実に前に進んでいく。
「これは——なんだ?」
通路の終着点にまでたどり着くのにそれほど時間は掛からなかった。通路の側面には魔性石があまりみられなかったが、今通路を塞ぐ土壁には大量の魔性石が乱雑に点在し、その前にある景色をより強調するような形をしている。俺の目の前には、まず藁が重なりあうように置かれていた。それも、通路いっぱいにだ。重なり合うそれは、明らかに何かを外敵から守っているように見える。慎重にかつ大胆に俺は、それとの距離を縮めた。藁を踏んだ時には、隠された何かを壊してしまわないかと不安に襲われたが、幸いなことに藁の端の方にはそれは置かれていないようだ。そして、中心部までたどり着くと俺は右手で積もる藁を掴むと一気に剥がしとった。
藁に包まれていたそれが一気に魔性石から溢れる光に当てられその姿を露にする。
「この縦長の円形をした白いものは何だ。まさか、怪物の卵!? だとすると、この藁の下は!!」
俺は身体に走った衝動に身を任せそのまま一気にこの場に広がる覆い被さるように置かれた藁を全て払い除ける。藁と共にその上に薄く積もっていた土までも同様に空中に舞い上げられ途端に目を細める。だが、うっすらと捉えた視界のその先には先ほど、頭をよぎった最悪な景色が広がっていた。
「一体いくつ産んでんだよ、この怪物は・・・!」
払い除けられた藁の下にはびっしりと下の地面が見えないほどの数の卵が埋めつけられていた、つまるところ、側面に広がる穴の先には卵を育てる機能を持たせてい他のだ。さしずめ、魔性石の光は太陽の光か。青白く光るその光線の温かさで孵化のタイミングを今か今かと待っているのだ。じっと見つめていると、どの卵も微かに横に移動している。その時が近づいているのは間違いない。
「こいつらが一気に孵化するとコルルの父さんの救出は——ほぼ不可能になってしまう!」
俺は、一気にその場から駆け出すと先ほど通ってきた道を前の半分以下の時間で戻りきる。上にも下にも点在する穴には先ほどと同様に大量の卵が存在し、人間を小虫のように殺すことができる怪物が今か今かとその時を待っているのだろう。俺は、数多くある穴から目を逸らす、その遥か下まで伸びている穴の底を睨みつける。
「怪物はきっとこの底だ」
確信があった。現状、自分が集めた情報を冷静に分析するとたどり着いた答えは一つ。この怪物はキリの村での戦闘で何かしらの昆虫が天恵により怪物化したものだと俺の頭の中では答えが弾き出されていた。それは、飛翔するまでの時間で断定できた。鳥類ならもっと早く飛翔することができるし、仮に『空を飛ぶことができる』という天恵を持つ怪物だとしても同様でその時間は早い。だとすると考えられるのは、元から限られた飛翔能力しかないにも関わらず、怪物化という強大な力を持ったことにより、そのバランスがさらに激しく歪んでしまった、この一択だ。
そして、もう一点。この怪物の死期は近い。この大量に産まれた卵がそれを物語っている。俺が侵入した穴は不自然な点がいくつかみられた。一つは、異常なほどの卵数。そしてもう一つは、魔性石が通路にはなく、行き止まりの壁に大量に存在したという2点。前者は、もしかしたら大量に卵を産む生物と考えられるかも知れないが、後者を先に考えるとその説は容易に覆された。怪物はエネルギー源として魔性石を食す。つまり、食すのであれば一気に食べればいいのだ。そう、通路のように手当たり次第に。だが、あれほどその先の壁に魔性石が埋め込まれていたのにも関わらず食そうとした形跡が一つも見られないのはおかしい。だとすれば、通路を掘っている最中には何かエネルギーを大量に必要とする行為を行なっていたこう考えるのが道理ではないだろうか。
つまり、卵を産むというエネルギーを大量に必要とする行為を。それを中間層であるこの穴でも見て取れるのだ、上に行けばいくほど、怪物がいる場所に遠くなればなるほどその工程の感覚が狭まっているということを表している。さて、なぜ怪物がこの堂々と恐怖の対象として存在する穴の底に怪物がいると俺が想定したかというと、その答えはこれまでで一番シンプルなものだ。この洞窟の隣は分かるように湖だ。そして、排卵には少なからず血液なり、その他体液が体外を撒き散らかしての行為だと俺は認識している。だから。
汚れた身体って綺麗な水で洗い流したくなるものじゃないの? ただ、それだけの考えで俺は、下に向かって走り出していた。
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