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12 途中、トレッタング村

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あといくつ視察があったかしら?私は、ルークに順路なども任せてしまっているので、次は何処か、ついて行くだけだったけれど、さすがに聞いた方が良いかしら。

「ルーク、あといくつ視察があるの?」
「視察はあと一つだ。その後に寄ろうか迷っている所がある。次は、ちょっと距離がある。ここからだと3日位かかるから、途中の村で泊まったりして行こう。ソンパーニャという町へ行きたい。」
「ソンパーニャ…北の方だったかしら?」
「お、知っていたか?あ、タリアに教えてもらったか。そうだ。今までより少し大きい町だ。そこは、町だから外から食料は入ってくるがどうも自分達で何か作りたいらしい。嘆願書が来ていてな。本来であれば、その町を治めている領主が考えたりするのだがな…自分達だけでは難しかったみたいだな。」
確かに、他の人に意見聞いた方が良い案が出る事もあるわね。

「寄ろうか迷っている所は何処なの?」
「寒いから、マリアはどうするか聞きたかったんだ。叔父上が住んでいる、北の辺境の地ブラッペンだ。」

王弟殿下が、悪い事しちゃって罰として寒い場所を任されたんだっけ。本来であれば、処刑の所を国王様が【生きて償えばよい】って決めたんだったわよね。
王弟殿下のヤルドレン=ヴァン=ケルンベルト…あ、もうヤルドレン=ヴァン公爵様だっけ。と一緒に向かった、カトリーヌ=ドレイク様もいらっしゃるわよね。

「カトリーヌ様にもお会い出来ますか?」
「まあ、一緒に行ったから会えるんじゃないか?子が出来るのはすぐだろうと専らの噂らしいぞ。」
「そんなに仲がよろしいって事?」
「そうなんじゃないか?まあ、噂だがな。じゃあ、後でブラッペンも行こう。」
「うん!」

ソンパーニャとブラッペンに行ったらこの旅も終わりなのね。ルークと2人で居られるのもあと少しだと思うとちょっと淋しいけれど、最後まで楽しまないといけないわよね!








ソンパーニャに行くには、山の中を行くか、海岸沿いに北へ行って内陸に曲がるか、王宮へ一度戻って北の方へ行くかのどれかだった。

ルークはしばらく考えたあと、山の中を行くと言った。私は、どの道で行っても特に異議は無かったので、それに従う。

「山の中だと、3日じゃ着かないかもしれないが、いいか?それにな…」
平坦な道や草原だと、ウインドで颯爽と走れるものね。木が入り組んだ森だと、
ウインドに乗るのは難しいかも。

「大丈夫ですよ。そういえば、荷物にテントがあるって言ってましたよね。泊まる所が無ければ、テントでも楽しそうですね。」
私が言うと、ルークは明らかにホッとしたような顔になった。

「私は生粋の貴族のお嬢様ではないですから、不安に思わないで下さいよ!山を通るルートは、ルークが何か考えがあってそちらを選んだのでしょう?まさか、テントが使いたかっただけですか?」
「いや!そんな事はないぞ!まあ、使いたかったのは確かだが…すまん。マリアの力に頼っている。道中通る村は、小さくて国の直轄地なんだ。もし、温泉地とやらが作れたら、もっと豊かになるのではないかなと思ってな。」
「そっか!ん-、残念ながら私に出来るかは約束出来ないわ…。だっていつもいきなりなんだもの。でも、何か力になれたらと思っています。温泉地も、海の近くとか、山の中、川の近く等いろいろあると、次は何処へ行ってみたいとか選択肢が広がりますもんね!もちろん、同じ場所に通い詰めるのもいいと思いますけど。」
「なるほどな。そういうものか。この国はそもそも特産品があまりないんだ。それを欲しいとか、してみたいとか思ってもらえればお金が回る。裕福とまではいかなくとも、国民が貧しさから脱却できれば良いと思ったんだ。」
「そうですね。行ってみないと分かりませんよね。だって、アイリスちゃんが入れてくれたお茶、スッキリしましたもん。あれも、特産品になれば凄いですよね?」
「たくさんあるとは言っていたな。だが、人手も要るし輸送など違う問題も出てくる。ま、その辺の詰めはロイにやってもらおう。回った所にすべて特産品が見つかるわけでもないだろうが。」
「ロイさんも大変ですね…。見つかれば良いですけどね!」
帰ったら、ロイさん口聞いてくれなくなってたらどうしよう…。







途中お昼休憩等を挟んで、山の中をウインドに乗ったり、木々が生い茂っている所は、引いて登ったりして進んでいたら、前方に家が現れた。

「ここは小さい村でな。トレッタングと言う村だ。今日はここで休ませてもらえるといいが。」
とルークは言い、ウインドの手綱を私に持たせ、一番手前に見えた家に声を掛けに行く。

「すみませーん。」

太陽が傾き始めている。あと少ししたら、この辺りも暗くなってしまうだろう。

少しして、ルークが戻って来た。

「んー、ここは無理かもな…。」
と、難しい顔をして出てきた。

「どうかされましたか?」

「おじいさんが一人で居たんだが、【この村は貧しいから人を泊めたり出来ない】と言われたんだ。庭先で場所だけでもと言ったんだが、止めて欲しいと言われた。次へ行こうか。」
そうなんだ…今までが好意的な村ばかりだったから、ちょっと意外。でも確かに、いきなり知らない人が訪ねて来たら驚くかな。

ルークの後を、ウインドと共について行く。ウインドは、私が引っ張っても、ちゃんと歩いてくれる。偉いわ。

次の家も駄目だったみたいで、すぐに出てきた。そして、また次の家へ…。
ルークに悪いわ…どうしたらいいのかしら。あ!

「ルーク!」
「ん?」
「もう止めましょ。ちょっと来て欲しいの。」
「どうした?まさか…」
そうよ、そのまさかなのよ!

「ええ、矢印がまた…」
「よし来た!どっちだ?」
ルーク、まさか待ってたんじゃないでしょうね…。まぁ、私もいつも矢印が出てくるわけでもないから、気紛れと言えば気紛れだし、当てにならないのよね。

「こっちよ!ウインドも、行こうね。」


先程の村を抜け、少し奥の木が生い茂っている方に矢印が向かっている。次は何があるのかしら?宿?はさすがに無いわよね。
10分位かしら。道なき道を暫く歩くと、石の壁に突き当たった。そして、足元に手のひら位の大きさの穴があった。その穴に、矢印が続いている。
えー、こんな小さな穴に何があるのかしら。何か、ネズミの家みたいよ。今日はここで寝ろって事かしら?

「ルーク…ここの穴に矢印が続いているのよ…。どうしましょう。」
「そうか。今回はどんな事が起こるのだ?思ったよりも小さいな。」
そうなのよね…とても小さいのよね…。

「とりあえず、少し開けるか。」
そうルークは言い、右の手のひらを穴に向け、左手は、人指し指で穴に向け何かをした。
すると、音も無く穴が大きく広がった。

「え!いつの間に!」
私が呟くと、
「セルーロで温泉を掘り出した時は、何も考えず、音もそのままにしてしまったからな。村の人達も心配で見に来てしまっただろ。今日はこれから夜になるから、村人が出歩くと危険だからな。不安にさせてもいけないから、水で膜を張ったんだ。」
なるほど…そんな魔法を使ったのね。ルークったら村人にまで気遣いして本当に素晴らしいわ!

「まあ!そんな事も出来るのね!ルークも、手慣れてきてるわね!」
「ああ。確かに慣れてきたな。さぁ、矢印はどうだ?もう少し穴を開けるか?」






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