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◎二年目、五月の章

■スキルが封印されていない大鬼ときたら手のつけようがない

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 大鬼が夜空に向かって吠えた。

 それから足下でビクついていたスキルが封印された子鬼を太い左腕から繰りだされる拳で頭をかち割る。

「……何が起こってるの?」

 里奈は状況を何とか把握しようと努めるが、大鬼の行動がやはり理解できなかった。

 久遠も「どういう行動パターンなんだ?」と信じられないという表情ながら、小声でつぶやいている。

 それから大鬼はこちらへ向かって叫んでくる。

 それとともに瘴気が消えていく――のではない。

 大鬼に向かって収束していく。それから大鬼を中心に黒い鎖が放たれて、里奈たち四人の腰まわりを捕らえる。

 しかし、動きを封じられたわけではないようで、体は自由に動いた。

「……システムログを読むんだ」

 久遠が厳かに里奈たちへ呼びかける。里奈はその通り、システムログを開く。

 そこにはこのような記載があった。

 瘴気吸収が発動。大鬼のステータスが強化されました。

 瘴気の鎖が発動。瘴気の鎖は発動した相手を倒さないかぎり逃亡ができません。鎖に拘束されている間はステータス、スキルの大幅な減退が起こります。

 里奈は明里と葵に視線を向ける。二人とも動きが見るからに鈍っていた。

 一方の里奈と久遠は蒼烏と紅烏の瘴気耐性のおかげで、能力減退は発生していない。

「里奈、大鬼の相手は僕がする」

「……倒せるの?」

 その問いに久遠が答えてくれることはなかった。

 大鬼が両腕棍棒を明里に向かって叩きつけようとするのを久遠が蒼烏の刀の腹で受け止める。

「いまのうちに退がって!」

 あの一撃を刀で受け止めた久遠にも驚きだが、それでも大鬼の一撃は重いようでジリジリと押されている。

 それでも久遠は懸命に受け止めた棍棒を押し返そうとする。

 すると大鬼の棍棒が青く光り久遠が押され気味になる。

 久遠なら大丈夫と思っていると、里奈はいつもと様子がいつもと違うことに気がつく。

 表情にいつもの余裕が見られない。代わりに脂汗が額から浮かんでいる。

 明里と葵は態勢を立て直して、里奈を守るように陣形を組む。

 しかし、これは久遠がしっかり攻めているときに効果を発揮するものだ。

 どうすればいいと里奈は頭を悩ましていると、ちょんちょんと誰かが肩をつついてくるのであった。
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