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ゴウマンの動き、邪悪なスキル
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王城では、ゴウマンが唖然としていた。
「いったい何が起こった?」
自室の窓から城下町を見下ろしていた。
一台の馬車が縦横無尽に駆け巡ったかと思ったら、ネクラの自宅につっこんでいった。
城下町は瓦礫が広がっている。
ほどなくして馬車は王国を出て行ったが、惨状は残されたままだ。
「馬車にあれほどの破壊力があるのもなのか? それとも、あれは馬車の形をした悪魔なのか?」
「失礼します、ゴウマン国王」
振り向けば、部屋の入り口にケッペキが立っていた。
「ネクラからゴウマン国王がお呼びであるとうかがいました。ご用件はなんでしょう?」
「儂は呼んだ覚えはないが……」
「そうですか、どこかで情報が行き違ったのですね。ご用件がないのならしばらく王国を出ようと思います」
突然の申し出に、ゴウマンは眉をひそめた。
「どこへ行く?」
「イケメンの魔の手に落ちた憐れな令嬢を救いに行きます。一度はイケメンから引き離したのですが、元に戻ってしまったようです」
「イケメン、そうかあいつか!」
ゴウマンは両目を吊り上げて、大剣をぶん回した。
「あの男が馬車を操っていたのなら、これほどの大惨事は納得がいく。この儂を愚弄した罰は必ず与えてやる!」
ケッペキは、ゴウマンがどんな理屈で納得したのか分からなかったが、深く突っ込まない事にした。
「僕はロベルタを救います。お互いに健闘しましょう」
「いや、少し待て。ロベルタといえばイケメンの妻だな。つまり、おまえもイケメンの国に向かうのか。互いの目的のために、共闘するべきではないか?」
「おっしゃるとおりですね。僕も一人で敵国に乗り込むのは、難しいと考えていたところです」
ケッペキが同意を示すと、ゴウマンは大剣を天井に向けて突き上げた。
「軍をあげて攻め込むぞ! 儂の威信をかけるのだ!」
「そこまでしますか!?」
ケッペキは両目を見開いた。
その目には、猛獣のように両目を血走らせるゴウマンが映っている。
「本気ですか!?」
「当たり前だ! ここまでコケにされたのは初めてだ。我慢ならん!」
「しかし、イケメンもロベルタも恐ろしい能力の持ち主です。軍人たちの何人が生き残るか……」
「生き残りなど考えなくてよい。勝てば国民が儂らを称えるだけだ。戦争だ! イケメンを必ず仕留めてやる!」
ゴウマンは大剣を振り回して、声高らかに宣言していた。
ゴウマンが戦争を宣言している頃に、転生の間に新たな動きがあった。
「ここに来るのは久しぶりですね」
ネクラの魂がきていた。
転生の間は通常なら死んだ人間の魂が来る場所であるが、ネクラは自らの魂を身体から一時的に離脱させていた。
彼がチートスキル『婚約破棄』を手に入れたのは、この場所である。
「魂の離脱は成功するか分かりませんでしたが、うまくいって良かったです」
ここに来るには、死ぬ危険が伴っていた。
その危険を冒す目的があった。
白い壁に囲まれた空間で、床も真っ白である。
そんな床で女神がいびきをかいて寝ていた。
ネクラは声を掛ける。
「転生の女神様、お話があります」
「ふわぃ、なんですかー?」
女神は寝ぼけまなこで、あくびをしていた。
「私は人を転生させる能力を失いましたよー、何もできませんよー」
「おやおや、残念ですね。僕には丁度よいのですが」
ネクラはほくそ笑んだ。
「新たなスキルをもらいにきました」
「もう大したスキルは残っていませんよー」
「いえいえ、僕にはこれ以上ないスキルがあります」
ネクラは女神のポケットに手を伸ばした。
女神が抵抗する間もなかった。
暗く黒いもやもやがすぐに取り出された。
「これですよ、ありがたくいただきます」
「それは禁断のスキルですよ! 使ってはダメです!」
「何もできない女神の言う事なんて聞きませんよ」
ネクラはもやもやを飲み込んだ。
「感じます、僕が持っていたチートスキル『婚約破棄』と溶け合うのを。僕は僕にふさわしい力の最終形態を手にいれました!」
ネクラからよどんだオーラが漏れ出る。
怪しい笑いが止まらなくなった。
「それではさようなら、もうここに来る事はないでしょう」
「嘘でしょう、いったい何を考えているのですか!?」
女神は飛び起きて、ネクラを追いかける。
しかし、ネクラの姿はどこにもなかった。既に元の世界に戻ったのだろう。
「あまりにも使用用途が少ない邪悪なスキルだから、誰も手に入れようとしなかったのに……」
女神は呆然としていた。
奪われたスキルは『絶対離婚』。
リア充撲滅を目的とするネクラには、命をかけても欲しいものであった。
「いったい何が起こった?」
自室の窓から城下町を見下ろしていた。
一台の馬車が縦横無尽に駆け巡ったかと思ったら、ネクラの自宅につっこんでいった。
城下町は瓦礫が広がっている。
ほどなくして馬車は王国を出て行ったが、惨状は残されたままだ。
「馬車にあれほどの破壊力があるのもなのか? それとも、あれは馬車の形をした悪魔なのか?」
「失礼します、ゴウマン国王」
振り向けば、部屋の入り口にケッペキが立っていた。
「ネクラからゴウマン国王がお呼びであるとうかがいました。ご用件はなんでしょう?」
「儂は呼んだ覚えはないが……」
「そうですか、どこかで情報が行き違ったのですね。ご用件がないのならしばらく王国を出ようと思います」
突然の申し出に、ゴウマンは眉をひそめた。
「どこへ行く?」
「イケメンの魔の手に落ちた憐れな令嬢を救いに行きます。一度はイケメンから引き離したのですが、元に戻ってしまったようです」
「イケメン、そうかあいつか!」
ゴウマンは両目を吊り上げて、大剣をぶん回した。
「あの男が馬車を操っていたのなら、これほどの大惨事は納得がいく。この儂を愚弄した罰は必ず与えてやる!」
ケッペキは、ゴウマンがどんな理屈で納得したのか分からなかったが、深く突っ込まない事にした。
「僕はロベルタを救います。お互いに健闘しましょう」
「いや、少し待て。ロベルタといえばイケメンの妻だな。つまり、おまえもイケメンの国に向かうのか。互いの目的のために、共闘するべきではないか?」
「おっしゃるとおりですね。僕も一人で敵国に乗り込むのは、難しいと考えていたところです」
ケッペキが同意を示すと、ゴウマンは大剣を天井に向けて突き上げた。
「軍をあげて攻め込むぞ! 儂の威信をかけるのだ!」
「そこまでしますか!?」
ケッペキは両目を見開いた。
その目には、猛獣のように両目を血走らせるゴウマンが映っている。
「本気ですか!?」
「当たり前だ! ここまでコケにされたのは初めてだ。我慢ならん!」
「しかし、イケメンもロベルタも恐ろしい能力の持ち主です。軍人たちの何人が生き残るか……」
「生き残りなど考えなくてよい。勝てば国民が儂らを称えるだけだ。戦争だ! イケメンを必ず仕留めてやる!」
ゴウマンは大剣を振り回して、声高らかに宣言していた。
ゴウマンが戦争を宣言している頃に、転生の間に新たな動きがあった。
「ここに来るのは久しぶりですね」
ネクラの魂がきていた。
転生の間は通常なら死んだ人間の魂が来る場所であるが、ネクラは自らの魂を身体から一時的に離脱させていた。
彼がチートスキル『婚約破棄』を手に入れたのは、この場所である。
「魂の離脱は成功するか分かりませんでしたが、うまくいって良かったです」
ここに来るには、死ぬ危険が伴っていた。
その危険を冒す目的があった。
白い壁に囲まれた空間で、床も真っ白である。
そんな床で女神がいびきをかいて寝ていた。
ネクラは声を掛ける。
「転生の女神様、お話があります」
「ふわぃ、なんですかー?」
女神は寝ぼけまなこで、あくびをしていた。
「私は人を転生させる能力を失いましたよー、何もできませんよー」
「おやおや、残念ですね。僕には丁度よいのですが」
ネクラはほくそ笑んだ。
「新たなスキルをもらいにきました」
「もう大したスキルは残っていませんよー」
「いえいえ、僕にはこれ以上ないスキルがあります」
ネクラは女神のポケットに手を伸ばした。
女神が抵抗する間もなかった。
暗く黒いもやもやがすぐに取り出された。
「これですよ、ありがたくいただきます」
「それは禁断のスキルですよ! 使ってはダメです!」
「何もできない女神の言う事なんて聞きませんよ」
ネクラはもやもやを飲み込んだ。
「感じます、僕が持っていたチートスキル『婚約破棄』と溶け合うのを。僕は僕にふさわしい力の最終形態を手にいれました!」
ネクラからよどんだオーラが漏れ出る。
怪しい笑いが止まらなくなった。
「それではさようなら、もうここに来る事はないでしょう」
「嘘でしょう、いったい何を考えているのですか!?」
女神は飛び起きて、ネクラを追いかける。
しかし、ネクラの姿はどこにもなかった。既に元の世界に戻ったのだろう。
「あまりにも使用用途が少ない邪悪なスキルだから、誰も手に入れようとしなかったのに……」
女神は呆然としていた。
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