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新規任務準備編
36.マシュマロと淫紋
しおりを挟むはっと意識を取り戻した時には、揺れは収まり、空はオレンジがかっていた。籠から手足を伸ばして伸びをし、伸び切った後はもう一度手足を縮めて、もそもそと中で動く。自由に動けることにようやく気付いた私は、掛けられていた布を剥いで起き上がった。
周囲に視線を巡らせれば、木々が生い茂る森の中の、一部の開けた場所に野営の準備がされていた。私が入った籠と、その周辺には荷物が置かれ、少し離れたところにアーモスが火を起こしている。ドゥシャンの姿は見えない。私の視線に気づいた狐が、にっこりと笑った。
「よおお嬢さん、お目覚めかい?」
「私は、寝ていたのか」
「ぐっすりだったぜ。疲れたんじゃないのか」
よだれでも垂らしてなかっただろうかと口元を気にしていると、アーモスが籠のすぐそばに靴を置いてくれた。
「ありがとう。ドゥシャンは?」
靴を履いて、もう一度伸びをする。籠に入っている間は手足を丸めて寝ていたので、身体がバキバキしている。今日は結局訓練も出来なかったし、暗くなる前にそのあたりでも走り回ってこようか。身体を動かしているうちにストレッチを始める。近くに魔物の気配はない。寝床の周囲の状況を確認しておくのも、野営では常識だ。
「ああ。マーキングと、今夜の獲物を狩りに行ってる」
それなら森のどこかでドゥシャンと会うかもしれない。狩りなんてしたことがない。どうやってやるのだろう。私も見ていいだろうか。……考えてみれば、群青騎士になってからは、恵まれた環境で寝起きばかりしていた。こうして外で寝るのも久しぶりだ。心が沸き立つ。
「もうそろそろ、あいつも戻ってもいいかもしれない。っと、お嬢さん。どこに行くんだ?」
ストレッチが終わった私が周囲を見回し、獣道らしい道を見つけて、そちらに足を踏み出すと、慌ててアーモスが駆け寄ってきた。
「うん?ずっと籠にいたので、周辺を走ってこようかと思っているのだが、だめか」
「ああちょっと待て。安全はドゥシャンが確認してるが、それでも子供一人じゃ危ない。せめてあいつが戻るまで待っててくれ。な?」
なぜ。ドゥシャンは狩りに行っているのだろう。私に付き添うより、よほどそちらの方が重要だ。私は首を横に振った。
「大丈夫、そんな遠くには行かない」
「だめだ。俺たちは、無事にお嬢さんを孤児院に届けるのが仕事だ。怪我されたらオドヴァール様に叱られちまうし、俺たちだって悲しい」
「怪我などしない。周囲を少しだけ走るだけだ」
「だめだ」
「……むう」
別に止める彼を振り払って向かうことはできるが、そこまでして走りに行きたいかと言えば、別にそこまでではない。なんだ、子供とは自由がなくて、つまらないものだな。
私が唇を尖らせると、アーモスは細い眉をハの字に下げた。
「そ、そうだ、いいものをやろう。ほらこっちに来い」
なにかいいことを思いついたように、アーモスが火のそばに来るように導いた。立ち上る火は特に珍しいものではない。しゃがんだ彼は、腰に付けた小袋から、何か一口大の白い塊を取り出した。細い串に刺して、それをあぶり始める。
「マシュマロはなあ、火で炙ると格別なんだ。夕飯前だが、一個ぐらいならいいだろ」
「ましゅまろ……?」
アーモスがそれを炙っているうちに、その白い塊に焦げ目がつき、甘い匂いをさせ始めた。ベッカーのおやつでも、食べたことのないものだ。思わず熱視線を向けてしまう。火の放射熱で顔が熱い。
「こんなもんかな。ほら、熱いから気をつけろよ」
差し出されて、私はその串を受け取る。白い部分は少し溶けていて、一部は焦げ目がついている。甘い匂いが強くなった。眺めていると刺したところより少しずり下がってくる。
「……これは、剥かないでも食べれるものか」
カップケーキで学んだからな!知らない食べ物は、前もって聞くのが一番だ。そう告げると、彼は少し驚いたようだったが、優しい眼差しで頷いてくれた。
「マシュマロ食ったことないのか。そうだ、そのまま食いつけ。火傷には気をつけな」
「ん」
串に歯を立てないように、ましゅまろに噛みつく。……甘い。中はとろっとしてて色づいたところはカリカリしていて触感が硬い。
「初めて食べた。マシュマロはおいしいものだな」
「そうか!良かったぁ……子供なんて世話したことねえからさあ俺、持っててよかったマシュマロ……」
何やら感慨深げに、ぐっと拳を握った彼を眺めながら早々に食べ切る。ああ、美味しいものはすぐになくなってしまうものだな……。ベッカーの今日のお菓子も美味しかった。……もしかしてちょっと食べすぎだろうか。
「私も焼きたいのだが、いいだろうか」
「おーいいぜ。でも、これで最後な?」
そう言い含めてくるアーモスにこっくりと頷くと、彼はマシュマロを串に刺して渡してくれた。意外に上手く焼くのが難しい。火に近づきすぎると黒くなるし、遠ざけていると焼けているかわからない。
「焦げてしまった……」
「あー慣れないとそんなもんだ」
半分黒くなってしまったマシュマロに、私は肩を落とした。アーモスはしょげる私を慰めてくれるが、これではあげられない。
「アーモスに焼いてあげようと思ったのだが。これでは食べられないな」
「お、俺にか……いや、もらう。ありがとなお嬢さん」
言うが早いか、私が持ったままの串に、アーモスが顔を寄せてぱくっと食べてしまった。炭になった部分が苦いのか、その表情は嬉しそうでもあるが、微妙だ。
「苦くないか?無理しなくてもいいのだが」
「いやいや美味しいよ。……ああ、女の子はかわいいなあ。俺は兄弟も男ばっかりだったから、妹がいたらこんな感じかと思うと、すごく嬉しい」
ぱさぱさと太い尾が振られる。にこやかにしているところ悪いが、私も男なのだが。あと特に女の振りをしているわけではないのだが。なぜ、騙される。えっ、だって、アーモスも私に焼いてくれたぞ?なぜ。
「そ、うか。ドゥシャンにも焼いてやりたい」
考えてもわからないことは考えるのをやめて、ふと狩りに出ているもう1人のことを思い出すと、さらにアーモスに嬉しそうに微笑まれた。
「マシュマロはすぐに焼けるから、あいつが戻ってきたところで、焼いてやってくれ」
「わかった」
ではとりあえずは、荷物でも確認するか。私は火元から離れて、荷物の置いてあるところへ向かい、トランクケースを引っ張り出す。手元はアーモスには見えないようにして、中を開いた。少し意識して魔力を巡らすと、手元に命令書が出てくる。文字が細かい。一枚の紙にやけにいろいろ詰め込んだな。えーっと。
ポーションに似せているのは、魔肛持ち用の栄養剤で、本数は5本だった。1本飲めば一日持つとのことで、今日は必要か考える。少し腹が空いている気もするが、耐えられないほどではない。明日使おう。見ればここ数日お世話になっていた、注ぎ用の注射器もある。……しかし、この2人にバレずにどうやって下から注げというのだろうか。難しくないか?
少し考えたが、今すぐに必要でもないので、後から考えることにしよう。多分その時にならないと、いいアイデアも浮かばない。
他の物を……と見て見れば、迷彩機能の篭った衣服一式が入っていた。靴もある。これを身につければ見えにくいのだろう。なるほど?ごそごそと中をかき回す。他にもおそらくいろんな用途に使える魔具が入っていた。どれもこれも、魔力が使えなければ、普通の品物にしか見えないものばかりだ。
移動機能を持ったカトラリーがあるのは助かる。これで食べたふり、というか物を切ったり、刺したりするだけで、少しずつ、任意の場所にその食べ物が入る仕組みだ。食べ物を粗末にするようで心苦しいが、実際食べれないのだから仕方がない。
細い細いと言われただけあって、偏食で通すつもりだが、それでも私の分も用意されるだろう。水とビスケットで良いとは言えなかった。にしてもこのカトラリー、どうして持ち手側の端に、可愛く略された熊のデザインが入っているのだろうか。
命令書には、情報の報告方法も記載されていた。一週間に一度、報告を上げればいいらしい。そのあげる方法というのが、送信のみの機能を持たせた魔具だった。それに話しかければ、自動的に情報が届くらしい。
届くらしいが、なんだこれは。
それを持ち上げて、軽く揉む。芯のような感触があり、中心部に硬いものがある。おそらくその硬いものが魔具の本体だろう。でもどうして馬のぬいぐるみに偽造した。もっとほかにあったのではないのか。可愛らしいが、私がこんなもの持っていて、おかしくないか?
無表情な馬のぬいぐるみと睨みあっていると、がさがさと、すぐそばの草木から葉音が擦れる音がした。巨漢がぬうっと表れて、私に視線を向ける。押し黙っていると、ドゥシャンはいかつい顔立ちだが、私と目が合えばぱっと表情が和らいだ。
「起きたかクンツちゃん。今日はウサギ鍋だ。アーモスがすぐに支度するから待っていろ。お、かわいいぬいぐるみだな。寝るときのお供か。さっき籠を運ぶときに、入れてやれなくてすまなかった」
「あ……その、別に平気だ」
そんな言われ方して、トランクケースに戻すのも、何となく気が引けた。仕方なくぬいぐるみの尻尾を握って、籠のそばに戻り、中に入れる。
私はこの籠で今夜寝るのか?まあふかふかしていて、気持ちよかったが……少し狭い。ちらりと視線を向けると、2人ともこちらを見ていて微笑まれる。やりにくいな。ベッカーが2人いると思えばいいのか。おじさま、元気だろうか……。
先ほど言っていた通り、ドゥシャンにもマシュマロを焼いて渡した。喜びを表してくれるのは悪い気はしないのだが、2人でハイタッチまでしているのを見ると、本当になぜか、いたたまれなくなる。
そんなやり取りをしているうちに、すっかり日が落ちてしまった。火の明かりが周囲を照らす。ドゥシャンが狩ってきたのはウサギは2匹で、それをアーモスが手際よく味付けしていく。下処理はどこか違うところでしてきたのか、皮を剥かれた肉に、血の跡はほとんどなかった。ドゥシャンは雨露をしのぐためか、簡易的な天幕を張っている。
それぞれ手伝いを申し出たが、あっさりと却下された上、私には手ごろな高さの石を椅子代わりに用意され、その上に布まで敷かれるという好待遇だった。しかたなくその簡易椅子に座っている。
他のカトラリーを手渡されると困るので、フォークとスプーンをしっかりと握って待っていると、「すぐに用意できるからなー」とアーモスからは声がかかり、「クンツちゃんは大人しく待てて、えらいな」とドゥシャンに頭を撫でられた。このままずっと孤児院につくまで、こんな感じなのか。なんというか、落ち着かない。
小さくため息をつくと、同じぐらいのタイミングで、下半身に違和感が走った。なんというか、むずむずする感触がある。どこがと言われれば、まあ気取ってもしかたがない、魔肛がだ。
「……?」
そわっと腰を揺らして、その違和感を打ち消そうとするが、消えない。下腹が熱くて、そっと服の上から手で押さえる。あつい……?驚いたことに、何もしていないにも関わらず、陰茎が半勃ちになっていた。
腰を揺らすと服が擦れて、気持ちいい。突如として湧き上がってくる、淫靡な快感に、脳が鈍くなっていく。
「さーあと鍋を煮込めば、すぐだか……どうした、お嬢さん顔赤いぞ」
火に鍋を掛けたアーモスが、やり遂げた表情で笑ったところで、驚いたように駆け寄ってきた。
私の手から、カトラリーが零れ落ちる。地面に落ちたそれを、ぼんやりと視線で追ったところで、アーモスが私の顔を覗き込んできた。狐は真剣な表情で、私の頬や首に手を当てる。ちらりと口元の歯が見えた。
ユストゥスと似た、尖った歯。首筋をたどり、無粋な鎧を見下ろす。股間はやっぱり見えない。あの鎧に服は、脱がないのか。
「ん……っはらが、へんで……」
男の手に頬をすり寄せて、腰を揺らす。ああせっかくもらったのに、服が濡れてる気がする。ぐじゅっと液体を溢れさせているのは前か、それとも後ろか。
「ドゥシャン!お嬢さんが、クーちゃんの様子が変だ!」
「なんだと?……どうしたクンツちゃん」
天幕を張り終えたドゥシャンが、私に近づいてきた。大きな熊の手で、頭や頬を触られる。ゆび、ゆびふといなあ……。おちんぽもおおきいといいな。
熱が思考を奪い、私の本能に火をつけていく。あつい。首に巻かれたスカーフを外して、私は熱い吐息を零した。頬を撫でた瞬間に、ちゅっと親指に吸い付くと、ドゥシャンの目に戸惑いが生まれる。
「はらが、むずむずする……」
「腹……」
「あっまて、こら!脱ぐな!」
サスペンダーを外し、キュロットに手をかけると、アーモスが私の手を掴んで止めてきた。そのままドゥシャンに引き継がれ、私の手は大熊によって、頭上に持ち上げられた。
「っや、あっ、はなせっ」
腰を揺すって暴れるが、すごい。熊獣人すごい。この私が、力を込めても、全然振りほどけない。ああもう、服ぐらい脱がさせてくれ!
「はらが、へんでっあつい……!ぬぐぅ……ふく、ぬぐっ!」
「……つか、お嬢さんこれ」
「あぁうっ……!」
私の足の間に陣取ったアーモスが、ぴんと勃ち上がってキュロットの布地を持ち上げていた、私のペニスに触れた。それだけで達してしまう。じわあっと先端部分の色が濃くなった。ほら!脱ぐのを邪魔したから!服を汚してしまったではないか!
「っは、まだ、あついっ……っふく、ふくぬがせてっ!」
がくがくと腰を前後に揺さぶりながら訴える。私の背後に立ったドゥシャンと、アーモスは無言で視線を交わしたようだった。どういう結論が出たのかは、アーモスの動作ですぐに分かった。
彼はごくっと喉を鳴らすと、私のキュロットに触れる。ボタンを外し、ファスナーを下ろしていく。ジジジ……というファスナーが下がる音が、やけに大きく聞こえた。
すっかり下げきると、今度は腰元を掴まれ、こちらは先ほどよりも早く下げられる。キュロットはひざ元まで下げられ、私自身の精液で濡れた下着があらわになった。一度達したにも関わらず、ペニスはまたゆっくりと勃ち上がってきている。
「クンツちゃん、男の子だったのか……」
「でもこの子、すごく雌の匂いがするぞ。それにこれ……」
「ぁ、あっ」
少し迷ったようだったが、アーモスは今度は一気に下着を下げてくれた。反り返った皮をかぶったままのペニスが、とろりと白濁交じりの先走りを零す。下腹のいんもんが、それで汚れた。
……あれ?いんもん、いろが、こくなってる……。それを目撃した獣人2人に、じわりと殺気が生まれた。
「淫紋だと!?こんな年端も行かない子供に!」
「こんっなかわいい子だから、もしやと思ったが、やっぱり性奴隷にされてたのか!人族め……!」
「いたぃいっ!」
唸ったドゥシャンが強く私の手首を握った。その痛みで悲鳴を上げると、すぐに力が弱まる。アーモスが真面目な顔で、私の頬を撫でた。
「お嬢さ……坊ちゃん?ああもう……クーちゃん、この模様は、すごく身体を熱くして、その……おちんちんが勃っちまうやつなんだ。いっぱいしろいのを出さないと、おわらない。わかるかい?」
おちんちんが勃つ、模様とは。前に地下室で飲んだ毒と、同じような効果があるものか?戸惑いながら、がくがくと頷く。思考と身体が一致しない。一度達したせいか、頭が少しはっきりしてきたが、身体は全然落ち着く様子がなかった。
「ぅん……れも、ひりも……おひりも、へんっ」
ああ、ろれつが回らない。これで通じるだろうか?そんな私の心配は杞憂だったようで、さらに2人の殺意が増す。待ってくれ、こんな体に力が入らない状態で、そう殺気を向けられるとさすがに少し、怖い。
ぶるぶる私が震えだすと、アーモスが慌てて謝ってくれた。
「ご、ごめんな!クーちゃんが悪いわけじゃないんだ!にしても、尻が変、かー……くそっやっぱ確認した方がいいか、ドゥシャン」
「どのみち、オドヴァール様にも報告せにゃならん。確認してくれ。俺の力じゃ、この子に無体を働いちまう。頼む」
ドゥシャンは私を痛ましそうに見下ろしながら、そう言い切った。アーモスはやり切れないため息を零す。
「ぅうー、クーちゃんごめんな……。ちょっとおにいさんに、お尻見せてくれるか?」
なんだと。この流れは……結構いい流れじゃないか?いいぞ、いくらでも見るといい。ついでにそのままちょろっと、おちんぽ入れてくれないだろうか。
なに先っぽだけでいい。びゅっと精液入れてくれれば、それでいいのだが。
「みてっ、みれえ……っ!」
じいっと見つめて訴えると、アーモスは頬を赤くし、視線を彷徨わせてから、ドゥシャンを見やる。ドゥシャンは私の手を離すと、膝裏に手を差し入れて、持ち上げた。鎧で覆われた胸に後頭部が当たって、少し窮屈だ。
彼も興奮してくれたりしないだろうか。ドゥシャンを見上げたが、彼は視線を明後日の方向に向けて、私を見ていなかった。ちっ。
それならとアーモスを見れば、彼は私のあなを凝視していた。空気に晒され、ひんやりと臀部が濡れている感触があるのがわかる。うん、やはり後孔も濡れていた。
さすがは魔肛だな。すぐに肛門だったことを忘れてしまう。
「……おい、アーモス。どうなんだ?」
「あ……の、えと……」
アーモスが言葉を失っている。ふふん。手が自由になったのならやりようがある。前から手を伸ばして、いんもん……淫紋に当てられて、だらしなく綻んだソコに、人差し指を差し入れた。
「あっ、あっんっ」
浅くしか弄れないが、それでも気持ちいい……。あたまが、また霞んでしまいそうになる。でも、内頬を噛んで耐えた。ここでイキのいいおちんぽ2本、咥えられるかは、これからの流れによるのだ。負けるな私。せっかく遠い空の向こう側のエリーアス様が、素晴らしい助力をしてくれたのだ。
魔肛の特性は全部淫紋のせい、ということにしてしまえばいい。ふふふ……意外に私は、頭が良いのではないか?
「んんっ……わらひの、おまんこ、どぉ……っ?」
上手く奴隷を誘う方法の練習をしていた時に、していた角度でアーモスを見上げて、軽く小首を傾げる。だからお前だと、ただ睨んでるようにしか見えねんだよ、と脳内のライマー先輩があざ笑ってきた。
実際にそう言われたときは、先輩の小さな尻を蹴り上げたが、上手く逃げられて、あまりダメージを与えられなかったのが、口惜しかったのを思い出す。
ユストゥスに試したら鼻で笑われた。あの狼め、もっと喜べばいいものを。
練習では散々だったが、さて本番ではどうだろうか。
「っ……」
目を見開いて、言葉をなくしたアーモスの鼻から、つうっと鼻血が垂れた。
これは、上々といってもいいのではないか。私は心の中で、ぐっと拳を握った。
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