Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

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マイカ帝国編

0146 要人

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 この世界は地球と同じ五大陸から出来ている。

 とは云えども、魔王軍が攻めて来るとの事で召喚されたのがこの大陸なので、他の大陸は大丈夫なんだろう。大丈夫であって欲しい。

 桜花達が拠点としているヤヌス王国がある大陸は全部で5つの国から出来ている。
・ヤヌス王国
・リンド評議国
・シェラハ王国
・マイカ帝国
・エランド王国
 その5つにさらに「二ホン国」が加わったので、現在は6か国になる。
 急に二ホン国と言われても、元来は恐れられている魔王国だった事実は変えることは出来ない。出来ないからこそ、諸外国に本来の二ホン国を知って貰わなければならない。

 このところ、リョウタはバレットと同行している事が多くなった。バレットを通じ二ホン国をアピールするためであり、希望であれば二ホン国に招待する事もしているらしい。

 その甲斐あって、ヤヌス王国は中立国シェラハ王国と国交を結ぶことに成功、これに引き続き二ホン国とも国交を結ぶ運びとなった。

 ただ、問題は「残りの国」である。マイカ帝国はヤヌス王国に敵意むき出しだし、そのマイカ帝国と仲が良いエランド王国。この2つの国は、以前にサリーナが良く見えないと言っていた国だ。

 サリーナが良く見えないという理由は、「反女神の国」であるという事が大きな原因らしいのだが・・・。

 ただ、不思議な事にマイカ帝国には冒険者ギルド本部と商人ギルド本部があるのだ。これは元々、中立国家だったのかはたまた、アピールだけなのか誰も解らないのだが、両ギルド本部があるのは確かな事だ。

 マイカ帝国の隣にはハイマギーの森がある。桜花達の働きによって行き来が可能になった地域だ。さらにこの森は海へと繋がっているので海の向こうの大陸にある異国との国交や貿易が可能になるのでマイカ帝国とは是非とも国交を再開したいのがヤヌス王国の本音である。

 両ギルドの本部には、バレットもリョウタも顔を見知っているので、マイカ帝国の要人の紹介をしてもらうことになった。

 場所は?と尋ねると両ギルド共、王国のレストランミツヤ2号店が良いと口を揃えて言って来たので、後日会う約束を取り付けたようだ。




***





 王国の城門に馬車が3台やって来た。紋章からしてマイカ帝国の物というのがわかる。馬車の中には、冒険者ギルドマスターと商人ギルドマスター代行とあと要人らしき二人が乗っていた。

「ここがあのレストランミツヤですよ!どうぞ!」

 冒険者ギルドマスターにうむ。と一言だけ声にしたのはマイカ帝国の要人のようだ。もう一人も要人であるのだろう。

「こちらのお店は帝国では食べる事の出来ない物が沢山ありますの。どうぞ、ご堪能下さい」

 要人に説明をしている商人ギルドマスター代行がその場にバレットを呼んだ。

「初めまして。バレット・クロゲワギュウ・コローレと申します。」
「本日私共は非公式での訪問となっております。ですのでウォールとお呼びください。それと、この者はキシールと言います。」

 冒険者ギルドマスターと商人ギルドマスター代行は、その場を後にし別テーブルに着くや否や、好きなメニューと酒を注文している。結局はこの二人がここの料理と酒が飲みたかっただけなのだ。しかし、失敗なのかと言われるとそうではない。レストランミツヤは今や大陸で一番とささやかれる名店となっているのだから。

 マイカ帝国の要人が非公式とは言えOKしてくれたのも、レストランミツヤで食事をしてみたかったのが大きな理由でもある。

「長旅で疲れたでしょう?今日の所は飲んで食べてを楽しんでください。」
「それはなんとも有りがたい。そうさせて頂くとします。」

「何が美味しいのですかな?」
「何でも美味しいですが、私はクロゲワギュウステーキをおすすめします!」

 バレット国王・・・。この店で口にしたのはステーキとミルクティーだけなのだ。いまさらながら他のも食べておけば良かったと思っても後の祭りである。
 助けて!その視線が玲子に刺さる。まったく、この人はとため息をついた玲子は何を食べるか悩んでいる二人の所に足を運び

「好きな食材はなんですか?」「嫌いな食材は?」と聞いてくる。
「良ければ好きな具材で出来る料理を少しづつ出しますので、気に入った物を言って頂ければ、お出ししますわ。」

 玲子が提案したメニューは「アラカルト」。要は普通に作って口に合わないからと捨てるよりも、味見と称して少しだけ出す事によって、経費が押さえられるというもの。手間はかかるが、材料費に無駄がない。

 どの料理も美味いですね!こんな料理は見た事がありません!と大絶賛をしているところにリリアが顔を出し、この料理は全てこの子が作った物ですと紹介をすると、獣人なのにと顔色を変えるのだが、それも束の間の事でマイカ帝国でも獣人達を教育すれば良いのかも知れないと前向きな答えが返ってきた。

 今日は楽しい時間を過ごし、難しい話は明日にしましょうと今夜は迎賓館に宿泊してもらう事にした。





 翌朝。

 玲子がレストランミツヤに顔を出すと昨日の要人の方二人が来ていたので、一応声を掛けると、案の定の話しを切り出された。

「レストランミツヤをマイカ帝国で出店してくれないか?」
「リリアという獣人の料理人をくれないか?」

「私共は商品ではございませんので。」と軽くいなしてしまった。これでは悪いなと思い「レストランミツヤは国交が成立した暁には出店を考えますわ。」

 これで、バレットも話しをしやすくなるだろうと思っていたら、バレットの顔もそこにあった。
 え?と思っていると「玲子さん、ミルクティーの茶葉が切れてたんです!それでミルクティーを飲みに来ました!」とボサボサ頭で言って来たので、朝食を用意することにした。バレットは20代前半、玲子からすれば弟のような感じである。

 バレットに朝食を出していると、マイカ帝国の要人二人が羨ましそうに見てくる。良ければ食べますか?と聞くと何度もうなづいた。朝食と言ってもコーンスープにBLTサンド、珈琲と、簡単な料理だけど、この世界の人たちからすれば珍しい物らしい。嬉しそうに食べている。

 二人は朝食を食べ終わると席を立ち、バレットに挨拶をすると国に帰ってしまった。バレットにいいの?と聞くと実は昨日の夕刻から夜中に掛けて話し合いを済ませたのだとか。

 皇帝が王国に来る時は国交を開く時になるとの事。それまでの間は水面下で話し合いをすることになったらしい。

 そもそも、何でヤヌス王国とマイカ帝国は仲が悪いのか?とバレットに聞いてみると、「父の負の遺産です。」と言っていた。なるほど、お金関係って奴ね。
「それを解決するために一つ一つと片づけて行くのが今回の会談で決まったのです。」



***





 ここはマイカ帝国皇帝の部屋。
「ウォール副大臣とキシール外務総管がヤヌス王国で会談をしている模様です。」
「わかった。ご苦労」

 半分ほどワインが入ったグラスをテーブルに置き、何やら考えているのはマイカ帝国皇帝ロンベルクである。ロンベルクはシエロ前国王に一方的に支援打ち切りされた事を恨みに思っている。いるのだが。そのシエロ王は内戦で亡くなりバレット国王に変わったのだから恨みはないに等しい。

 マイカ帝国はこのところ国益が落ちて行く一方であり国が傾きかけているのが、ひしひしと肌に感じられる。
 ならば、ヤヌス王国から奪えば良いのだ!と唸る軍人を抑えるのも限界に達してきた。現在進行形で国交の正常化の話しがまとまれば、支援も受けられるし経済も良くなるに違いない。ウォールとキシールが帰って来れば詳しい話しを聞きたいものだと思っている。

 話しの進み具合の報告を待ってから考え、次回は私が直接会うのもいいかも知れないとも思いながら残りのワインを口にする皇帝なのであった。






***





「今日の訓練はここまで!」
 桜花は傭兵団におおかた日本刀が行き渡っていることから剣術を教えるのが日課になっていた。

「いつもより早くないですか?」
 ジキルが不思議そうにしている。
 と、言うのもいつもなら傭兵団全員が腕が上がらない立ち上がることさえ困難というぐらいまでシゴキ上げているのに、今日に限っては誰の息も上がってないからだ。

「今日はな、ヒガシムラヤマから牛肉が数頭分送られてきたんだ。これで今からバーベキューをしようと思ってな。たまにはいいだろう。」

 牛・バーベキュー・・・なんて甘美な響きなのだろうか傭兵団全員がウットリとした目、口にはよだれが流れそうになっているのがわかる。

 気を取り戻した傭兵団全員は、素早い行動でバーベキューの用意を始める。普通ならば普段もこれぐらい動いてもらいたいものだと言うのだろうが、傭兵団全員は普段から真面目に取り組んでいるのでこの言葉は似合わない。

 ベルサイユ宮殿の庭に炭火コンロが数十台置かれ次々に火を入れていく。それと同時にメインの牛がお目見えしたので、皆は歓声をあげている。

 牛を捌くのはリリアでは力不足なので、シェフとコックがみるみると捌いていく。捌いた肉をリリア・マリー・クローバーが分厚いステーキ大に切って行く。

 レストランミツヤの調理スタッフ総出で野菜を切り、下味を付けるといった連携もバッチリだ。ドンドンと準備が進んでいるのを、傭兵団は今か今かと見つめる状態になり・・・

「いいぞ、焼けー!」

 桜花の号令で全員が一斉に肉を焼いていく。
庭いっぱいに香ばしい香りと煙が立ち込め、更にエールで乾杯をする!

 乾杯の中にバレットとリョウタの顔もあった。


 王国は今、平和なのだと誰もが確信していた。


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