Venus And The SAKURA

モカ☆まった〜り

文字の大きさ
上 下
129 / 167
リンド法国編

0126 ジェイドとリョウタ

しおりを挟む
 桜花救出作戦が行われた次の日、レストランミツヤは大忙しであった。

「リリアちゃ~ん、冷えたエールをお代わりね!」
「あっ、リリアちゃん!こっちもお願いするよ!」
「俺は鶏のから揚げを頼む!」
「こっちは魚を生で裁いた奴!」
「ハイ!えっ、ハイ!少々お待ちください!」

 こんな感じである。このところ店を閉めたままだったから、お詫びのしるしとして、小銅貨一枚で、飲み食い放題にしたのだから。まっ、時間制だけど。
 お客さんも、元を取らねば?飲むピッチと食べる速度が速い事ったら。
 そのせいもあってリリアは目が回りそうだ。

 今日だけのサービスだから頑張ってくれと思っていたら
「店主!サボってないで、リリアちゃんの手伝いをしてあげなよ!酒のお代わり!」
「ハイよ!」




***




「率直に聞きますが、この国をどうしようと思ってるのですか?」
 ジェイドにバレットの剛速球の質問である。
「それにつきましては・・・。これからみんなで考えてと思いまして・・・。」
 何とも歯切れの悪い答えである。明らかにバレットの方が年下なのに押されている。
「みんなで、ねぇ。」バレットはため息をつき、俺を見た。
「先に言っとくが、俺は何にもしないからな!」
「ありゃ、先に言われたか。」バレットは舌を出す。

 静まり返る室内・・・。俺はこの空気がたまらなく嫌だ!

「あのさ、みんなで考えるんだろ?だったら、みんなで考えればいいんじゃないか?」
「だから、みんなで考えてるんでしょう?」バレットは呆れ顔。
「違う、選挙をしろって言ってるんだよ!」
「センキョ?何ですか、それ?」バレットもジェイドも初耳のようだ。

「俺のいた国ではな、複数の国民が、私がこの国の祭りごとをやりますって手を上げるんだよ。それをこの人にならって人に一票入れて、数が多い人、いわゆる人気者が祭りごとに参加出来るんだ。」
「ほう?一国民が祭りごとに参加とは、面白いですね。」
「この世界では、王族や貴族が祭りごとをするんだろ?でも法国には王族や貴族の存在自体がない。だったら、国民で祭りごとをすればいいじゃないか?」

 バレットもジェイドも興味津々である。が
「でもねオウカさん、知ってると思うけど、そもそも祭りごとって簡単に出来る訳じゃないよ。」
「それじゃあ、その道のエキスパートを呼べばいいじゃないか?」
「え、えきすぱあと?」
「国家の運営は経済が基本だ!だから、商人ギルドの人にも参加してもらえばいいし、治安維持には冒険者ギルドにも参加してもらえばいい。」
「なるほど。そこに国民代表が入って、こうして欲しいとかの要望を聞くわけですね。」
 ジェイドも理解をしてきたようだ。

「その話もいいのですが、今考えないと行けないのは目先の食料事情でして・・・。」
「そうですよねぇ~、今回のクーデターも、元を正せば食料事情ですもんね。」
 バレットは空を見つめるように顔を上げる。コイツは考えてないと思わせながら考えている時はこの態度をとるんだよなぁ。

「では、どうでしょう。当面の食糧事情については我が国と、二ホン国に頼ってみては。」
 バレット、いきなり二ホン国との交易をしようなどと思い切ったことを言うな。
「それはありがたいですね。それにしても二ホン国とはどこにあるのでしょう?聞いたことがありませんが。」
 ジェイドは不思議そうな顔をしている。そりゃそうか、魔王国が二ホン国と名前を変えて、そんなに年数が経ってない。

 バレットは満面の笑顔で「二ホン国とは、我が国の西にある大国ですよ!」
「ヤヌス王国の西側って山脈しかありませんよね。更に西側って、え?」
 バレットは更に満面の笑顔で「解って頂けましたか?」
「まさか、魔王国・・・ですか?」ジェイドは恐怖している。
 バレットはもう一押し、満面の笑顔で「そう、元・魔王国。我が国とも国交を開いているんですよ!皆さん、いい人たちですよ!食べ物も美味しいですしね!」

 ジェイドは真っ青な顔色になり「いやいやいやいや、魔王国と国交なんて結べる訳ないじゃないですか!それに食べ物が美味しいって、嘘をつかないでください!」
「すまん、俺の店で出している物は、『全て二ホン国の物』なんだよ。」
 ジェイドは落雷が落ちたかのような衝撃を受ける。
「オウカ殿の店って、今この国で一番美味しいって店ですよね。」
「うん、うん。」
「私もオウカさんが攫われた時にごちそうになりました。」
「うん、うん。」

「一度、考えさせてもらっていいですか?」ジェイドは休憩をしたがっているようだ。
「あれ~、いいのかなぁ~。持ち帰る時間なんてないよ~国民が腹を空かせて泣いてるよ~」
 バレットがこれでもかとジェイドを煽る。
「解りましたよ!でも、一度魔王様とお会いしたいのです!それまでは、待ってください!」
「それなら、待たせないよ。ねぇ、オウカさん。」
「ああ。」俺はスマホを取り出し、そして切った。
 魔法陣が現れ、そこに和服の男と振袖の女が立っていた。

「やあ、リョウタ。いつもながら、悪いね。」
「まったくですぞ、オウカ様、いや、兄上の望みだから来ているのですぞ!」
「リョウタ殿、お久しぶりです。」
「これはこれは、バレット国王。また今度一緒に晩酌でもしましょう。」

「こ、こんな魔法陣、見た事がない・・・。」
 ジェイドは腰を抜かしている。さすがは元・魔法師団だ。魔法の知識が豊富なんだろうな。

「ところで、そこにへたり込んでいる方は・・・?」エレンが心配をしている。
「ああ、リョウタ殿に紹介したい人なのですよ!名前はジェイド。よろしくしてやってください!」

 バレット・・・。パワータイプの外交をするんだな。いるな、こんな社長。

「わ、私はまだそんなことを約束していませんってば!」
 ジェイドも半泣きである。

 状況を察したリョウタはバレットとジェイドに提案をしてきた。
「恐らく、ジェイドさんは、我々が元・魔王国と知って、おののいているのでしょう。それは仕方ありません。では、お互いの理解が深まるまでは、ヤヌス王国経由でこの国に収めるという事で、どうでしょう?」
「それなら・・・。お願いできますか・・・。」ジェイドは半泣きから涙を流すようになった。
「ウチの国を通すって事だから、その分、お高くなるぜ!」バレットは内心、良かったと思っているようだ。

 後は・・・商人ギルドと冒険者ギルドだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...