上 下
16 / 25

16. 裏手の建物

しおりを挟む
 屋敷の裏に、木々に隠れたように立っている屋敷。全体は木々に隠れて見えないからはっきりとはわからないけれど、私の実家よりも大きそうな建物。

 もしかしたら、やっぱり愛人がいらっしゃるのかしら?
そう思ったら、なぜだか少し心がモヤモヤとしたの。

 私、愛人を囲っている人でもいいって思っていたのに。

 いつの間にか、フォルス様と話して心が温かくなる事が多くなったし、安心したり、楽しいと思える自分がいたのよね。

 …これって、フォルス様を好きになっているのかしら。

 どうしましょう。
愛人がいたら、本当に今でも大丈夫と言えるのかしら。だってこれから先、おばあちゃんになるまでこちらで生活するのよ。

 なんだかモヤモヤとして、何を考えていても気になるの。

 午後の、礼儀作法の勉強時間も、その事を考えてしまって、先生に怒られてしまったわ。


 フォルス様とは、部屋は別々に使わせてもらっている。
夫婦になったのだから、夜も一緒に寝るのかしらと少し緊張したけれど、屋敷に着いた日に『一緒の部屋で寝るのは、もう少しアンリエッタがこの屋敷の生活に慣れてからにしようか。』と言ってくれたから。

 だから、朝食を一緒に取る日もあるし、フォルス様が忙しいとかで朝から出掛ける時などは、一人で食事をする時もある。
その時には、もちろん楽しくお話をしながらいただいている。

 私の予定といえば、午前中は、朝の食事が終わると少し休憩。その後に勉強時間。
昼食は私一人で取る。
夜は、フォルス様の仕事が終われば一緒に食べ、終われなければ先に食べる。
その場合、フォルス様は夜に少し部屋に来てくれる時もあるが、すぐに自室に帰ってしまう。

 …これって、やっぱり愛人がいるのかしら!?
私と、同じ部屋にしてくれないし、寝てもくれない。そういえばまだ一度も、フォルス様のお部屋に入ってはいないわ。

 確かに、私はまだ十六歳で子供よ。でも、結婚式の日に、『手を出さないよう気をつけないと』とフォルス様が言っていたけれど、そんな雰囲気、一度もなっていませんよ。魅力がないのかしら…。

 んもう!ずっと考えていても仕方がないわ。
今日も、フォルス様はお仕事が終わらないみたいで夕食は別々だったもの。
この部屋に来てくれるかしら。来ないなら、お隣の部屋にこちらから行ってもいいわよね?夫婦ですものね。

「ねぇ、エラ。今日はフォルス様、忙しい?会えないかしら。」

「すみません、先ほど確認したら、まだお仕事かかるそうです。夕食もまだのようでした。どうしてもでしたら、お時間作ってもらってきますよ。どうされますか?」

「そう…。分かったわ。では、私そろそろ寝るわ。フォルス様も、無理はされないでと伝えてくれる?それにしても、忙しいのね。」

「そうですね…。アンリエッタ様はお優しいですね!では、お伝えしておきますね。おやすみなさいませ。」

 なぁんだ。会って、聞いてみようと思ったのだけどお仕事なのね、残念。えっでも本当にお仕事よね!?侯爵のお仕事ってこんなに遅くまでかかるの?

 ねぇフォルス様。愛人の所になんて、行っていないわよね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。

猫宮乾
恋愛
 再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

平凡を望んだ私が、なぜ侯爵と結婚して、溺愛されることとなったのか?

コトミ
恋愛
 顔も性格も普通の男性と結婚し、子供を産んで、平凡な人生を歩むことを望んでいたソフィは、公爵子息であり、侯爵のケイトを両手で突き飛ばしてしまった事で、人生が天変地異が起こったように逆転してしまう。 「私は女性に突き飛ばされたのは初めてだ!貴方のような方と結婚したい!地位や外見に振り回されず、相手を突き飛ばせるような女性と!」 (こんな男と結婚なんて絶対に嫌だ。私が望んでるのは普通の人生であって、こんなおかしな男に好かれる人生じゃない)

処理中です...