復讐の甘い罠

藤木兎羽

文字の大きさ
上 下
3 / 36

乗っ取り

しおりを挟む

「社長?お疲れ様です。」
別々の部屋に通された藤堂を土方が訪ねた。
部屋こそ別だが食事は藤堂の部屋で一緒にという指示がなされていて、席が二つ設えられていた。

「思ったより古い建物ですのね。うちのリゾートには少し向かないのではと思いますが」
土方が言った。
「…格式で言うならうちが逆立ちしても持たないものをここは持ってる。…ここを買収して…古い格式と伝統を残したまま世界クラスのセレブに利用されるリゾートに生まれ変わらせることで、我が藤堂リゾートグループの格が一段と上がる。それは説明したはずだ」
藤堂が答える。

「確かにそれはそうですが。この立地で裏の庭の広大さを考えると買収額は決して少なくありません。採算面から言うと懸念が」
土方が食い下がる。
「勝算はある。ここは今、資金繰りに苦慮してる。老舗ホテルチェーンの久我グループが三男の婿入りを条件にホワイトナイツとして名乗りは上げてるが。それにも疑義は生じる」
藤堂が言った。
「と、おっしゃいますと?」
土方が聞いた。
「ここの大女将と久我の現当主は大昔恋仲だったそうだ。久我の現当主がこっぴどく振られたと聞いてる。そんなところにホワイトナイツというのがな。違和感あるだろ?復讐するというならまだしもだ」
藤堂が言った。

「え?それは何処からの情報で?」
土方が驚いて聞き返す。
「確かな筋の情報だ。出所は気にしなくていい。取敢えずは久我の三男とここの跡取り娘の縁談の進行状況を探ること。それと債権の抑えはどうなってる?」
藤堂が聞いた。

「ええ。うちの系列に組み込んだ常盤九重銀行の持ち債権が七割です。あとは大女将懇意の嵐山もみじ銀行からが一割。残り二割は大女将の知己からの借り入れで、これは手形の形ですが、知己側の債権を値引きする形を提示し、メリットを与えることでそちらの債権譲渡に承諾を取り付けました。期限到達済なので法律上も問題はございません。既に買い取り済です。また、もう一つの債権の方もほぼ目処が立ちました。相手も困難さは感じていたようで、恐らくこちらの意向に乗ってくれそうです。九割は押さえました。」
土方が淡々と報告する。

「よし。引き伸ばし根拠の久我の融資さえ潰せば買収はほぼ完ぺきに出来る。例の方の債権に土地の担保も入って居たよな確か」
藤堂が聞いた。
「はい。そちらについては真壁のほうがあたっております。」
土方が答える。

藤堂が窓の外を見ながらフッと嗤う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...