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◎一年目、翌年の四月に至るまでの章―外伝―

■レベルアップ

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 戦闘が終わり一斉にログアウトする。
 あとは反省会をするだけだ。

「魔物を倒したら本当にお金がもらえるなんて不思議じゃない?」
「でも、これがないと私たち野宿になっちゃうよ」
 実際に野宿している人間は存在するそうだ。宿代は案外バカにならないというのはたしかだが、そこまでするほどではない。

 実際、里奈のような初心者でも一日分の宿と食いぶちを稼ぐのはできている。もちろん最低限という範囲でだが。

 やはりいい生活をしたければレベルをあげてより強い魔物と戦う必要がある。

「ポイントもそれなりには入ったんじゃないかな?」

 翔の言うポイントとはパラメーターに割り振るポイントのことだ。

「全部振ったらレベルあがるわ」

 パラメーターは力、防御、精密、速さの四つ。HPは装備する防具で変動する。

「いまの段階で極振りはしないこと」
 これは翔がいつも口すっぱく言ってることだ。

 このゲームはパラメーターに数値を振ることで自身を強化する。パラメーターが一定の条件を満たすことでスキルを取得できる。
 ここでやっかいなのは一つのパラメーターをあげることで取得できるスキルもある一方で、複数のパラメーターを一定数値あげることで取得できるスキルがあるということだ。

 そのためプレイはじめの段階では極振りよりも万遍なくあげることを推奨される。
「これでもう少し強い魔物と戦える?」
 パラメーターを振り終えて、里奈は翔に訊ねる。

「一気には無理さ。地道にいこう」
 いつも彼はこの一言だ。
 つまり貧乏生活はまだ続くと言うことだ。
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