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堅三郎と麻耶 篭絡
しおりを挟む堂々と堅三郎に抱きかかえられて運ばれながら麻耶が暴れた。
「降ろしてっっ…降ろしてよっっ……」
と、踠くけれど堅三郎は全然それをものともせずにすたすた歩いた。
途中で廊下を行っていた使用人らしき男性に
「あ、宿の方の離れ空いてるのあるか?」
平然と聞いたりしていた。
「あ、桔梗の間があいておま」
係りが答える。
「ほならすぐ床敷いてくれるか?」
堅三郎が言った。
「とっっっっっとこぉぉぉぉぉぉっ?」
麻耶が驚いて更に手足をじたばたさせる。
「もー麻耶ちゃん?暴れんときて。また低血糖でるやろ?」
堅三郎が言った。
「かっっっっ帰りますっっっ帰るからっっ帰してっっっ」
訳の分からない三段活用みたいに麻耶が焦った。
堅三郎がそれにクスッと笑う。
「降ろしてっっ!降ろしてぇな!」
また半分関西弁の混ざった言葉で抵抗した。
丁度綺麗な庭園を横切る渡り廊下で、そこでストンと麻耶が降ろされる。
降ろされた途端に麻耶が超ダッシュで逃げようとするのをホテルの時みたいに堅三郎が後ろからぎゅっと抱きしめて捕らえた。
「麻耶ちゃんも解らん子やな?言うたやろ?女の中でも細こくてちっこい方やねんから。麻耶ちゃんみたいな子ぉは、男にこう来られたら逃げられへんよって」
それこそホテルの時より遥かに力強くホールドされて、きっちり耳たぶに唇が触れていて、麻耶がスペシャルに焦る。
「だめぇぇぇぇぇっ!堅三郎さんは瑠璃の婚約者でっっ」
「ああ。めでたく破談されたやん?」
「だからそれを破談にせんためにっっ」
「だってあの二人どう見ても藤堂の方は本気やでー?僕、間男とか嫌やねん」
と、コントみたいなやり取りをする。
「だだだだだだだからって!いきなりこんなっっっ」
麻耶が必死に逃れようと踠く。
「イキナリやないで?前から気にはしてたねんで?せやけど婚約者の親友とかに手ぇ出して修羅場てありえひんやん?せやから我慢してたんに。麻耶ちゃん僕のツボ付いてくるんやもんなぁ」
踠いている麻耶をしっかりホールドしたままで耳元に囁く様に堅三郎が言った。
喋り方は全然変わらないのに、無茶苦茶エロい声で囁かれて、麻耶の腰が砕けそうになる。
(何この悪魔な声ぇぇぇぇ!どんな女もやられると思うんですけどぉぉぉぉぉ)
麻耶が更に焦ってジタバタする。
「言うたろ?無駄やて。僕こう見えても178あんねんで?諦めてちゃんと誓い?」
堅三郎が余裕を滲ませた声で言った。
「誓う?何を?」
思わず麻耶が振り向く。
そこで堅三郎がフッと一瞬力を緩めて、あっというまに体を変えて、キスの間合いでホールドする。
「僕の事、二度と疑わんて誓いて言うたやん?さっき」
堅三郎が何時ものように微笑む。
けど堅三郎の掌は、ガッツリと麻耶の後頭部をホールドしてて、誓うもへったくれも無い間合いであっという間にキスされて、麻耶が完全に白化して固まる。
「麻耶?目ぇは閉じるんや。」
またあの悪魔ボイスで囁きながら堅三郎が容赦なくキスしてくる。
抵抗しようにもあまりにも鮮やかな手際と、無茶苦茶上手なキスで、麻耶の腰が完璧に砕けて、さっき以上のフェードアウトを起こした。
立ってられなくて思わず堅三郎に縋る格好になる。
「もう。麻耶ちゃんは僕がちゃんと低血糖でらん子にしてやらなあかんなぁ」
堅三郎がクスクス笑う。
そしてまた抵抗できなくなった麻耶をやすやすと抱きかかえて、すたすた歩きだす。
渡り廊下を横切った奥の方にある、どこかの家のような建物の入り口を当然のように潜って部屋に堂々と入る。
麻耶を敷かれている布団にふんわり降ろして、満足そうに見下した。
「エロい風情やなぁ」
独り言みたいにのんびりと宣う。
それで半分くたばりかけていた麻耶がハッと意識を戻した。
「はっっっ!ここどこっっ!帰るっっ」
起き上がろうとするのを堅三郎が簡単に抑え込む。
「もー。あかんて。僕のツボそんなに刺激せんで欲しいわ。僕、気ぃが強いのに激弱の子ぉとか、超の付くストライクやねん」
堅三郎が平然と言った。
「だめっっだめよっっっ!堅三郎さんっっっ!あたしと堅三郎さんはっっ瑠璃のっっっ」
麻耶が必死で手足をじたばたさせる。
「しゃあないやん。瑠璃ちゃんより好きな子が目の前に居ったんやから」
堅三郎が麻耶の目をじっと見つめながら囁く。
「え?」
麻耶が固まる。
「久我の男は獣やからね。惚れた女は手に入れんと気が狂うのや。兄貴たちもそうやし。親父もそう。親父なんて振られて何十年たっても愛した女は一条の女将だけ」
堅三郎がニパッと笑う。
「え………?久我は乗っ取り狙ってるんじゃあ………」
麻耶が間抜けな声で聴いた。
「僕そんなこと一言も言うてへんで?そもそも麻耶ちゃん?久我と一条はキャラ被りやろ?そんな買収、金かけてもメリット少なすぎやろ?」
堅三郎が麻耶の項に唇を這わせながら言った。
「え?」
麻耶が聞き返す。
「僕はな?好きやった人が兄貴の婚約者いうカオスでな?この家から出たいのもあって、瑠璃ちゃん助けたいのも本当で一条に行ったんや。」
堅三郎が言った。
(え…どうしても奪い取りたかった人て…じゃあ…)
と、麻耶がフリーズする。
「瑠璃ちゃんなら幼馴染やろ?死ぬほど好きやあらへんでも、ええ夫婦になれるかなて思たんやけど、一条行ったら兄嫁よりストライクが居るねんもんなぁ…こっちは必死で線引いてるのに突っかかってくるやろぉ?大変やったでー?」
堅三郎が微笑む。
(ちょっっっ喋り方は何時ものと変わらんのに!なんなんですかぁぁぁぁその獲物を狩るライオンみたいな目つきはぁぁぁぁぁっ)
麻耶が焦る。
おまけにその超エロイ、形のいい唇が容赦なく自分の肌に吸い付いてくる。
「それでも線引こうとしたんやで?せやのになぁ。麻耶ちゃん、僕の最後のツボ迄刺激するやろ?僕に寄りかかって甘える子ぉに、僕やられるねん」
堅三郎が麻耶の華奢な体を難なく制御下に収めて、容赦なく絆し始める。
「だ、だめ!…堅三郎さん……それはっっ低血糖の所為でっっっ」
麻耶が必死で言った。
「せやなぁ。けど麻耶ちゃんの性格なら信用しとらん男には死んでも体は預けんやろ?ホテルの廊下で僕の胸に包まって完璧に安心しとったやんな?もう無駄な抵抗はせんときや?」
堅三郎が唇にも胸元にも項にもキスの雨を降らせつつ言った。
「………でも…だめぇ………」
もうほとんど抵抗出来てないのに、それでも麻耶が言った。
「早よ誓うたほうがええで?僕意外にサドやで?好きな子が喘いで泣くの見るのが好きやから」
無茶苦茶誠実そうなイケメン顔で無茶苦茶エロいことを堅三郎が平然と言った。
「それとも一晩じゅう泣かされんのが好きなん?」
堅三郎が耳元でまた囁く。
「…ち……ちが……」
麻耶が必死に抵抗は試みるものの、所詮もう、どうにもなって居なかった。
「悪い子ぉやなぁ。そんなエロい顔で僕を誘うねんから。おまけに細こいのにええ乳しとるしなぁ」
堅三郎が全然顔に似合わないセリフを次々に放つ。
言ってる事はどっかのエロ爺ばりなのに、超イケメン顔の超エロボイスで言われてしまうと、どんな最終ウェポンより強力だった。
「…だめ…なのにぃ…」
麻耶がそれでも最後の抵抗をしようとする。
「麻耶ちゃんは僕の事嫌いなんか?」
堅三郎がとどめを刺すように耳元で囁く。
嫌いな訳なかった。
親友の婚約者だから、頼りないボンボンというキャラを張り付けることでやり過ごしてた。
京都に住んだら久我の四兄弟を嫌でも耳にする。
誰もが憧れるアイドルのような存在。
しかも超の付く本物のセレブで。
自分とは最初から住んでる世界が違う人。
だから恋じゃないと思いたかったのに。
(もうどうしようもなくなってた………)
親友の婚約者なのに。
あのホテルでのとき、もう既に駄目だと半ば観念してた。
「嫌いなんか?」
堅三郎が解ってて畳んでくる。
「嫌いじゃ…ない……」
麻耶がすでに甘い吐息を漏らしながら答える。
「ええ子やな。ほならちゃんと言い?堅三郎さんを二度と疑いませんて」
堅三郎が何時ものほんわりした微笑みで言った。
「…堅三郎さんを疑い…ません」
麻耶がもうぐずぐすに負けて応えた。
彼が触れて来るところが全部熱くて、壊れてしまいそうだった。
(なんで……こんなになったことない…)
バージンではないけれど男性経験はそこまで豊富じゃない。
なのに彼に触れられたら、体が溶けたような感覚になる。
耐えられなくて甘い鳴き声が漏れる。
「ええ子やな。ちゃんと信じてくれるなら僕がちゃんと守ったるさかい。安心しとき」
堅三郎が麻耶の承諾を確かに受け取って、彼女を本気で落としにかかる。
彼女の恥ずかしがるところを見て、感じる場所を一つずつ暴いていく。
抱かれる仕草から初めてではないものの、そこまで男性経験も無いのだとよくわかって、それにちょっとニンマリする。
「麻耶ちゃん?まだ本気でいったこと無いねんやろ?」
堅三郎が麻耶の敏感な部分を弄びながら言った。
「………っ」
麻耶は答えることも出来ないほどもう乱れていて、喉をついて漏れ出て来るのは嗚咽と喘ぎだけの有様だった。
「可愛いなぁ………僕その顔、世界一好きやで」
半泣きのべそ顔に愛おしそうに口づける。
そうしながら麻耶のまだあまり開発されていないだろう場所へと堅三郎が侵入する。
「ひぁ………」
思わず喉をついて甘い悲鳴が麻耶から漏れ出る。
「きっつ………」
堅三郎が思わず呟く。
奥深くまで無情に硬いものを押し込むと
「ひっ」
と、小さく悲鳴を上げて麻耶がせり上がって逃げようとする。
それを無情に引き戻してもっと奥までグイ、と腰を押し込む。
「ぁぁっ」
麻耶が戸惑う様に仰け反るのを、ぐっと強引に引き寄せて、激しく腰をゆすり建て始める。
「ひぃ…っ………ぁぁっ」
断続的に麻耶の喉が鳴り、それが次第に甘い喘ぎが勝ってくる。
麻耶の甘い鳴き声が、彼女が今変わりつつあるのだと知らせてくれる。
「はぁ…ん……」
という甘い喘ぎが増える度に、麻耶が自分のものになっていく。
「堅三郎さん…だめ……堅三郎さん…っ……」
譫言みたいに麻耶が自分の名を呼び始める。
もう快感がそこまで来て弾けそうになってるのだろう、彼女の乳首がピンと立って、そして体が小刻みに震える。
「だめぇぇ!…だめぇぇっ……」
麻耶が耐え切れないかのように二度、激しく首を振って、そしてそれからエビの様に仰け反ってガクガク震えた。
それに満足したように堅三郎が麻耶を抱き寄せる。
「いっちゃったんやな?気持ちええやろ?それがイクいう感覚やで?」
堅三郎がまだ硬いままのものは抜かないで、柔らかく麻耶を抱き寄せてあやすように撫でる。
自分の腕の中で、はあはあと息を乱している麻耶にちゅっとキスをする。
そうして数分は休ませてから
「けど僕はまだいってへんのやなあ」
と、堅三郎がのんびり言った。
麻耶が、え?と堅三郎を見上げる。
「僕、割とこっちのほう強いねん」
まるでお散歩でもしているような口調で堅三郎が言って、でもきっちり麻耶を意地悪に弄び始める。
「け………堅三郎さん………もう…もうだめ………」
麻耶が逃げようとしても、まだ硬い堅三郎のものは食い込んだままで、引きかけていた疼きも、堅三郎が突き上げて来るだけで簡単に激しい波を呼んでくる。
「だめぇぇ………もう………いっちゃったのぉぉ………」
麻耶が嫌々する様に泣きかぶる。
「知ってるで?いくようにしたの僕やん?今度は一緒に気持ちよくなろな?」
悪魔のように麻耶をかき乱しながら、その癖、誰より優しい口調で甘く囁く。
(だめ………勝てない………負けちゃう………)
こんなこと駄目だと思うのに。
でも彼のくれる、この刺激がもっと欲しいと体が叫んだ。
たった一度、初めて知ったイクという感覚。
けれどそれはどんなアルカロイドより強力で。
どんな麻薬よりきっと甘美で。
そして目の前に居る、満足そうに自分を見下している暴君のような男が、どうしようもなく好きだと思えた。
(遊ばれて捨てられるだけでも………もう構わない………)
住んでる世界が違うから、きっと成就なんてしない恋。
けれどもう目の前の人から離れられない。
(瑠璃ちゃん………ごめん………裏切ってしまう………)
親友を裏切ってでも、この人を好きだというのを止められないと痛感する。
「堅三郎さん…っ……堅三郎さぁん…っ」
また麻耶が泣きかぶり始める。
それを見下して堅三郎がふっと笑う。
堪らなくエロくて、この上なく可愛い顔に、言いようのない充足感を感じる。
自分だけのものに彼女がなったと確信できる瞬間。
望む女を完全なる支配下におさめたこの瞬間の高揚感だけは男の物だと感じる。
彼女が昇り詰める呼吸はさっき掴んだから、それに合わせてさらに激しく腰をゆすりたてる。
ツーンと抜けて来るような快感が体の奥から外へと弾ける。
麻耶の甘い喘ぎを聞きながら彼女の細い体が震えながら仰け反るその刹那に、自分の一部が彼女の中に解放される。
入れ替わってくるように襲ってくる全身の疲労感と、彼女と自分の乱れた呼吸だけが全ての世界。
それに浸る。
多分この世で一番贅沢な時間。
麻耶の身体をあやすようにくるみながら堅三郎が囁く。
悪魔のような優しい声音で。
「避妊なんてしてあげへんで?麻耶ちゃんは僕の子ぉを産むのやさかい…」
言われて麻耶が驚いて堅三郎を見上げる。
てっきり遊ばれると思っていたから言葉すら出せずに彼を見つめた。
その眼尻からポロっと涙が落ちる。
耐え切れなくて彼の胸にしがみ付いた。
それを堅三郎が優しくくるむ。
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