上 下
23 / 30

番外編追加 国王は仲良くなりたい 〜フロラン視点〜

しおりを挟む
 私はフロラン。このオジュレバン国の国王である。
 昔から、動物が好きだったのだが、どうにも相性が悪い。何故こうも寄ってきてくれないのか不思議だ。


 私は、とても優しく呼んでいるのに。




 あ、あれは野生の猫!よく王宮にもいるんだよな。見ているだけで癒やされる。でもやはり、触りたい!!

「よしよしよしよし!こっちへおいで。ほらほら、ほらほらこっちこっちだ!!」

 私は、そこらに生えていた猫柳を採って、それを左右に動かす。すると、猫もその動きに合わせて顔を動かしている。

 おお、そうそう。その調子だ。それで私の方に近づいておいで!

「ぎゃ!」

 何故か手を噛みつかれ、私が落とした猫柳を咥えて、猫は遠くに行ってしまった。

(うーむ。何がいけないのだろうか。)


 噛まれた手をさすりながら、私は考えていると後ろから声が聞こえた。


「国王陛下?」

 おお、ウスターシュとリュシーではないか!相変わらずいつも一緒におるなぁ。

「ウスターシュとリュシーか。ウスターシュ、見回りか?」

「はい。厩に行ってきました。リュシーの力を見ていると、こちらまで温かい気持ちになりますね。」

「やだわ、ウスターシュったら!」


 お?なんだ?いつの間にか二人の距離は縮まって来たようだな。話し方もだいぶ仲良さそうだ。うんうん、私も嬉しいぞ。


「リュシーよ。どうだ?不自由はないか?」

「はい。とてもよくしてもらっています。陛下のおかげです。
今、何をされていたのですか?」

「今か?猫に猫柳で遊んでやろうと思ったんだがな、噛みつかれて逃げられてしまったわ。触りたいのに、なかなか出来ないもんだな。」

「そうなのですね。あちらの猫ですか?ちょっと聞いてみましょうか。」

「いいのか!?よし、やってくれ!」

 リュシーはそう言って、ウスターシュと一緒に猫へ近づいていった。



☆★

「こんにちは、ねこさん。どうして国王陛下に触らせないのかしら?」

《む?あやつは私を触りたかったのか?いつも私をおちょくってくるのだ!しかも、身振り手振りが大きいし、声もでかい!威嚇しているのかと勘違いするわ!》

「そうでしたか…では、どうすれば陛下があなたに触れますか?」

《どうすれば、とな?うむ…まず、大げさに身振り手振りを大きくせんで欲しいな。それから、声も大きいと闘いを挑まれたように感じる。これは大概の猫は皆そうだと思うぞ。本能みたいなもんだな。あとは、あんなおちょくるような真似をせんでも、触りたいのなら触らせてやるて。まぁ、撫で回されるのはもってのほかだがな。優しく、毛並みに沿って撫でるなら撫でさせてやるて。
お前さんは丁寧に触ってくれると聞いておるぞ。どれ、あやつに教えてやってくれ。》

「ありがとうございます!分かりました。陛下が喜びますわ!」

《なんの。気をつけさせてくれよ。いつも闘いを挑まれていたのかと思ったのだからな。》


☆★

 猫は尻尾をユラユラと揺らしながらリュシーと見つめ合っている。それを見ていると私は、羨ましくもあるのだ。
ウスターシュもリュシーの後ろで、見つめているが、なぜ猫は逃げない?やはりリュシーがいるからか?


「陛下!来て下さい。」

「なんだ?」


 私はわくわくとして進む。こんなに猫に近寄った事はない。いつもすぐに逃げ出されるのだから。


「猫に限らずですが、動物は大きな身振り手振りや、大きな声が苦手です。ですので、それはやめて下さいね。」

「ほう。そうなのか。」

「はい。それと、撫で方があります。毛並みに沿って撫でないと、気持ち悪いみたいですよ。」

「なるほどな。一定方向に撫でるわけだな。それでなのか…以前、餌を持ってきて、食べている隙に触った時に、ものすごく怒らせたんだ。両手でわしゃわしゃと撫でるのは良くなかったんだな。」

「そうですね。それに、食べている時は無防備ですからね。怖かったのもあるかもしれませんね。
…ほら、このように撫でるのです。手は下からですよ、そうです。優しく、壊れものを扱うようにですよ。」

「そうか。
…こうか?おお、もふもふだな!!」


 やった!やったぞ!!やっと触れられた…!こんなに気持ち良いんだな。
 ふむ。優しく、一定方向に、だな。


 リュシーには、臨時報酬を払わんといかんな!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王様とお妃様は今日も蜜月中~一目惚れから始まる溺愛生活~

花乃 なたね
恋愛
貴族令嬢のエリーズは幼いうちに両親を亡くし、新たな家族からは使用人扱いを受け孤独に過ごしていた。 しかし彼女はとあるきっかけで、優れた政の手腕、更には人間離れした美貌を持つ若き国王ヴィオルの誕生日を祝う夜会に出席することになる。 エリーズは初めて見るヴィオルの姿に魅せられるが、叶わぬ恋として想いを胸に秘めたままにしておこうとした。 …が、エリーズのもとに舞い降りたのはヴィオルからのダンスの誘い、そしてまさかの求婚。なんとヴィオルも彼女に一目惚れをしたのだという。 とんとん拍子に話は進み、ヴィオルの元へ嫁ぎ晴れて王妃となったエリーズ。彼女を待っていたのは砂糖菓子よりも甘い溺愛生活だった。 可愛い妻をとにかくベタベタに可愛がりたい王様と、夫につり合う女性になりたいと頑張る健気な王妃様の、好感度最大から始まる物語。 ※1色々と都合の良いファンタジー世界が舞台です。 ※2直接的な性描写はありませんが、情事を匂わせる表現が多々出てきますためご注意ください。

悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します

水空 葵
ファンタジー
 貧乏な伯爵家に生まれたレイラ・アルタイスは貴族の中でも珍しく、全部の魔法属性に適性があった。  けれども、嫉妬から悪女という噂を流され、婚約者からは「利用する価値が無くなった」と婚約破棄を告げられた。  おまけに、冤罪を着せられて王都からも追放されてしまう。  婚約者をモノとしか見ていない婚約者にも、自分の利益のためだけで動く令嬢達も関わりたくないわ。  そう決めたレイラは、公爵令息と形だけの結婚を結んで、全ての魔法属性を使えないと作ることが出来ない魔道具を作りながら気ままに過ごす。  けれども、どうやら魔道具は世界を恐怖に陥れる魔物の対策にもなるらしい。  その事を知ったレイラはみんなの助けにしようと魔道具を広めていって、領民達から聖女として崇められるように!?  魔法を神聖視する貴族のことなんて知りません! 私はたくさんの人を幸せにしたいのです! ☆8/27 ファンタジーの24hランキングで2位になりました。  読者の皆様、本当にありがとうございます! ☆10/31 第16回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。  投票や応援、ありがとうございました!

断罪された商才令嬢は隣国を満喫中

水空 葵
ファンタジー
 伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。  そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。  けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。 「国外追放になって悔しいか?」 「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」  悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。  その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。  断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。 ※他サイトでも連載中です。  毎日18時頃の更新を予定しています。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

愛する婚約者に殺された公爵令嬢、死に戻りして光の公爵様(お父様)の溺愛に気づく 〜今度こそ、生きて幸せになります〜

あーもんど
恋愛
「愛だの恋だのくだらない」 そう吐き捨てる婚約者に、命を奪われた公爵令嬢ベアトリス。 何もかもに絶望し、死を受け入れるものの……目を覚ますと、過去に戻っていて!? しかも、謎の青年が現れ、逆行の理由は公爵にあると宣う。 よくよく話を聞いてみると、ベアトリスの父────『光の公爵様』は娘の死を受けて、狂ってしまったらしい。 その結果、世界は滅亡の危機へと追いやられ……青年は仲間と共に、慌てて逆行してきたとのこと。 ────ベアトリスを死なせないために。 「いいか?よく聞け!光の公爵様を闇堕ちさせない、たった一つの方法……それは────愛娘であるお前が生きて、幸せになることだ!」 ずっと父親に恨まれていると思っていたベアトリスは、青年の言葉をなかなか信じられなかった。 でも、長年自分を虐げてきた家庭教師が父の手によって居なくなり……少しずつ日常は変化していく。 「私……お父様にちゃんと愛されていたんだ」 不器用で……でも、とてつもなく大きな愛情を向けられていると気づき、ベアトリスはようやく生きる決意を固めた。 ────今度こそ、本当の幸せを手に入れてみせる。 もう偽りの愛情には、縋らない。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ *溺愛パパをメインとして書くのは初めてなので、暖かく見守っていただけますと幸いですm(_ _)m*

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...