上 下
67 / 266
◎二年目、四月の章

■決断はとりあえずそれぞれに委ねることとした

しおりを挟む
 三月の戦士団の元メンバーたちは今後のことを案外とあっさり決めた。

 結局は自分たちで地道に探すという結論に至った。その後、打ち上げと称して久遠のおごりでご飯を食べて、フレンド登録をして解散となった。

 フレンド登録してもらったときの久遠は少し嬉しそうで、あんな顔もするのだと里奈は意外に思ったものだ。

 いまは寮への帰り道。里奈とその隣には久遠、さらに由芽がいた。

「里奈ちゃんと古輪くんはこれからどうするの?」

 そう言われて里奈は少し考えこむ。言われてみれば何も考えていなかったことに気がつく。

「どうしたらいいの?」

 当たり前のように里奈は久遠に訊ねた。

「指針は君に決めてほしいんだけどね」

 久遠は深々と嘆息する。

「思いつかないものは仕方ないでしょ。とりあえず久遠は私のレベルあげを手伝うでいいんじゃないの」

「とりあえず里奈がそう言うなら任せるよ」

 二人のやりとりを見て、由芽はキョトンとして立ち止まる。

「どうしたの由芽?」

 里奈が訊ねる。

「二人ともいつから名前で呼びあうようになったの?」

 その質問にきっとあらぬ勘違いをしているであろう由芽に里奈は言ってやろうと思った。

「こいつは相棒。だから名前で呼びあうのは当然じゃない」

 由芽は久遠に視線を向けるが、久遠は避けるように早足で歩きだす。

「ところで由芽はどうしてついてきてるの?」

 里奈にとって疑問はそこだった。

「私も学校に通ってみようかなって」

「ずいぶん軽いノリね」

「義務教育を受けるのは別におかしいことじゃないよね。それにやっぱり私はどっちかというと勉強とかのほうが好きだなっていうのがわかったんだ」

 たしかにそうだが、この街にいる子供たちの価値観からはズレている。

「だから二人にまずは義務教育のことを教えてほしいの」

 里奈と久遠は顔を見合わせる。

 今日このとき二人には仲間が増えたのである。
しおりを挟む

処理中です...