62 / 266
◎二年目、四月の章
■里奈と由芽はは久しぶりに夜な夜な何を語るのか
しおりを挟む
里奈と由芽はそれぞれの布団の中に入るとついていた灯りが自動で消える。
「最近ね。身長はそこまで伸びてないんだけど、胸のあたりとかお尻のあたりが大きくなったみたいで……」
自分は身長どころか胸もお尻も大して変わっていないのだがと里奈は声に出さず叫んだ。
由芽が里奈の服を着たとき里奈はあまりに白々しい返事をした覚えがある。
成長には個人差があって、きっと自分も由芽に負けないくらいの成長をするに違いないと里奈は思うことにした。
「いいじゃない里奈ちゃんはスレンダーで可愛らしいんだから」
「よゆーのつもり?」
ここ一年は自分を特に誰かと比べる必要がなかったので、由芽の成長度合いを見せられるとさすがに胸にくるものがある。
「そう聞こえるなら謝るけど?」
「それはそれでムカつくからイヤ」
里奈ははっきりと言う。里奈のこういう性格を嫌う人もいる。一方で由芽のように笑って流してくれる娘もいるのだ。
「……里奈ちゃんに連絡しても、また無視されるかなって思ったけど」
由芽はいまどんな表情をしているのだろうか。里奈は暗がりの中を想像するしかなかった。
「助けてって言ったら、ちゃんと来てくれたね」
由芽は一年間どんな思いで過ごしていたのだろうか。その口調は淡々としたものだ。
「やっぱり里奈ちゃんは私のヒーローだよ」
「買い被りすぎ」
里奈は自嘲気味に笑った。ではと思うのだ。久遠がいなかったらどうしていたのかと。それについての答えはいまだにでていない。
「私、里奈ちゃんにひどいことしたよね。友達なのに……いちばんの友達だと思ってたのに」
里奈がクランから追放された件のことだろう。たしかに追放されるまで由芽との関係はギクシャクしはじめた。
一方で追放されたあとに由芽を一方的に拒んだのは里奈のほうだ。
「……一緒に寝る? ベッド狭いけど」
由芽は「うん」と言って頷いた。
それだけで里奈の心のわだかまりのようなものが少しだけ解けたような気がした。
「最近ね。身長はそこまで伸びてないんだけど、胸のあたりとかお尻のあたりが大きくなったみたいで……」
自分は身長どころか胸もお尻も大して変わっていないのだがと里奈は声に出さず叫んだ。
由芽が里奈の服を着たとき里奈はあまりに白々しい返事をした覚えがある。
成長には個人差があって、きっと自分も由芽に負けないくらいの成長をするに違いないと里奈は思うことにした。
「いいじゃない里奈ちゃんはスレンダーで可愛らしいんだから」
「よゆーのつもり?」
ここ一年は自分を特に誰かと比べる必要がなかったので、由芽の成長度合いを見せられるとさすがに胸にくるものがある。
「そう聞こえるなら謝るけど?」
「それはそれでムカつくからイヤ」
里奈ははっきりと言う。里奈のこういう性格を嫌う人もいる。一方で由芽のように笑って流してくれる娘もいるのだ。
「……里奈ちゃんに連絡しても、また無視されるかなって思ったけど」
由芽はいまどんな表情をしているのだろうか。里奈は暗がりの中を想像するしかなかった。
「助けてって言ったら、ちゃんと来てくれたね」
由芽は一年間どんな思いで過ごしていたのだろうか。その口調は淡々としたものだ。
「やっぱり里奈ちゃんは私のヒーローだよ」
「買い被りすぎ」
里奈は自嘲気味に笑った。ではと思うのだ。久遠がいなかったらどうしていたのかと。それについての答えはいまだにでていない。
「私、里奈ちゃんにひどいことしたよね。友達なのに……いちばんの友達だと思ってたのに」
里奈がクランから追放された件のことだろう。たしかに追放されるまで由芽との関係はギクシャクしはじめた。
一方で追放されたあとに由芽を一方的に拒んだのは里奈のほうだ。
「……一緒に寝る? ベッド狭いけど」
由芽は「うん」と言って頷いた。
それだけで里奈の心のわだかまりのようなものが少しだけ解けたような気がした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に
菊池 快晴
ファンタジー
「誰も見てくれない……」
黒羽黒斗は、呪術の力でダンジョン配信者をしていたが、地味すぎるせいで視聴者が伸びなかった。
自らをブラックと名乗り、中二病キャラクターで必死に頑張るも空回り。
そんなある日、ダンジョンの最下層で超人気配信者、君内風華を呪術で偶然にも助ける。
その素早すぎる動き、ボスすらも即死させる呪術が最凶すぎると話題になり、黒斗ことブラックの信者が増えていく。
だが当の本人は真面目すぎるので「人気配信者ってすごいなあ」と勘違い。
これは、主人公ブラックが正体を隠しながらも最凶呪術で無双しまくる物語である。
誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る
月
ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。
能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。
しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。
——それも、多くの使用人が見ている中で。
シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。
そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。
父も、兄も、誰も会いに来てくれない。
生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。
意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。
そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。
一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。
自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる