上 下
13 / 20

13 途中、トレッタング村 2

しおりを挟む
「矢印は…え?何これ-?」
矢印は消えた。その代わり、壁がキラキラと光っている部分が其処彼処にある。サイズも大小様々。

「ルーク、これって何?宝石かしら…。」
「凄い…凄いぞマリア!まぁ、まだ分からんが、宝石だったらこんなに散らばっていて…特産品どころじゃないぞ!悪い、ちょっとロイに報告する。」

ルークも珍しく興奮して話している。確かに、地面も、壁も、天井も。キラキラといろんな色が光っている。いろんな種類があるのかもしれない。緑や青、赤、白、黄、紫などだ。

これを特産品にすればいいのかしら。けれどさすがに…大丈夫かな私…。だってもしこれが全て宝石だったら、幾らするの!?

ルークが戻って来た。

「ここにも、調査を入れる。そして、さっきの村人達にどうにか還元出来るといいのだが。」
「よかったあ。そうね。家も隙間風とか入り込みそうな感じだったから、もう少ししっかりした家とかに出来るといいんじゃないかしら。」
「そうだな…扉が上手く開かない家とかもあったんだ。そういう面も、還元しないとだな。」

ただ、問題はどうやって採るかよね。掘ったり削ったりする人手とかもいるだろうから…。ロイさん、どんどん仕事が舞い込んできちゃうわね…。ごめんなさい…。



ついでに、今日はここに泊まる事にした。入り口近くで、ルークが魔法で火を起こし、荷物に入っていた保存用のお肉や魚を焼いてくれた。んー!美味しい!!


ウインドもこの洞窟に連れてきて、近くの岩に括り付ける。
入り口は念のため、ルークが雷の魔法で結界を張ってくれた。人や獣などが入ってくると、電気が流れるらしい。凄いわ。防犯対策もバッチリね!


奥は何処まで続いているのかと思ったんだけど、暗いし、結構入り組んでて良く分からない。最奥まで行くのは無理だけど、少しだけルークと行ってみる事にした。
ルークが自身の右手に火を浮かべたので、明るい。歩く度に少し前方の足元にも火を浮かべてくれるので、歩き易かった。
…結果から言うと、凄く奥まで続いていた。横に入り組んだ細い道も沢山あったので迷ってもいけないし、5分位ですぐに戻ってきた。迷路のような洞窟で、天井や壁もキラキラと宝石らしき物が埋まっているのが、永遠と続いている。


ルークは、奥に温泉があるかと期待したのもあったみたい。でも私が何も言わないし、【戻ろうか】と声を掛けてくれたのもルークだった。
そう言われると、体をサッパリさせたくなった。ルークが、【湯浴みをしたいか?作れなくは無い。】と言ってくれたけれど、お湯を沸かして布をそれに濡らして体を拭くことにした。聞けば、魔法を使うとお腹も空くし疲れるみたいだもの。ただでさえ、火を付けてもらっているもの。あまり贅沢は出来ないわ。
あら?ルークって、火と水と雷まで使えたのね。王族だからかしら。魔力が無い人や、使えない人もいると言っていたし、何種類も使えて凄いわね!さすがルーク!


そろそろ寝る準備をと言う事になって、ルークと一緒に荷物の中にあったテントを張って、その中に一緒に入る。地面はゴツゴツしているけれど、魔法で水のクッションを作ってくれ、それの上に寝転んだ。温度も、絶妙でひんやりし過ぎなくて気持ちいい。

「魔法は使い過ぎて無いですか?」
と聞くと、
「気にしてくれたのか。ありがとう。これくらいは初歩だから大丈夫。さっき、肉も沢山食べたからな!さあマリア、今日は誰も居ないし、もっと密着しようか?」
え、いやいや無理でしょ!そりゃあルークと…
「なんてな!テントを張っているとはいえ外だからな。俺も残念ながら眠い…ゆっくり寝てくれ。おやす…ムニャムニャ…」

あら!ルークやっぱり魔法使いすぎてた!?もう寝てる…でも寝顔を見ていたら、私も眠くなって…ムニャムニャ…









「ん…。」
なんだか、頬に何かが当たったような気がして。また、今度は髪を撫でられた感じがした。
目を開けると、すぐ近くでルークと目が合い、微笑まれた。ルークがどうやら私の頬を撫でたり、髪を撫でたりしていたようだ。

「マリア、おはよう。一緒のベッドに寝るのっていいもんだな。目覚めたらマリアがすぐ隣に居て。帰ったら、同じ部屋の大きなベッドで寝ような。」
い、いきなり何を言い出すのよ…!確かに私も嬉しかったけど!

「おはよう、ルーク!びっくりしたけど、ルークが隣に居るの、確かにいいわね。」
私も、負けじと言い返す。

ルークは、くすくすと笑って、
「ああ、もっとこうしていたいけど、起きるか。」
と体を起こした。
私も体を起こして、朝の支度をする。そうね、私もずっとそうしていたかったわ。同じ気持ちなのね!






朝食を取り、片付けをして、この近くの昨日夕方行った村に向かった。
ウインドは、少し待っててもらう事にした。

人気は無く、閑散としている。手始めに村に着いて近くの家に声を掛ける。

「すみません!ちょっとお話を伺えませんか?」
と、ルークが言う。少しして、
「…はーい。どちら様?」
と、女の人の声がして、扉が開いた。
あら。開けてくれたのね!

「私達、王都から来たのですが、この村の村長の家って何処ですか?」
「村長ね。あっちの家なんだけど。今の時間だと…あ、ちょっと上で、木の作業している人いるでしょ。あの頭に布巻いている人よ。」
なるほど…。暑いからタオルを頭に巻くのはこちらの世界も一緒なのかしら。
「分かりました。ありがとうございます。では。」
とルークが言うので、私は気になった事を聞いてみる。
「あの…それともう一つ聞いてもいいですか?」
「何か?」
「昨日夕方、この村に来て、向こうの家の人達に声を掛けたんですが、外に出て来てくれなかったので…あなたは逆に何で出て来てくれたんですか?」
何か、この村にはあるのかしら?

「向こうって、あっちの方の?」
「そうです。セルーロから来てあっちの方に着いて。夕方で、泊まる場所とかあるか、もしくは庭先でもいいから借りれないかと思ったんですけど、家の中からしか反応してくれなくて。」
「そうだったの。多分だけど、ヤンさんの家じゃないかしら?半年ほど前にも旅の人が来て、泊めてあげたんだそうよ。そしたらね…娘さんが殺されたそうなの。」
「え!?」
「善意で泊めてあげたわけでしょう?それなのに、娘さんが殺されたなんてね…それ以来あまり周りとも付き合いが無いそうよ。その近所の人も、何かあると困ると思ったんじゃないかしら。」
「犯人は?警察に言わなかったんですか?」
「けいさつ?ここは山に囲まれているでしょ。逃げられたら終わりよ。朝起きたら男はもう居なかったそうよ。」
「そんな…。」
私は、話を聞いて、その家の人が凄く不憫に思えた。言葉をなくしていると、
「すみません、ありがとうございました。さあ、行こうか。」
と、ルークが声を掛けてくれた。
「大丈夫?ごめんなさいね。聞かれたからって話さない方が良かったわね。」
「あ、いいえ!違います。すみません、ありがとうございました。」
と慌てて言って、ルークと共に村長さんが居る方へ歩いて行く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

処理中です...