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◎二年目、十一月の章

■夜の追跡

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 世里が私服の久遠を見かけたのは夕食もかなり前に終わった夜更けのことだった。

 どこへ行くんだろうとついて行こうとすると右肩をちょんちょんと突かれる。

「どこへ行くんだよ?」

 びくりと反応して振り向くと晴がそこにはいた。

「久遠ちゃんは夜な夜などこへ行こうとしてるのか知ってる?」

「夜狩りだよ。あいつは夜にソロで狩りをやっている。それがあいつの収入源みたいだぜ」

「本当にそれだけ?」

「むしろそれ以外のことを疑う要素があるのかよ」

 まあ、それもそうなのだが。

「だったらやましいことはないはずよね」

 世里は久遠を追いかけようとするが、晴がそれを止める。

「待ちなって」

「……気安く触らないでくれますか?」

 キツめの口調で世里は晴の手を払いのける。

「夜はあの久遠ですら危ないんだぜ。だから夜に外出するときはみんな久遠に付き添ってもらっているんだ」

「だったら尚のことでしょ。早く行かないと久遠ちゃんを見失うわ」

 世里はバタバタと久遠を追いかけはじめる。

「……しょうがねぇな」

 晴もついて行こうと一歩進もうとすると服が引っ張られる。

「何がしょうがないんですか?」

 蘭々であった。

「世里の奴が外出していったんだよ。放っておけないだろう」

「そうですね」

 蘭々は晴についてくる気のようだ。この表情からして言っても聞かないだろう。

 どうしてどいつもこいつも頑固なんだと晴はため息をつく。

 外に出ると世里は角を曲がるところだった。晴はそれに何とか追いつく。

 するとそこには久遠もいた。

「晴と蘭々もきたのか……」

 久遠は嘆息をつく。それと同時にパーティーの申請がくる。

「九月に僕が強制ログインゾーンの場所がわかる地図を買ったのは覚えているよね」

「ああ」

 それがどうかしたのだろうか。

「これはパーティー内で誰か一人が所持をしていれば共有できる代物だ」

 実際にパーティーに入ってから地図を広げるとところどころに黒く塗りつぶされたゾーンが点在しているのがわかる

「ご覧の通り、ほとんど動かないゾーンと動くゾーンがある。僕は極力これを避けて動くようにしているんだ」

「ゾーンにメモみたいなのがついてるのは何だよ?」

「それは僕が一度調査したところだね」

 そういうことかと晴は納得する。

「今日はもう帰ってもいいわけだけど、世里姉は納得しないだろうからね。僕が何をやっているか見てもらおう」

 夜の冒険がはじまろうとしていた。

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