235 / 266
◎二年目、十一月の章
■夜天に舞う
しおりを挟む
海老瀬瀬名は芦原宗太郎と思わぬ言い争いをしてしまい、それがたまらなくなって外を飛びだした。
問題は時間で、すでに夜であったことだ。感情的になっている瀬名を呼び戻すために宗太郎も追いかけた。
結果的に二人は追いかっけっこをするハメになってしまった。気がつけば学園祭が行われる学校の近くまで来ていたというわけだ。
「お互い何やってんだろうね」
瀬名は肩で息をしながらぜえぜえ言っている。それは宗太郎も同じだった。
「待てって言っても止まらないからだろ」
そんな二人が異変を感じたのはそれから間もなくのこと。
あたりはゾワリとした空気感に包まれるととともに、何かに見張られているような感覚に陥る。
気がつけば二人は東京迷宮にログイン状態であった。
「これが噂に聞く強制ログインゾーンか?」
ただでさえステータス減退するというのに魔物のパラメーターも上がっているという話である。
「これってひょっとしなくてもまずい?」
魔物は襲ってくる気配はない。息を潜めて様子を窺っているとばかりに。
「まずいかも」
瀬名と宗太郎は背中合わせであたりを警戒しはじめる。
「伏せて!」
別の方向から男の子の声。二人は咄嗟に指示に従った方がいいと頭を下げる。
と同時に、何かが頭上をかすめていく。
それは鋭い牙であった。
「鵺だって!?」
血のように真っ赤に滴らせた感情を感じさせない瞳がなんとも不気味だった。
「鵺っていつも眠たそうにしている雑魚魔物じゃないの?」
猿の顔に尻尾は蛇。手足は虎。間違いない特徴は一致する。
「日中と夜では魔物の特性が変わることがあるんです」
片手に刀を構えた少年が説明をする。
「あなたは?」
「僕は古輪久遠といいます」
その名を聞いて知らない者がいようか。
「あなたが?」
「おそらくその古輪久遠だと思いますよ」
久遠は照れくさそうに笑う。
それから式神を取り出して、目の前の鵺に投げつけると同時に自身も走りだす。
久遠は信じられない速度で鵺と距離を詰めようとする。
が、しかしである。久遠の頭上から爪の一閃がきらめくと同時に振りおろされる。
「危ない!」
別のところに違う鵺が潜んでいたようだ。久遠からすれば完全な死角である。
驚くのは久遠の動きである。その動きを読んでいたとばかりに前宙して刀を一閃。
切り落とされたのは鵺の片手である。
そこから着地すると正面の鵺に向かって勢いを殺さずに走りこむ。
その速度はひょっとしたら先ほどよりも上かもしれない。
式神が着弾すると封縛が発動して鵺の動きは止まる。
その隙に尻尾を切り、続けて右の前足を切り落としながら、最後に首を撥ねる。
「お二人とも僕についてきてください!」
余韻に浸ることもなく久遠は呼びかける。一方であまりにも軽やかな早業を見せられて呆然としていた瀬名と宗太郎は我に返る。
久遠についていくと無事に強制ログインゾーンを脱出することに成功できたのであった。
問題は時間で、すでに夜であったことだ。感情的になっている瀬名を呼び戻すために宗太郎も追いかけた。
結果的に二人は追いかっけっこをするハメになってしまった。気がつけば学園祭が行われる学校の近くまで来ていたというわけだ。
「お互い何やってんだろうね」
瀬名は肩で息をしながらぜえぜえ言っている。それは宗太郎も同じだった。
「待てって言っても止まらないからだろ」
そんな二人が異変を感じたのはそれから間もなくのこと。
あたりはゾワリとした空気感に包まれるととともに、何かに見張られているような感覚に陥る。
気がつけば二人は東京迷宮にログイン状態であった。
「これが噂に聞く強制ログインゾーンか?」
ただでさえステータス減退するというのに魔物のパラメーターも上がっているという話である。
「これってひょっとしなくてもまずい?」
魔物は襲ってくる気配はない。息を潜めて様子を窺っているとばかりに。
「まずいかも」
瀬名と宗太郎は背中合わせであたりを警戒しはじめる。
「伏せて!」
別の方向から男の子の声。二人は咄嗟に指示に従った方がいいと頭を下げる。
と同時に、何かが頭上をかすめていく。
それは鋭い牙であった。
「鵺だって!?」
血のように真っ赤に滴らせた感情を感じさせない瞳がなんとも不気味だった。
「鵺っていつも眠たそうにしている雑魚魔物じゃないの?」
猿の顔に尻尾は蛇。手足は虎。間違いない特徴は一致する。
「日中と夜では魔物の特性が変わることがあるんです」
片手に刀を構えた少年が説明をする。
「あなたは?」
「僕は古輪久遠といいます」
その名を聞いて知らない者がいようか。
「あなたが?」
「おそらくその古輪久遠だと思いますよ」
久遠は照れくさそうに笑う。
それから式神を取り出して、目の前の鵺に投げつけると同時に自身も走りだす。
久遠は信じられない速度で鵺と距離を詰めようとする。
が、しかしである。久遠の頭上から爪の一閃がきらめくと同時に振りおろされる。
「危ない!」
別のところに違う鵺が潜んでいたようだ。久遠からすれば完全な死角である。
驚くのは久遠の動きである。その動きを読んでいたとばかりに前宙して刀を一閃。
切り落とされたのは鵺の片手である。
そこから着地すると正面の鵺に向かって勢いを殺さずに走りこむ。
その速度はひょっとしたら先ほどよりも上かもしれない。
式神が着弾すると封縛が発動して鵺の動きは止まる。
その隙に尻尾を切り、続けて右の前足を切り落としながら、最後に首を撥ねる。
「お二人とも僕についてきてください!」
余韻に浸ることもなく久遠は呼びかける。一方であまりにも軽やかな早業を見せられて呆然としていた瀬名と宗太郎は我に返る。
久遠についていくと無事に強制ログインゾーンを脱出することに成功できたのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ダンジョンが出現して世界が変わっても、俺は準備万端で世界を生き抜く
ごま塩風味
ファンタジー
人間不信になり。
人里離れた温泉旅館を買い取り。
宝くじで当たったお金でスローライフを送るつもりがダンジョンを見付けてしまう、しかし主人公はしらなかった。
世界中にダンジョンが出現して要る事を、そして近いうちに世界がモンスターで溢れる事を、しかし主人公は知ってしまった。
だが主人公はボッチで誰にも告げず。
主人公は一人でサバイバルをしようと決意する中、人と出会い。
宝くじのお金を使い着々と準備をしていく。
主人公は生き残れるのか。
主人公は誰も助け無いのか。世界がモンスターで溢れる世界はどうなるのか。
タイトルを変更しました
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
異世界転移~治癒師の日常
コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が…
こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします
なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18)
すいません少し並びを変えております。(2017/12/25)
カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15)
エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる