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16. 裏手の建物

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 屋敷の裏に、木々に隠れたように立っている屋敷。全体は木々に隠れて見えないからはっきりとはわからないけれど、私の実家よりも大きそうな建物。

 もしかしたら、やっぱり愛人がいらっしゃるのかしら?
そう思ったら、なぜだか少し心がモヤモヤとしたの。

 私、愛人を囲っている人でもいいって思っていたのに。

 いつの間にか、フォルス様と話して心が温かくなる事が多くなったし、安心したり、楽しいと思える自分がいたのよね。

 …これって、フォルス様を好きになっているのかしら。

 どうしましょう。
愛人がいたら、本当に今でも大丈夫と言えるのかしら。だってこれから先、おばあちゃんになるまでこちらで生活するのよ。

 なんだかモヤモヤとして、何を考えていても気になるの。

 午後の、礼儀作法の勉強時間も、その事を考えてしまって、先生に怒られてしまったわ。


 フォルス様とは、部屋は別々に使わせてもらっている。
夫婦になったのだから、夜も一緒に寝るのかしらと少し緊張したけれど、屋敷に着いた日に『一緒の部屋で寝るのは、もう少しアンリエッタがこの屋敷の生活に慣れてからにしようか。』と言ってくれたから。

 だから、朝食を一緒に取る日もあるし、フォルス様が忙しいとかで朝から出掛ける時などは、一人で食事をする時もある。
その時には、もちろん楽しくお話をしながらいただいている。

 私の予定といえば、午前中は、朝の食事が終わると少し休憩。その後に勉強時間。
昼食は私一人で取る。
夜は、フォルス様の仕事が終われば一緒に食べ、終われなければ先に食べる。
その場合、フォルス様は夜に少し部屋に来てくれる時もあるが、すぐに自室に帰ってしまう。

 …これって、やっぱり愛人がいるのかしら!?
私と、同じ部屋にしてくれないし、寝てもくれない。そういえばまだ一度も、フォルス様のお部屋に入ってはいないわ。

 確かに、私はまだ十六歳で子供よ。でも、結婚式の日に、『手を出さないよう気をつけないと』とフォルス様が言っていたけれど、そんな雰囲気、一度もなっていませんよ。魅力がないのかしら…。

 んもう!ずっと考えていても仕方がないわ。
今日も、フォルス様はお仕事が終わらないみたいで夕食は別々だったもの。
この部屋に来てくれるかしら。来ないなら、お隣の部屋にこちらから行ってもいいわよね?夫婦ですものね。

「ねぇ、エラ。今日はフォルス様、忙しい?会えないかしら。」

「すみません、先ほど確認したら、まだお仕事かかるそうです。夕食もまだのようでした。どうしてもでしたら、お時間作ってもらってきますよ。どうされますか?」

「そう…。分かったわ。では、私そろそろ寝るわ。フォルス様も、無理はされないでと伝えてくれる?それにしても、忙しいのね。」

「そうですね…。アンリエッタ様はお優しいですね!では、お伝えしておきますね。おやすみなさいませ。」

 なぁんだ。会って、聞いてみようと思ったのだけどお仕事なのね、残念。えっでも本当にお仕事よね!?侯爵のお仕事ってこんなに遅くまでかかるの?

 ねぇフォルス様。愛人の所になんて、行っていないわよね?
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