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◎二年目、四月の章

■桜は散ってしまったが、まだまだはじまったばかり。

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 満開の桜の花はすべて散り、いまは葉桜になっていた。

 教室で授業を受けている三人の姿。

 里奈と久遠、そこには由芽の姿もあった。

 里奈にとって授業とは退屈なものだったが、由芽はどうも違うらしく熱心に聞き入っている。

 一方の久遠は表情に見せないのでよくわからない。

 由芽も学校に通うようになり、里奈と久遠に変化が起こった。

 まず学校へ通うときにメガネとマスクをかけるのをやめた。

 では、どうして? と問われたら二人はどう答えるだろうか。きっとよくわからないと言うことだろう。

 それくらい自然な行為なのだということだ。

「お昼どうする?」

 里奈は由芽に訊ねる。

「私、まだ授業受けているんだけど」

 由芽は呆れている様子だった。

「私の唯一の楽しみなのよ」

 仕方がないなと由芽は授業をいったん止める。

「授業はいつでも受けられるし、里奈ちゃんの希望を優先しましょうか」

「やった」

 里奈は飛び跳ねる勢いで喜んだ。

「それじゃあ久遠も行くわよ」

 久遠はあからさまなため息をつく。きっと彼も授業の途中だったのだろう。

 たまに久遠と由芽で授業内容のことを話しているときがある。

 こういうとき里奈は会話の内容がわからなくて二人だけの世界に入られているようで不満だった。

「わかったよ」

 久遠は授業を中断して空中パネルを閉じる。

 もう一つの変化はこれまで一人でとっていた昼食を三人でとるようになったことだ。

 そういえば由芽に授業内容のことで訊ねられたことがあったが、あれが後にも先にも一度だけだった。

 しかも露骨にドン引きしていたことを思い出す。

「由芽は学校楽しそうよね」

「というより勉強するのが楽しいんだと思う。里奈ちゃんや久遠くんもいるしね」

 由芽も里奈たちと同じ寮に入っている。部屋は里奈の隣だ。

 そんなわけで三人はよく行動を共にしていた。

「そうだ里奈ちゃん。クランを設立したらって話は考えてくれた?」

「もちろん。せっかくだし設立しちゃいましょうか」

 里奈と由芽が話している後方で、久遠はたまに外の景色へ目を向けたりしながらついてくる。

 こういう状況だと案外しゃべらない男なのだと最近になってわかった。

「名前は決めたの?」

「久遠と相談してね」

 教えて教えてと由芽が詰め寄る。それに対して里奈は満を持して伝えた。

東方旅団とうほうりょだんよ」
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