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◎二年目、四月の章

■助けを求められれば行くべきなのか、里奈は判断をしかねていた

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 里奈は久遠と朝食をともにしていた。由芽からのメールについて相談するためだ。

 久遠には由芽からもらったメールを開示していた。

 一読して内容を理解したのか久遠は「うん」と頷く。

「それで君はどうするつもりなの?」

 久遠から提示された案は一つだ。由芽にクランを抜けることを勧めることである。

「そうなると次のクランを探さないといけないけど、メンバーが集まらなくて困っているクランならたくさんあるよ」

 もちろん上を見なければという条件でだがと久遠はつけ足す。

「とりあえず直接会って話を聞いてあげるのがいいんじゃないかな」

「でも、これから学校でしょ」

「学校の授業なんていつでも受けられるよ」

 それもそうかと里奈は納得してしまう。授業はAIがやるのだから、どの時間に受けようが問題なかった。

「つき合ってくれるんだ」

「昨日の答えが保留だからね」

 この言い方だと里奈が告白を保留しているようだった。何となくモテているようで気分がいい。

「片岡さんってわかりやすいよね」

 久遠は呆れ気味に笑う。

「何か馬鹿にしてる?」

「僕のまわりにあまりいないタイプなのはたしかだね」

 里奈が久遠の顔をじっと覗きこむ。

「古輪くんって友だちとかいるの?」

「多くはないかな」
 
 その言い方だと少ないなと里奈は推測した。

「そういう自分は何でも知ってますみたいな顔してるからじゃないの」

「忠告のつもりかい? だったらありがとうと言っておくよ」

「そういうところよ」

 これは失敬と久遠が頭を下げる。お互いどういう会話をしてるんだかと里奈は肩をすくめる。

「とりあえず由芽には連絡したわ。待ち合わせ場所も送信完了してる」

 あとはパジャマ姿の自分を見て、着ていく服だけだと思い至るのであった。

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