赤薔薇伯爵

群青

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目が覚めた時には部屋に赤い日差しが差し込んでいた。
夕陽だ。

何時間も寝てしまっていたらしい。


とりあえず松葉杖をついて部屋を出ると、直ぐ様メイドに出会えた。
彼とラナが急いで来てくれた。

二人に両脇から見守られながら談話室へ通された。


「少し顔色がよくなったわ」

「ごめんなさい、ここ最近寝れてなくて」

事故から1週間経った今日、いつまでも泣いてはいられない。
そろそろ切り替えて生活について考えないといけない。

そんな現実に目を向けると、父と母の死とは違う溜息が漏れる。


「今年で確か17歳よね」

ラナの質問に私は頷く。


「皆さんうちの子に、と言ってたけど…。
養子縁組の必要はないでしょ。
後見人を立てればいいと思うのだけど」

「誰か信頼できる親戚は…?」

彼の質問に頭を振った。


「ねぇ、さっき二人で話したんだけど。
もし他に適任者がいないなら、うちの夫を後見人にするのはどうかしら。
血の繋がりはないけど、でも他人事とも思えなくって」

思ってもない申し出に私は答えに詰まる。
他の親戚のような金目当てではなさそうだ。
でも果たして即決していいのかどうか判断しかねた。

言葉に詰まる私にラナは直ぐに決めなくていいわと微笑んでくれた。


「今日はうちに泊まりなさいな。
夕飯も準備させてるの」

ラナの申し出はとてもありがたく、私は素直に甘えさせてもらうことにした。


夕飯までの間、私は時間をもて余すことになった。
松葉杖のため屋敷の中を散策するのも気が引ける。

ラナが談話室を中座したため、私は初めて彼と二人きりになった。
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