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◎二年目、七月の章

■武器種について久遠は講義する

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「まず投擲は武器のランクがない」

 かわりに投擲するアイテムというのは消耗品で使えばなくなる。便利だが、メインにするとお金の消耗が激しい。

「弓矢はランクがあるけど、矢は消耗品だ」

 投擲をメインにすることを思えば安くつくほうだとされている。

「結論からして、遠距離の武器をメインでやっていくとお金が不足しがちになる」

 里奈がいつもひいひい言ってる原因の一つだろう。

「結論から言うと弓矢のランクをあげていけば安い矢でもしっかりダメージは出せる」

 由芽と圭都には弓矢のランクをあげていこうという提案であった。

「それと武器ランクは高ランクほど攻撃力の伸びが悪くなる」

 レベルが低いうちはそこそこで止めておくほうがいいというアドバイスであった。

「そうなんだ。知らなかったよ」

 高レベルになると足し算ではなく乗算の割合が大きくなっていって、一ポイントの重要度が増すのだという。

「いずれにしろ稼げる以上のことはやらないことさ」

 そういう久遠はどうなのだろうか。いまだに夜な夜な出かけてソロで狩りへ行っているのは知っている。

 だが、久遠は所持金などの手の内を誰にも明かした事がない様子だった。

 言わないのか、言えないのかはさておき、底が見えないと感じることが由芽にはあった。

「とりあえず、明日はレベリングをしよう。とりあえず圭都にはゲームに慣れてもらう」

「ん」

「夜の狩りは行かないんだね」

「最初からリスクをとる必要はないよ」

 夕食を食べ終えて食器を片づける。

「ベッドは誰が寝るの?」という由芽の問いに久遠は答える。

「僕はここで布団敷いて寝るつもりだけど」

 襖も閉めるのだから問題ないだろうと言うことだった。

「ふーん。お風呂は誰が先に入る?」

「僕は最後でいいよ」

 机を横に動かしつつ、久遠は布団を敷きはじめる。

 あくびをしている圭都。

 由芽はちょっとしたお泊まり会の気分になる。男の子がいるのが少し気になる。

 そして考えてしまうのだ。久遠は自分をどう思っているのかと。
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