156 / 266
◎二年目、七月の章
■久遠、土蜘蛛を討つ
しおりを挟む
「君、僕とパーティーを組まないかい?」
久遠が女の子に問いかけた。すると女の子は首を縦に振った。
そうか。囮にしたときにあの男はパーティーを解散したのか。
「おい、行くぞ!」
男は自分のパーティーメンバーに呼びかけて展示場をあとにする。こういう形で囮にするのはさすがに納得はできないと由芽は思う。
「ざっとHPは二〇万か」
久遠がつぶやく。
「……どうして私を助けたの?」
少女はかつての久遠たちと同じように透けない眼鏡をかけている。そのせいで表情は見えないものの、声から困惑した様子は伝わってくる。
「君が困ってるように思えたからね」
久遠が土蜘蛛を抑えているうちによろめきながらも女の子は立ち上がり、体勢を立て直しはじめる。
由芽は久遠に呼びかける。
「久遠くん、私たちはどうすればいい?」
「こいつに近づくのは危険だ。だから、しばらく待機で頼むよ」
土蜘蛛のHPと防御力だと由芽の一撃ならダメージは通るが、よくて一千ダメージ代だろう。
となれば、投擲武器で相手の行動を阻害したりする方向で動く方が得策だろう。
こんな時に里奈がいれば土蜘蛛のダメージ上限を封印して久遠が迅速に始末しただろうにと由芽は考えてしまう。
久遠が動いて蒼烏の刀を振るうたびに土蜘蛛の足が体から離れていく。
注意が久遠へ向きそうになると浩和と女の子が牽制して注意を逸らす。
久遠の動きは剣舞といっていいほど流麗だった。
留まらず流れ続けて相手を翻弄している。
気がつけば土蜘蛛の八本の足はすべて切られて、身動きが取れない状態だ。ちなみにここから足は仕様として回復をはじめる。あとは復活するまでにどれほどのダメージが与えられるかだ。
久遠はとめどなく連擊を繰りだして確実にダメージを与えていく。
土蜘蛛が頭を天井に向けて張り叫ぶと八本の足は復活する。
それから久遠に向けて紫色の毒々しい粘性の液体を口から発射する。
そこに女の子が割りこむ形で液体を扇子で弾き返すと土蜘蛛の顔面を直撃した液体が灼く。
扇子は攻撃を避けることに重点を置いた武器だ。
武器スキルは二つ。
一つは攻撃予測線可視化という相手が攻撃してくるラインを可視化するというもの。
もう一つは弾き返すというスキルで、これは飛んできた飛び道具をタイミングよく扇子を当てると相手にはね返すというものだ。
スキルの使用上限がない代わりにタイミングがシビアなものの成功すればレベルなど一切関係なくどんな飛び道具でもはね返せる。
そのため純粋にプレイヤースキルを要するに武器だと言われている。
いろいろなプレイヤーを見てきたつもりだが、あそこまで綺麗に弾き返すをうまく決めたプレイヤーを由芽は見たことがなかった。
しかも相方は久遠だ。そんな隙を見逃すはずもない。
刀で何度も斬りつけると土蜘蛛はやがてHPがゼロになる。
それとともに霧散していった。
土蜘蛛を討ち取ったのだ。
久遠が女の子に問いかけた。すると女の子は首を縦に振った。
そうか。囮にしたときにあの男はパーティーを解散したのか。
「おい、行くぞ!」
男は自分のパーティーメンバーに呼びかけて展示場をあとにする。こういう形で囮にするのはさすがに納得はできないと由芽は思う。
「ざっとHPは二〇万か」
久遠がつぶやく。
「……どうして私を助けたの?」
少女はかつての久遠たちと同じように透けない眼鏡をかけている。そのせいで表情は見えないものの、声から困惑した様子は伝わってくる。
「君が困ってるように思えたからね」
久遠が土蜘蛛を抑えているうちによろめきながらも女の子は立ち上がり、体勢を立て直しはじめる。
由芽は久遠に呼びかける。
「久遠くん、私たちはどうすればいい?」
「こいつに近づくのは危険だ。だから、しばらく待機で頼むよ」
土蜘蛛のHPと防御力だと由芽の一撃ならダメージは通るが、よくて一千ダメージ代だろう。
となれば、投擲武器で相手の行動を阻害したりする方向で動く方が得策だろう。
こんな時に里奈がいれば土蜘蛛のダメージ上限を封印して久遠が迅速に始末しただろうにと由芽は考えてしまう。
久遠が動いて蒼烏の刀を振るうたびに土蜘蛛の足が体から離れていく。
注意が久遠へ向きそうになると浩和と女の子が牽制して注意を逸らす。
久遠の動きは剣舞といっていいほど流麗だった。
留まらず流れ続けて相手を翻弄している。
気がつけば土蜘蛛の八本の足はすべて切られて、身動きが取れない状態だ。ちなみにここから足は仕様として回復をはじめる。あとは復活するまでにどれほどのダメージが与えられるかだ。
久遠はとめどなく連擊を繰りだして確実にダメージを与えていく。
土蜘蛛が頭を天井に向けて張り叫ぶと八本の足は復活する。
それから久遠に向けて紫色の毒々しい粘性の液体を口から発射する。
そこに女の子が割りこむ形で液体を扇子で弾き返すと土蜘蛛の顔面を直撃した液体が灼く。
扇子は攻撃を避けることに重点を置いた武器だ。
武器スキルは二つ。
一つは攻撃予測線可視化という相手が攻撃してくるラインを可視化するというもの。
もう一つは弾き返すというスキルで、これは飛んできた飛び道具をタイミングよく扇子を当てると相手にはね返すというものだ。
スキルの使用上限がない代わりにタイミングがシビアなものの成功すればレベルなど一切関係なくどんな飛び道具でもはね返せる。
そのため純粋にプレイヤースキルを要するに武器だと言われている。
いろいろなプレイヤーを見てきたつもりだが、あそこまで綺麗に弾き返すをうまく決めたプレイヤーを由芽は見たことがなかった。
しかも相方は久遠だ。そんな隙を見逃すはずもない。
刀で何度も斬りつけると土蜘蛛はやがてHPがゼロになる。
それとともに霧散していった。
土蜘蛛を討ち取ったのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる