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◎二年目、八月の章

■三方クラン会議

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 日を改めて東方旅団、それに有貴士団と暁の団はリーダーが三人集まって会合を開いていた。

 場所はいつもの学校にある会議室だ。

 代表である里奈、水呉、克馬はもちろんとして、久遠も出席していた。

 あとはなぜか一二期生かなと思う男女が一人ずつ。着ている服で男は暁の団、女は有貴士団というのはわかる。

「まず、我々に敵意はない。ここにいるのは教えてほしいことがあるからだ」

 水呉は最初にこれを強調してきた。敵対する気はないという宣言だ。

「お前たちはあきらかに俺たちが持っている情報を持っているよなって話になってな」

 克馬も今日は冷静だ。まあ、常日頃ああだと困るだけだが。

緑葉士団りょくようしだん明里あかりくんからも話は聞かせてもらっている。『君たちは東京迷宮攻略の根幹に携わっている』とね」

「僕たちも詳しいことがわかっているというわけじゃないんです」

 久遠はここに至る経緯を伝える。義務教育の件、三色烏や行商人の話。そして強制ログインゾーンのことも。

 その話を水呉と克馬は興味深そうに耳を傾けていた。

「では、私からも情報提供だ。現在、東方旅団は多くのクランから注目の的になっている」

 里奈は驚く。
「どうしてですか?」

「お前ら、あれだけ暴れて何もないと思ってんのかよ」

 克馬に呆れられる。言われてみれば当然か。

「君たちがクランイベントに参加を表明すればランキングに必ず影響が出る。それを懸念するクランもいるのさ」

「私たちはランキングイベントには参加するつもりはありません」

 里奈は言い放つ。

「それを第三者に信じさせる手段は持っているのかな?」

 痛いところを突かれたと思った。

「君たちもある程度は情報公開をしたほうがいいのだろうね」

 なるほどと里奈は思う。こちらが情報を開示する意思を見せるべきだと彼らは言っているのだ。

「でも、私たちそういうこと苦手なので……」

 そこが問題ないだろう。

「君たちと関わったクランは団員を一人、君のクランに出向させると聞いている」

「いや、それは……」

 あくまで偶然であって、慣例ではない。そう言いかけた。だが、水呉はそれを遮る。

「ならば、これより慣例にしたまえ。僕は妹の蘭々ららを出向させるつもりだ。ちなみに一二期生だ」

 水呉の隣にいるクールそうな女の子はペコリと一礼する。

「うちは従兄弟の賢司けんじだ。隣のそいつと同じく一二期生だ」

 克馬もそうらしい。賢司という男の子も克馬と似たような感じで暑苦しそうな雰囲気だ。

「受け入れてもらえるかね?」

 要するに二人を入れておけば東京迷宮内におけるクラン情報もより入ってくるということだ。

 ……これでは断る理由がないではないかと里奈はうなだれる。

「話は終わったようだね!」

 同時に明里が入ってくる。

「どうしてここに?」

 里奈は目を大きく見開く。

「宴会のあるところ私ありだ。覚えときな」

 何も宴会は寮だけで行う必要もない。里奈は肝に銘じておくことにした。

 何はともあれ厄介ごとが増えたのだけはわかったのである。
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