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「アリーシャ様、大丈夫ですか?」
「…。」
「アリーシャ様、もう少し進みましたら休憩としましょう。」
「いいえ。当初の予定通りお進み下さい。私のせいで行程が遅れてもいけませんから。そうだわ、マクスウェル大国のお話をして下さいませんか。」
「え?」
「意識が違う所へ向けば、痛みが多少緩和されると思うのです。」
「そうですねぇ…では…」
私達一行は、あれからすぐに出発となった。
正門前でお父様とお母様と抱き合ってお互いを労い、まだ六歳の弟ケルバットには、優しく声をかけた。そして、『出立-!』の声と共に私とロッテ、ロバウト様が乗った馬車が進み始めた。
列は長く、先頭は馬に乗った人が二人、左右に分かれてゆっくりと歩く。どうやら、大国の騎士団長であるゴルゴットと、副騎士団長のガンベストだ。
やはり先ほど、ロバウト様と一緒に応接室にいた人達だった。
その後ろには六人の歩きの人が二列に並び、剣を腰に携えてその後をついていく。
私達が乗った馬車はその次。ロバウト様が進行方向と逆向きに座り、私は進行方向の向きに座って隣にはロッテ。
そしてその後ろをまた、歩きの人が六人、二列に並び、その後ろに馬に乗った人が二人続いた。
馬車も、最高級なのだろう。装飾もかなり素晴らしく、中には布製のクッションまで置いてくれている。
馬も綺麗な毛並みだった。
私は、馬車に乗るのは初めてだった。もちろん、ロッテも。だから、こんなにお尻に響いてくるなんて知らなかった。
もちろん、大国が準備して下さったとあって最高級の馬車であり、クッションも敷き詰めてくれているが、ガタガタと剥き出しの地面を歩く車輪が、振動を伝えてくるのだ。
ロバウト様は、私に大国の事を教えてというワガママによく付き合ってくれていると思う。
いや、でもロバウト様は私が言い出す前までは退屈そうにしていた。顔には出さないように気をつけていたけれど、節々で欠伸をこらえていた。だから、ロバウト様にとっても暇つぶしになるから渡りに舟だったのかもしれない。
横についている窓の外を見ていても、この辺りはそうたいして代わり映えしないから、見ているだけでは眠くもなってくるのよね。
山へと向かう道は、小麦畑が一面にある。横へそれると、野菜などの畑もあるが、対して面白い景色などないのだ。そして夕方に近づく頃、景色はやっと少し変化する。
木々が増えてきて、山へと入っていくのだ。
それに誘われるように奥へと進むと、ヴァイロン国とマクスウェル大国との国境へと続く。今日はその手前で野営となるのだそうだ。
「そろそろつきますね。今日はここ辺りで夕食を摂り、就寝します。アリーシャ様には不便をお掛けしますが、申し訳ありません。」
簡易テントなどを張り、火も夜中付け、交代で見張りをしてくれるらしい。他の騎士団員達が動き回ってくれている至れり尽くせりの中で、私は見ているだけでいいと言われたのよ。不便なんて言ってはそれこそ申し訳ないわね。
「いいえ。とても助かっています。ありがとうございます。」
「…。」
「アリーシャ様、もう少し進みましたら休憩としましょう。」
「いいえ。当初の予定通りお進み下さい。私のせいで行程が遅れてもいけませんから。そうだわ、マクスウェル大国のお話をして下さいませんか。」
「え?」
「意識が違う所へ向けば、痛みが多少緩和されると思うのです。」
「そうですねぇ…では…」
私達一行は、あれからすぐに出発となった。
正門前でお父様とお母様と抱き合ってお互いを労い、まだ六歳の弟ケルバットには、優しく声をかけた。そして、『出立-!』の声と共に私とロッテ、ロバウト様が乗った馬車が進み始めた。
列は長く、先頭は馬に乗った人が二人、左右に分かれてゆっくりと歩く。どうやら、大国の騎士団長であるゴルゴットと、副騎士団長のガンベストだ。
やはり先ほど、ロバウト様と一緒に応接室にいた人達だった。
その後ろには六人の歩きの人が二列に並び、剣を腰に携えてその後をついていく。
私達が乗った馬車はその次。ロバウト様が進行方向と逆向きに座り、私は進行方向の向きに座って隣にはロッテ。
そしてその後ろをまた、歩きの人が六人、二列に並び、その後ろに馬に乗った人が二人続いた。
馬車も、最高級なのだろう。装飾もかなり素晴らしく、中には布製のクッションまで置いてくれている。
馬も綺麗な毛並みだった。
私は、馬車に乗るのは初めてだった。もちろん、ロッテも。だから、こんなにお尻に響いてくるなんて知らなかった。
もちろん、大国が準備して下さったとあって最高級の馬車であり、クッションも敷き詰めてくれているが、ガタガタと剥き出しの地面を歩く車輪が、振動を伝えてくるのだ。
ロバウト様は、私に大国の事を教えてというワガママによく付き合ってくれていると思う。
いや、でもロバウト様は私が言い出す前までは退屈そうにしていた。顔には出さないように気をつけていたけれど、節々で欠伸をこらえていた。だから、ロバウト様にとっても暇つぶしになるから渡りに舟だったのかもしれない。
横についている窓の外を見ていても、この辺りはそうたいして代わり映えしないから、見ているだけでは眠くもなってくるのよね。
山へと向かう道は、小麦畑が一面にある。横へそれると、野菜などの畑もあるが、対して面白い景色などないのだ。そして夕方に近づく頃、景色はやっと少し変化する。
木々が増えてきて、山へと入っていくのだ。
それに誘われるように奥へと進むと、ヴァイロン国とマクスウェル大国との国境へと続く。今日はその手前で野営となるのだそうだ。
「そろそろつきますね。今日はここ辺りで夕食を摂り、就寝します。アリーシャ様には不便をお掛けしますが、申し訳ありません。」
簡易テントなどを張り、火も夜中付け、交代で見張りをしてくれるらしい。他の騎士団員達が動き回ってくれている至れり尽くせりの中で、私は見ているだけでいいと言われたのよ。不便なんて言ってはそれこそ申し訳ないわね。
「いいえ。とても助かっています。ありがとうございます。」
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