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◎二年目、八月の章
■頼果、東方旅団へ
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とりあえず水呉と克馬には後日、改めて出会うという約束を取りつけて解散となった。
その二人とフレンド登録することになった里奈は先ほどから表情が重い。
午後からこの騒ぎなので授業という気分でもなく、東方旅団のメンバーはプールにいた。
「伊織は泳がないの?」
伊織は体操着のまま着替えようとしなかった。それが不思議だったのか由芽が訊ねる。
「僕はいいんですよ」
何がいいというのか里奈は首を傾げる。
かわりにバスタオルと片手にスポーツ飲料の入ったペットボトル。泳ぎの練習をしている久遠に差しだすためだろう。
(マネージャーっていうんだっけ)
里奈は古の言葉を思い出す。かつてそういう人がいたらしいというくらいのものだが。
晴は綺麗はフォームでここぞとばかり見せつけてくる。しかし、女性陣は見向きもしない。
いまさら私らにモテたいのかと里奈は呆れる。ああ、いや、一人いたか。
里奈はプールサイドに座って足だけを水につけてぱしゃぱしゃしていると、頼果が何も言わずにただ存在感だけを与えて座ってくる。
この距離感で了解もとらないとはつくづく度し難いと思う。
頼果は身長だけではない。肩幅なんかもしっかりしている。里奈からすれば巨人の部類であった。
「どしたの?」
「……私をこのクランに入れてもらおうと思って」
そんなことかと里奈は思ってしまった。
「いいわよ」
「えらくあっさりだね」
「だって、断る理由もないじゃない」
結局のところはそこに尽きた。
「久遠に惚れた?」
「そんなじゃないわ」
頼果の眉がピクリと動く。
「女には複数だろうが、手を出すクズ野郎だしね」
里奈が思ったことをハッキリ口にすると頼果が頬をつねってくる。
「……痛いんだけど」
「そう言いつつ、私は彼のことわかってます。いい女ですアピールは何かムカつく」
「そんなつもりないけど」
「でも、許容してるワケでしょ。自分は嫉妬するでもない。変だわ、彼とあなた」
たしかにそうなのだが、久遠とは七月からこんな関係だ。だからといって改善しないとという気分もない。
「彼、あなたのこと好きでしょ」
「そう?」
まあ、知ってる。自分が久遠をどう思ってるかも理解してる。
「その正妻感よ。彼、そのうち別の女と子供できるかもよ」
里奈は頼果の顔を見るときに大きく目を見開く。
「ど、どうしたの?」
「ううん。何でもない」
里奈はふと頼果に聞いてみた。
「私たちって会うのはじめてだったよね?」
この質問の意味が頼果には伝わったらしい。
「はじめてだけど、はじめてじゃないのかもね」
その二人とフレンド登録することになった里奈は先ほどから表情が重い。
午後からこの騒ぎなので授業という気分でもなく、東方旅団のメンバーはプールにいた。
「伊織は泳がないの?」
伊織は体操着のまま着替えようとしなかった。それが不思議だったのか由芽が訊ねる。
「僕はいいんですよ」
何がいいというのか里奈は首を傾げる。
かわりにバスタオルと片手にスポーツ飲料の入ったペットボトル。泳ぎの練習をしている久遠に差しだすためだろう。
(マネージャーっていうんだっけ)
里奈は古の言葉を思い出す。かつてそういう人がいたらしいというくらいのものだが。
晴は綺麗はフォームでここぞとばかり見せつけてくる。しかし、女性陣は見向きもしない。
いまさら私らにモテたいのかと里奈は呆れる。ああ、いや、一人いたか。
里奈はプールサイドに座って足だけを水につけてぱしゃぱしゃしていると、頼果が何も言わずにただ存在感だけを与えて座ってくる。
この距離感で了解もとらないとはつくづく度し難いと思う。
頼果は身長だけではない。肩幅なんかもしっかりしている。里奈からすれば巨人の部類であった。
「どしたの?」
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そんなことかと里奈は思ってしまった。
「いいわよ」
「えらくあっさりだね」
「だって、断る理由もないじゃない」
結局のところはそこに尽きた。
「久遠に惚れた?」
「そんなじゃないわ」
頼果の眉がピクリと動く。
「女には複数だろうが、手を出すクズ野郎だしね」
里奈が思ったことをハッキリ口にすると頼果が頬をつねってくる。
「……痛いんだけど」
「そう言いつつ、私は彼のことわかってます。いい女ですアピールは何かムカつく」
「そんなつもりないけど」
「でも、許容してるワケでしょ。自分は嫉妬するでもない。変だわ、彼とあなた」
たしかにそうなのだが、久遠とは七月からこんな関係だ。だからといって改善しないとという気分もない。
「彼、あなたのこと好きでしょ」
「そう?」
まあ、知ってる。自分が久遠をどう思ってるかも理解してる。
「その正妻感よ。彼、そのうち別の女と子供できるかもよ」
里奈は頼果の顔を見るときに大きく目を見開く。
「ど、どうしたの?」
「ううん。何でもない」
里奈はふと頼果に聞いてみた。
「私たちって会うのはじめてだったよね?」
この質問の意味が頼果には伝わったらしい。
「はじめてだけど、はじめてじゃないのかもね」
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