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◎二年目、一〇月の章

■東京迷宮クラン会議

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「東京迷宮クラン会議?」

 里奈が聞き慣れぬ言葉に首を傾げる。

 寮の談話室、来たのは明里だけではない。水呉すいご克馬かつまもである。

「そうだ。この度、開催されることになった」

 各クランの代表が集まって意見交換の場を設けるという主旨が表向き。

「東方旅団が持っている情報を開示させるというのが本音だ」

 なるほどと里奈の肩がガクリと落ちる。そういえば日中に視線を向けられていると感じることが増えていたのを思い出す。

「私たちの持っている情報って、そんなに有益ですかね?」

「少なくとも知らなかったことは多いよな」

 克馬が頷きながら言う。

「私らも東方旅団から情報をもらっておいしい思いをしてるだろって言われることがあってね」

 明里の性格を考えれば納得はしかねることだろう。実際に不満そうな顔をしている。

「それで君たちさえよければ君たちの持っている情報をすべてとは言わん。いくつか開示してやってくれないか?」

 里奈は久遠にどうしたものかと視線を送る。すると久遠が引き継ぐ。

「隠すというよりは大っぴらにしたくなかったんですけどね」

「そうだね。実際、面倒なことが起こってる」

 明里が同意する。

「ですが、全体で共有した方がいい話も多いので、いい機会かもしれません」

「出席してくれるのかい?」

 水呉の質問に久遠は里奈に答えを求めてくる。おそらく話をするのは里奈になるだろうからだ。

「……嫌だけど、いいわよ」

 里奈はまわりを気にせず大きくため息をつく。

「闇討ちに強引な団員への接触……、いろいろ画策しているという噂があった。だが、君たちが了承してくれたおかげで楔が打てる」

 ひとまず安心だと水呉は言う。その話に里奈はげっそりする。

玉石混交ぎょくせきこんごうとは言ったものだな」

 久遠は呆れ口調だ。気持ちはわかると里奈は久遠に同感した。

「でもさ、会議なんてどこでやるのさ?」

 東京迷宮をプレイしているクランの各々代表者が全員収容できるような場所なんてあるのかと明里はあるとは思っていないような口調であった。

「ありますよ。おあつらえ向きの場所が」

 久遠がきっぱりと言い放つ。

「それはどこなの?」

 里奈が問う。

「それは昔、この国におけるまつりごとの中心地――」

 そこからも言葉を久遠は続ける。

「国会議事堂なんてどうかな?」

 





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