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本編(ミュリエル視点)
4日目
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「う、ん・・・」
彼の腕の中に囚われて、微睡みから覚醒する。やっぱりじっとりと汗をかいていて、ネグリジェが太腿に張り付くような感触がした。いや、起き抜けにあんなに整った顔を見たら、誰だってどこにだって汗をかく。
そっと、顔を覗き込む。きめ細やかな肌に、長い睫毛。ころころと表情を変える瞳が見えないだけで、大人びて見える。いえ、実際私より年上なのでしょうが。
黒の前髪が一房垂れていて、普段の整った様子以上に妖艶な姿。美人は目の保養だけど3日で飽きる、と義妹が言ってたがそんなのは間違いだと強く思う。アルディオスを見ていて、私の心臓は飽きる事なくうるさかった。
ううん、と眠気の残った声とともに彼がもぞもぞと動く。私ははっとなる。早くも二日目にしてクッションの壁を引いたのか引いていないのかも曖昧だし、この状態は意識して作られてないにしてもだいぶ恥ずかしいことになるのではないでしょうか?
案外緩い拘束だったので、目を覚ます前に急いで抜け出し脱衣室へ避難し、レネのお世話になった。しかし、タオル一枚でマッサージベッドに横たわった私の前には白のシャツと黒いスラックスを身につけたアルディオスが待っていて。手にはあのリングを持っている。
「今日からは、僕がつけてあげるね」
まず、どうしてここに。慌てた私は起き上がり後ずさった。あと数センチで落ちそうになった身体を枕元に立ったレネが受け止める。
いや、彼の寝室と繋がるここにいること自体は何も不自然ではないのでしょうが。私が思い至らなかっただけで、同じバスルームを使っているのかもしれませんし。
「え、あの、恥ずか、しいです」
「僕と性交渉するっていうのにいつまでも裸を恥ずかしがってたら先に進めないだろう? ほら寝て」
とてもいい笑顔で、異議は認められないそうです。
とん、と肩を押されてマッサージベッドに寝かされ、レネによって香油まみれになった乳首に長い指でリングを嵌められる。
向きを整える様に何度かねじる様にぎゅ、と押し込まれ、背筋を反らせた。それが余計に胸を突き出す格好になってしまい、強い刺激が走る。
「ひぁ、んっ!」
「いい声、さすが僕の花嫁」
左も取り付けた後に長い指でリングより高い両の頂を軽くつままれて、そのままくりくりと弄ばれる。私はさらに嬌声を漏らした。それにも満足げに微笑んだ彼はしばらく愛でたあとで手を離してくれたが、そのままで終わらず手袋を外した手に筆を取る。白いふさふさした毛が木の棒に束ねられたそれを回している。
「今日からは、もう一つリングをつけてあげる。レネ、足を」
「はい、アルディオス様」
抵抗する間もなく膝を左右に開かれた足がベッドの下に落とされ、膝の上にレネの手を置かれる。そんなに力が入っていない様なのに、足を持ち上げることも閉じることもできない。
「な、何、え」
「昨日、僕の気持ちは伝えたよね」
結構我慢の限界だったんだよね、とうっそうと微笑む。その顔さえとても美しくて目が離せなくなった。漆黒の瞳とバチりと視線が合い、その爛々とした輝きに私はふるりと震えた。まるで、獲物を狙う肉食獣の様な獰猛な色。
「だから、ちょっと急ぐことにしたんだ。大丈夫、痛くないよ。気持ち良くなるだけ」
「ヘ、ぁん!」
大きな掌がかざされる。思わぬところからブルブルと振動を感じて、身を捩らせた。見れば乳首を縁取るように付けられたリングが急に低く震えている。レネの手とは違う痛みすら感じる強い快楽に、私は混乱した。
「あ、あぁん! な、で」
「ちょっと身体がほぐれていた方がいいからね」
開いたまま固定された足の間に、しっとりとした感触の筆が踊る。生理的な涙が浮かび、頬を滑り落ちた。重点的に一箇所をくすぐられ続け、刺激から逃げようとする腰をレネの身体が易々と抑えている。そのうちジンジンとした感触が足先から全身に広がり、陸の魚の様に呼吸を繰り返した。
ガタガタとベッドが揺れる。髪を振り乱して私は快楽を逃すのに必死だった。
「・・・もっと、気持ちよくなるようにしてあげるよ」
「ん、ぃ! や、ひぁあああ!」
ビリビリと、神経を直接撫でられた様な衝撃。視界にバチバチとした星が飛ぶ。その後目の前が急に暗くなっていく。私は背中をのけぞらせて、意識を手放したのだった。
△▼△
「機嫌治して、ミュリエル」
「・・・」
「だって、あんまりにも可愛いかったんだもん」
だもん、などと崩れた言葉を使われても美しい人は美しいのですね。
朝食を作ってくれた料理長に申し訳がたたないので、給仕は受けたものの私は彼からの言葉に一切の返事はしなかった。奴隷の身分としてはあるまじき行為だとは思うが、それをアルディオスが咎めることはなかった。
彼に、なんて返したらいいのか言葉がまとまらなかったのです。
結局、クリトリスという女性の性感帯に新しいリングをつけられて、目覚めたときには着替えも済んでいた。そのリングを直接見るのは怖くて、でも存在を確かめずにはいられず少し足を擦り合わせる。そのわずかな刺激さえも拾いそうになって、慌てて止めたけれど。
今は執務室と思われる部屋で、仕事をする彼の膝の上に横抱きにされている。気まずかったから、クリスやレネを探したけれどレネは朝食後から、頼みの綱のクリスは用を言いつけられてしまったのか目覚めてから一度も会っていない。尋ねてくる人もいないから、ずっと2人きりだった。
アルディオスも仕事をしに来ているのだからちらりと見る横顔は真剣だし、会話はたまにご機嫌伺いのようなものしかない。すぐ向こうには4人が対面して座れるソファがあるのだが、離れることは許されなかった。
ひらりと、カーテンが風に舞う。秋といえど昼間は暖かな空気だった。
沈黙が続いた後、意を決した私は口を開いた。
「怒っては・・・ないです」
「・・・」
「アルディオス様に見られるとわたし、恥ずかしくて。身体がびくびくして、どうしたらいいのかわからなくなるのです」
「気持ちよく、なっててくれたんだね」
安心した、なんて呟かれて私は思わず仰ぎ見る。アルディオスは、万年筆を離して私を抱き寄せた。
「え・・・?」
「ミュリエル、今君が言ったそれが、気持ちいいだよ」
いまだに胸の頂についたリングは微弱な振動を続けていて、総レースの真っ白なアンダードレスに触れている。そう、柔らかな生地に擦れることはなく触れているだけなのに、その存在を感じてしまう。ベッドにいたとき以上に彼の香りに包まれていて、その温かさに安堵を覚えている自分がいる。
「リングが震えたり、僕に触られて、身体が跳ねる。ジンジンしたりするのが、気持ちいいなんだよ」
子供に諭す様に、短く文章を区切って低い声が語りかけてくる。
「私・・・」
「ん?」
「幸せに、なっていいんでしょうか」
思わず口に出ていた言葉に、クスリ、と耳のすぐ近くで鈴のような声。
「僕のせいでなら、存分に」
△▼△
許しがもらえた私は、その後の時間をずっと彼の膝の上で、気持ちよく過ごした。吐息が漏れ、時折身体を震わせる私を愛おしげに抱きしめてくれる。ドロドロに甘やかされて私は彼の胸に縋り付いて、何度か気をやってしまった。
気持ちいいには、強い時と弱い時がある。子供の頃読んでもらった絵本でわずかに知る海を漂う波のようで、その波にいともたやすく私は飲まれてしまう。そうなると自分がどんな顔をしているのか、周りのことも何もわからなくなる。ただ、白手袋越しに頭を撫でながら『気持ちよかったね』と繰り返し囁かれる低い声だけが耳に残った。
満たされた時間と対比して恥ずかしかったのは、夕食前にイブニングドレスへ変えるついでに、一度下着を取り替える羽目になったことだ。薄々感づいてはいたけれど、気をやると足の間が濡れることを初めて知った。性質の違うものだとわかっているが、粗相のようで恥ずかしい。顔を赤らめて謝罪の言葉を繰り返す私にレネはアルディオス様のせいですから、とまた無表情に言ったが、慰めにはなっていない。
「あれは、イくっていうんだ」
「イく・・・?」
「そう、気持ちいいのがどんどん積み重なって、耐え切れなくなるまで溜まった時に弾ける。愛している人の前では普通のことだよ」
入浴と洗面所に行く時以外は片時も膝から下ろしてもらえず、今もベッドの上で膝の上に乗せられながらミルクを飲んでいる。
相変わらず甘くて、染み渡るよう。クリスは聞いたら、私にも作り方を教えてくれるでしょうか。
「僕の前でだけ、イくことを許してあげる。僕はミュリエルを愛しているから、あんなに無防備で可愛い君を他の誰かには見られたくない。もし見せそうになるのなら鎖で繋いで寝室に閉じ込めておくからね」
空になったコップは取り上げられ、そのまま流れるようにベッドに横にされる。もうすっかり慣れっこになってしまった動作だ。布団の上から腹部を優しく撫でるような手があり、私はゆっくり瞬きした。
先ほどの言葉を反芻する。なんて物騒なのだろう。でも、それにすらドキドキしてしまう自分がいる。
「わかり、ました」
「・・・本当に、君は僕を喜ばせる天才だね」
呆れたような声は、初めて聞いた。彼はいつでも美しさや優しさに隙がなかったから。そんな表情を見せてくれることが嬉しくて、クスリと笑った。
笑ったのが何年ぶり、なんてことはもう思わない。彼の気持ちを疑うことは罪だと思う。そして、自分の気持ちも。
「じゃあ、僕からもうひとつおねだり。抱かれる覚悟ができたら、教えて」
「!」
「もう君が着るウェディングドレスも、宣言の準備も整ってるんだ。あとはミュリエルの気持ちだけ」
ぽすりと、頭を撫でる手にうっすらと目を開けると、片肘をついて私の一挙一動を見つめる彼と目が合った。
「僕が耐えきれなくなる前に頼むよ。今朝だってかわいい君の寝顔を見て何も思わなかったわけじゃないんだから」
「は、はい・・・」
それでも、私の意思を尊重してくれる。それはとても幸せで、相手が好きだからしてもらえることなんだと理解できた。
「じゃあ、おやすみ僕の花嫁」
「おやすみなさい、アルディオス様」
彼の腕の中に囚われて、微睡みから覚醒する。やっぱりじっとりと汗をかいていて、ネグリジェが太腿に張り付くような感触がした。いや、起き抜けにあんなに整った顔を見たら、誰だってどこにだって汗をかく。
そっと、顔を覗き込む。きめ細やかな肌に、長い睫毛。ころころと表情を変える瞳が見えないだけで、大人びて見える。いえ、実際私より年上なのでしょうが。
黒の前髪が一房垂れていて、普段の整った様子以上に妖艶な姿。美人は目の保養だけど3日で飽きる、と義妹が言ってたがそんなのは間違いだと強く思う。アルディオスを見ていて、私の心臓は飽きる事なくうるさかった。
ううん、と眠気の残った声とともに彼がもぞもぞと動く。私ははっとなる。早くも二日目にしてクッションの壁を引いたのか引いていないのかも曖昧だし、この状態は意識して作られてないにしてもだいぶ恥ずかしいことになるのではないでしょうか?
案外緩い拘束だったので、目を覚ます前に急いで抜け出し脱衣室へ避難し、レネのお世話になった。しかし、タオル一枚でマッサージベッドに横たわった私の前には白のシャツと黒いスラックスを身につけたアルディオスが待っていて。手にはあのリングを持っている。
「今日からは、僕がつけてあげるね」
まず、どうしてここに。慌てた私は起き上がり後ずさった。あと数センチで落ちそうになった身体を枕元に立ったレネが受け止める。
いや、彼の寝室と繋がるここにいること自体は何も不自然ではないのでしょうが。私が思い至らなかっただけで、同じバスルームを使っているのかもしれませんし。
「え、あの、恥ずか、しいです」
「僕と性交渉するっていうのにいつまでも裸を恥ずかしがってたら先に進めないだろう? ほら寝て」
とてもいい笑顔で、異議は認められないそうです。
とん、と肩を押されてマッサージベッドに寝かされ、レネによって香油まみれになった乳首に長い指でリングを嵌められる。
向きを整える様に何度かねじる様にぎゅ、と押し込まれ、背筋を反らせた。それが余計に胸を突き出す格好になってしまい、強い刺激が走る。
「ひぁ、んっ!」
「いい声、さすが僕の花嫁」
左も取り付けた後に長い指でリングより高い両の頂を軽くつままれて、そのままくりくりと弄ばれる。私はさらに嬌声を漏らした。それにも満足げに微笑んだ彼はしばらく愛でたあとで手を離してくれたが、そのままで終わらず手袋を外した手に筆を取る。白いふさふさした毛が木の棒に束ねられたそれを回している。
「今日からは、もう一つリングをつけてあげる。レネ、足を」
「はい、アルディオス様」
抵抗する間もなく膝を左右に開かれた足がベッドの下に落とされ、膝の上にレネの手を置かれる。そんなに力が入っていない様なのに、足を持ち上げることも閉じることもできない。
「な、何、え」
「昨日、僕の気持ちは伝えたよね」
結構我慢の限界だったんだよね、とうっそうと微笑む。その顔さえとても美しくて目が離せなくなった。漆黒の瞳とバチりと視線が合い、その爛々とした輝きに私はふるりと震えた。まるで、獲物を狙う肉食獣の様な獰猛な色。
「だから、ちょっと急ぐことにしたんだ。大丈夫、痛くないよ。気持ち良くなるだけ」
「ヘ、ぁん!」
大きな掌がかざされる。思わぬところからブルブルと振動を感じて、身を捩らせた。見れば乳首を縁取るように付けられたリングが急に低く震えている。レネの手とは違う痛みすら感じる強い快楽に、私は混乱した。
「あ、あぁん! な、で」
「ちょっと身体がほぐれていた方がいいからね」
開いたまま固定された足の間に、しっとりとした感触の筆が踊る。生理的な涙が浮かび、頬を滑り落ちた。重点的に一箇所をくすぐられ続け、刺激から逃げようとする腰をレネの身体が易々と抑えている。そのうちジンジンとした感触が足先から全身に広がり、陸の魚の様に呼吸を繰り返した。
ガタガタとベッドが揺れる。髪を振り乱して私は快楽を逃すのに必死だった。
「・・・もっと、気持ちよくなるようにしてあげるよ」
「ん、ぃ! や、ひぁあああ!」
ビリビリと、神経を直接撫でられた様な衝撃。視界にバチバチとした星が飛ぶ。その後目の前が急に暗くなっていく。私は背中をのけぞらせて、意識を手放したのだった。
△▼△
「機嫌治して、ミュリエル」
「・・・」
「だって、あんまりにも可愛いかったんだもん」
だもん、などと崩れた言葉を使われても美しい人は美しいのですね。
朝食を作ってくれた料理長に申し訳がたたないので、給仕は受けたものの私は彼からの言葉に一切の返事はしなかった。奴隷の身分としてはあるまじき行為だとは思うが、それをアルディオスが咎めることはなかった。
彼に、なんて返したらいいのか言葉がまとまらなかったのです。
結局、クリトリスという女性の性感帯に新しいリングをつけられて、目覚めたときには着替えも済んでいた。そのリングを直接見るのは怖くて、でも存在を確かめずにはいられず少し足を擦り合わせる。そのわずかな刺激さえも拾いそうになって、慌てて止めたけれど。
今は執務室と思われる部屋で、仕事をする彼の膝の上に横抱きにされている。気まずかったから、クリスやレネを探したけれどレネは朝食後から、頼みの綱のクリスは用を言いつけられてしまったのか目覚めてから一度も会っていない。尋ねてくる人もいないから、ずっと2人きりだった。
アルディオスも仕事をしに来ているのだからちらりと見る横顔は真剣だし、会話はたまにご機嫌伺いのようなものしかない。すぐ向こうには4人が対面して座れるソファがあるのだが、離れることは許されなかった。
ひらりと、カーテンが風に舞う。秋といえど昼間は暖かな空気だった。
沈黙が続いた後、意を決した私は口を開いた。
「怒っては・・・ないです」
「・・・」
「アルディオス様に見られるとわたし、恥ずかしくて。身体がびくびくして、どうしたらいいのかわからなくなるのです」
「気持ちよく、なっててくれたんだね」
安心した、なんて呟かれて私は思わず仰ぎ見る。アルディオスは、万年筆を離して私を抱き寄せた。
「え・・・?」
「ミュリエル、今君が言ったそれが、気持ちいいだよ」
いまだに胸の頂についたリングは微弱な振動を続けていて、総レースの真っ白なアンダードレスに触れている。そう、柔らかな生地に擦れることはなく触れているだけなのに、その存在を感じてしまう。ベッドにいたとき以上に彼の香りに包まれていて、その温かさに安堵を覚えている自分がいる。
「リングが震えたり、僕に触られて、身体が跳ねる。ジンジンしたりするのが、気持ちいいなんだよ」
子供に諭す様に、短く文章を区切って低い声が語りかけてくる。
「私・・・」
「ん?」
「幸せに、なっていいんでしょうか」
思わず口に出ていた言葉に、クスリ、と耳のすぐ近くで鈴のような声。
「僕のせいでなら、存分に」
△▼△
許しがもらえた私は、その後の時間をずっと彼の膝の上で、気持ちよく過ごした。吐息が漏れ、時折身体を震わせる私を愛おしげに抱きしめてくれる。ドロドロに甘やかされて私は彼の胸に縋り付いて、何度か気をやってしまった。
気持ちいいには、強い時と弱い時がある。子供の頃読んでもらった絵本でわずかに知る海を漂う波のようで、その波にいともたやすく私は飲まれてしまう。そうなると自分がどんな顔をしているのか、周りのことも何もわからなくなる。ただ、白手袋越しに頭を撫でながら『気持ちよかったね』と繰り返し囁かれる低い声だけが耳に残った。
満たされた時間と対比して恥ずかしかったのは、夕食前にイブニングドレスへ変えるついでに、一度下着を取り替える羽目になったことだ。薄々感づいてはいたけれど、気をやると足の間が濡れることを初めて知った。性質の違うものだとわかっているが、粗相のようで恥ずかしい。顔を赤らめて謝罪の言葉を繰り返す私にレネはアルディオス様のせいですから、とまた無表情に言ったが、慰めにはなっていない。
「あれは、イくっていうんだ」
「イく・・・?」
「そう、気持ちいいのがどんどん積み重なって、耐え切れなくなるまで溜まった時に弾ける。愛している人の前では普通のことだよ」
入浴と洗面所に行く時以外は片時も膝から下ろしてもらえず、今もベッドの上で膝の上に乗せられながらミルクを飲んでいる。
相変わらず甘くて、染み渡るよう。クリスは聞いたら、私にも作り方を教えてくれるでしょうか。
「僕の前でだけ、イくことを許してあげる。僕はミュリエルを愛しているから、あんなに無防備で可愛い君を他の誰かには見られたくない。もし見せそうになるのなら鎖で繋いで寝室に閉じ込めておくからね」
空になったコップは取り上げられ、そのまま流れるようにベッドに横にされる。もうすっかり慣れっこになってしまった動作だ。布団の上から腹部を優しく撫でるような手があり、私はゆっくり瞬きした。
先ほどの言葉を反芻する。なんて物騒なのだろう。でも、それにすらドキドキしてしまう自分がいる。
「わかり、ました」
「・・・本当に、君は僕を喜ばせる天才だね」
呆れたような声は、初めて聞いた。彼はいつでも美しさや優しさに隙がなかったから。そんな表情を見せてくれることが嬉しくて、クスリと笑った。
笑ったのが何年ぶり、なんてことはもう思わない。彼の気持ちを疑うことは罪だと思う。そして、自分の気持ちも。
「じゃあ、僕からもうひとつおねだり。抱かれる覚悟ができたら、教えて」
「!」
「もう君が着るウェディングドレスも、宣言の準備も整ってるんだ。あとはミュリエルの気持ちだけ」
ぽすりと、頭を撫でる手にうっすらと目を開けると、片肘をついて私の一挙一動を見つめる彼と目が合った。
「僕が耐えきれなくなる前に頼むよ。今朝だってかわいい君の寝顔を見て何も思わなかったわけじゃないんだから」
「は、はい・・・」
それでも、私の意思を尊重してくれる。それはとても幸せで、相手が好きだからしてもらえることなんだと理解できた。
「じゃあ、おやすみ僕の花嫁」
「おやすみなさい、アルディオス様」
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