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20. 早起きは…
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次の日は日が昇る前に目覚めた。
少し喉が渇いたけれど、起きるのもどうしようかと思っていると、廊下で扉の閉まる音と、廊下を静かに歩く音が聞こえた。
もしかしたら、この時間にフォルス様は起きているのかしら?と思って、ベッドの際に掛けてあったショールを肩にかけ、部屋の扉を少しだけ開けると、案の定フォルス様が廊下を歩いていた。
今から食事かしら?私も起きたら、お話出来るかしら?と思案しながら私も廊下を階段の所まで歩いていくと、玄関扉を開け、出て行くフォルス様を見つけた。
(え?出掛けるの?)
使用人は、誰も玄関ホールでお見送りの挨拶をしていない。廊下も、薄暗い。
階下で使用人だろう何か作業しているのか音はなんとなく聞こえるけれど、廊下を歩いている使用人はいない。
私は、思い切ってフォルス様の後を追って急いで玄関の扉を開けた。
外はまだひんやりとしていた。ショールを羽織っているけれど、外の温度は少し肌寒く堪えるわ…と思っていると、あの謎の屋敷の方へ行くフォルス様を見つけた。
こんなに薄暗い時間から?
ここで何をするの?
屋敷には、明かりが付いていた。つまり、誰かがいるという事。
私は、屋敷の扉の前で、しばらく佇んでいた。
どれくらいたっただろうか。ふと、温かい上着を被せられた。
「寒かったでしょう?体が冷えております。とりあえず、お部屋に戻りましょう。」
その声はエラだった。
とても優しく、でも今はフォルス様との距離が離れて行くように感じ、部屋に戻るのが戸惑われた。
でも、足が動かない私をエラがぐいぐいと引っ張るように、私を温かい部屋へと連れて行ってくれた。
空は、いつの間にか色が変わり始めていて明るくなってきていた。
きっとかなりの時間、外にいたのだろう。部屋で寝ていない私を探しに来てくれたんだわ。
エラが、『温かいミルクティーを持ってきますね。ベッドに入りますか?』といわれ、言われるがまま私はベッドに入った。
先ほどの事が夢であったらいいのに。そう思って目をぎゅっと瞑っていると、そのままいつの間にか眠ってしまっていた。
目を覚ますと、私はぐっしょりと汗をかいていた。
「お目覚めになりましたか。」
ベッドの際にあった椅子に、エラが座っていてそう声を掛けてくれた。
「喉、渇きませんか?汗を拭きましょうね。」
そう言われたけれど、何も考えたくないし、何も口にしたいとも思わなかった。
夢だったかもと淡い期待を込めてエラを見たけれど、エラは痛ましいものを見るようにとても気遣ってくれているので、やはりさっきの事は現実だったのだわ。
フォルス様には、あの謎の屋敷にわざわざあの暗い時間から行くのね。
それは分かったのだけれど、何だか胸がぎゅっと押し潰されたように苦しいの。何故なのかしら。
何も考えたくないし。
「寒かったのでしょうね。熱が上がりましたよ。体調はいかがですか。」
…あ、熱が出たから何も考えたくないのね、きっと。
私は汗を拭いてもらって、無理矢理水分を取らされた。喉は渇いていないと思ったけれど、いつの間にか渇いていたみたいで、コップにつがれた量を飲み干し、もう半分も飲んでしまった。
体を起こしたからか、頭がクラクラとしたのでまた私は横になり眠りについた。
少し喉が渇いたけれど、起きるのもどうしようかと思っていると、廊下で扉の閉まる音と、廊下を静かに歩く音が聞こえた。
もしかしたら、この時間にフォルス様は起きているのかしら?と思って、ベッドの際に掛けてあったショールを肩にかけ、部屋の扉を少しだけ開けると、案の定フォルス様が廊下を歩いていた。
今から食事かしら?私も起きたら、お話出来るかしら?と思案しながら私も廊下を階段の所まで歩いていくと、玄関扉を開け、出て行くフォルス様を見つけた。
(え?出掛けるの?)
使用人は、誰も玄関ホールでお見送りの挨拶をしていない。廊下も、薄暗い。
階下で使用人だろう何か作業しているのか音はなんとなく聞こえるけれど、廊下を歩いている使用人はいない。
私は、思い切ってフォルス様の後を追って急いで玄関の扉を開けた。
外はまだひんやりとしていた。ショールを羽織っているけれど、外の温度は少し肌寒く堪えるわ…と思っていると、あの謎の屋敷の方へ行くフォルス様を見つけた。
こんなに薄暗い時間から?
ここで何をするの?
屋敷には、明かりが付いていた。つまり、誰かがいるという事。
私は、屋敷の扉の前で、しばらく佇んでいた。
どれくらいたっただろうか。ふと、温かい上着を被せられた。
「寒かったでしょう?体が冷えております。とりあえず、お部屋に戻りましょう。」
その声はエラだった。
とても優しく、でも今はフォルス様との距離が離れて行くように感じ、部屋に戻るのが戸惑われた。
でも、足が動かない私をエラがぐいぐいと引っ張るように、私を温かい部屋へと連れて行ってくれた。
空は、いつの間にか色が変わり始めていて明るくなってきていた。
きっとかなりの時間、外にいたのだろう。部屋で寝ていない私を探しに来てくれたんだわ。
エラが、『温かいミルクティーを持ってきますね。ベッドに入りますか?』といわれ、言われるがまま私はベッドに入った。
先ほどの事が夢であったらいいのに。そう思って目をぎゅっと瞑っていると、そのままいつの間にか眠ってしまっていた。
目を覚ますと、私はぐっしょりと汗をかいていた。
「お目覚めになりましたか。」
ベッドの際にあった椅子に、エラが座っていてそう声を掛けてくれた。
「喉、渇きませんか?汗を拭きましょうね。」
そう言われたけれど、何も考えたくないし、何も口にしたいとも思わなかった。
夢だったかもと淡い期待を込めてエラを見たけれど、エラは痛ましいものを見るようにとても気遣ってくれているので、やはりさっきの事は現実だったのだわ。
フォルス様には、あの謎の屋敷にわざわざあの暗い時間から行くのね。
それは分かったのだけれど、何だか胸がぎゅっと押し潰されたように苦しいの。何故なのかしら。
何も考えたくないし。
「寒かったのでしょうね。熱が上がりましたよ。体調はいかがですか。」
…あ、熱が出たから何も考えたくないのね、きっと。
私は汗を拭いてもらって、無理矢理水分を取らされた。喉は渇いていないと思ったけれど、いつの間にか渇いていたみたいで、コップにつがれた量を飲み干し、もう半分も飲んでしまった。
体を起こしたからか、頭がクラクラとしたのでまた私は横になり眠りについた。
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