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28. 一時の戯れ?
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次の日。
前触れも無しにいきなり異国の王子様の編入生が来たとあり、学院の生徒達はかなりのざわつきがあった。
半年とはいえ留学生が、それも格好いい顔立ちの珍しい銀髪に緑の瞳とあってそれはもう見世物のように廊下もひしめき合って隣のクラスの生徒や上級生が見に来ていた。
だが、その留学生のライラスは、シャーロテに頻繁に話し掛けている。シャーロテも満更でない様子。むしろ、二人の仲に入れない雰囲気であるので、生徒達は二日もすれば落ち着きを取り戻した。
けれど、意外にもシャーロテは複雑だった。
「ねぇ、あれはどう見ても、アプローチしてきてるわよね…?」
ライラスは、シャーロテを見れば可愛い愛らしいと囁き、そして自国の紹介を暇さえあればしていた。
だが、結婚して欲しい、などはまだ言われてはいない。
いずれ他国へと嫁ぐのだと思っていたシャーロテは、初めこそチャーバリス国へと嫁ぐのかもしれないと思っていた。王太子妃として。
そして、自らもいつそうなってもいいように教育されてきていた為に、ライラスと結婚できるかもと思った。
だが、ライラスからは未来の約束までは言われてはいない。その為、だんだんと留学先での火遊びなのではないかとシャーロテは思うようになったのだ。
ライラスの表情や仕草は、シャーロテに対するものと、他の者へ対するものが全く違う為、クラーラは否定したいのだが、こればかりは分からない。クラーラも、優しい表情や口調をヘンリクにされていたからだ。
クラーラは、シャーロテの為にと意を決して、ライラスの事をよく知っているであろうラグンフリズに初めて自分から話し掛けた。
「あの!お、お話があるのですが…」
「!そ、そう?じゃあ…昼休みに、三階の空き教室でもいいかな?」
三階の空き教室とは、以前ヘンリクがマルグレーテと会っていた教室。教材室の隣の教室だ。
「分かりました。お願いします。」
「どうしたの?」
昼休み、食事が終わってクラーラが空き教室へ着くと、すでにラグンフリズは待っていてくれた。
「ラグンフリズ様。あの…ライラス様の事です!」
「ん?」
「ライラス様は…シャーロテとどうなりたいのでしょうか。一時の戯れ…?それじゃあシャーロテがあんまりですわ!」
「ま、待ってくれ!…俺が、この場でライラスの気持ちを代弁出来ないが、シャーロテ嬢の事は、真剣に考えていると思うよ。だって以前のライラスだったら、女性に自分から話し掛けにいかなかったからね。ただ…ライラスにも立場がある。自分の気持ちだけで、シャーロテ嬢を縛り付けるような言葉を言えないんじゃないかな…。」
ラグンフリズは、初めてクラーラに話し掛けられてとても嬉しかった。
だが、涙を溜め、目を潤ませて自分の事のように友人の為に怒るクラーラを可愛いと思ったと同時に、なんだか自分に言われているように感じてしまい最後は弱気に言った。
クラーラに自分の気持ちを伝えたと思っていたし、シャーロテ嬢やライラスからも自分がクラーラを想っていると言われ、それを否定していないから伝わっていると思っていた。
だが、このように自分の想いも一時の戯れだと思われていたら?こうやって心を痛めていたら?
なんだか、胸が締め付けられるように感じた。
「分かったよ、クラーラ嬢。きっと不安なんだよね。気持ちは見えないから、疑いを持ってしまうよね。でも、きっと男は態度に出さないだけで例えば両親を説得したりとか、いろいろ手を…尽くしているんだよ。…だからもう少し待ってあげて欲しい。」
そう言いながらもラグンフリズは自分にも言い聞かせた。
(しまった…!そうだ、俺だって両親に大切に想う人が出来たと伝えていなかった!今のこの状況にかまけて、後回しにしていた!シャーロテ嬢も言っていたじゃないか!クラーラには結婚の申し込みが殺到するだろうと。マグヌッセン伯爵がすでに吟味しているかもしれない!俺も、事を動かさなければ!いや、でも水面下でだよな。まだ、クラーラが婚約を白紙に戻してそんなに経っていないのだから。)
「そうですよね…はい!分かりました!ライラス様をよくご存知のラグンフリズ様がそう言われたのですもの。信じられますわ。ありがとうございます。相談して良かったです!」
クラーラは、納得し、今度シャーロテが心配していたらそう声を掛けようと思って、ラグンフリズに礼を言って空き教室を去った。
ラグンフリズもまた、クラーラの後ろ姿を見ながら、決意して空き教室を出て行った。
前触れも無しにいきなり異国の王子様の編入生が来たとあり、学院の生徒達はかなりのざわつきがあった。
半年とはいえ留学生が、それも格好いい顔立ちの珍しい銀髪に緑の瞳とあってそれはもう見世物のように廊下もひしめき合って隣のクラスの生徒や上級生が見に来ていた。
だが、その留学生のライラスは、シャーロテに頻繁に話し掛けている。シャーロテも満更でない様子。むしろ、二人の仲に入れない雰囲気であるので、生徒達は二日もすれば落ち着きを取り戻した。
けれど、意外にもシャーロテは複雑だった。
「ねぇ、あれはどう見ても、アプローチしてきてるわよね…?」
ライラスは、シャーロテを見れば可愛い愛らしいと囁き、そして自国の紹介を暇さえあればしていた。
だが、結婚して欲しい、などはまだ言われてはいない。
いずれ他国へと嫁ぐのだと思っていたシャーロテは、初めこそチャーバリス国へと嫁ぐのかもしれないと思っていた。王太子妃として。
そして、自らもいつそうなってもいいように教育されてきていた為に、ライラスと結婚できるかもと思った。
だが、ライラスからは未来の約束までは言われてはいない。その為、だんだんと留学先での火遊びなのではないかとシャーロテは思うようになったのだ。
ライラスの表情や仕草は、シャーロテに対するものと、他の者へ対するものが全く違う為、クラーラは否定したいのだが、こればかりは分からない。クラーラも、優しい表情や口調をヘンリクにされていたからだ。
クラーラは、シャーロテの為にと意を決して、ライラスの事をよく知っているであろうラグンフリズに初めて自分から話し掛けた。
「あの!お、お話があるのですが…」
「!そ、そう?じゃあ…昼休みに、三階の空き教室でもいいかな?」
三階の空き教室とは、以前ヘンリクがマルグレーテと会っていた教室。教材室の隣の教室だ。
「分かりました。お願いします。」
「どうしたの?」
昼休み、食事が終わってクラーラが空き教室へ着くと、すでにラグンフリズは待っていてくれた。
「ラグンフリズ様。あの…ライラス様の事です!」
「ん?」
「ライラス様は…シャーロテとどうなりたいのでしょうか。一時の戯れ…?それじゃあシャーロテがあんまりですわ!」
「ま、待ってくれ!…俺が、この場でライラスの気持ちを代弁出来ないが、シャーロテ嬢の事は、真剣に考えていると思うよ。だって以前のライラスだったら、女性に自分から話し掛けにいかなかったからね。ただ…ライラスにも立場がある。自分の気持ちだけで、シャーロテ嬢を縛り付けるような言葉を言えないんじゃないかな…。」
ラグンフリズは、初めてクラーラに話し掛けられてとても嬉しかった。
だが、涙を溜め、目を潤ませて自分の事のように友人の為に怒るクラーラを可愛いと思ったと同時に、なんだか自分に言われているように感じてしまい最後は弱気に言った。
クラーラに自分の気持ちを伝えたと思っていたし、シャーロテ嬢やライラスからも自分がクラーラを想っていると言われ、それを否定していないから伝わっていると思っていた。
だが、このように自分の想いも一時の戯れだと思われていたら?こうやって心を痛めていたら?
なんだか、胸が締め付けられるように感じた。
「分かったよ、クラーラ嬢。きっと不安なんだよね。気持ちは見えないから、疑いを持ってしまうよね。でも、きっと男は態度に出さないだけで例えば両親を説得したりとか、いろいろ手を…尽くしているんだよ。…だからもう少し待ってあげて欲しい。」
そう言いながらもラグンフリズは自分にも言い聞かせた。
(しまった…!そうだ、俺だって両親に大切に想う人が出来たと伝えていなかった!今のこの状況にかまけて、後回しにしていた!シャーロテ嬢も言っていたじゃないか!クラーラには結婚の申し込みが殺到するだろうと。マグヌッセン伯爵がすでに吟味しているかもしれない!俺も、事を動かさなければ!いや、でも水面下でだよな。まだ、クラーラが婚約を白紙に戻してそんなに経っていないのだから。)
「そうですよね…はい!分かりました!ライラス様をよくご存知のラグンフリズ様がそう言われたのですもの。信じられますわ。ありがとうございます。相談して良かったです!」
クラーラは、納得し、今度シャーロテが心配していたらそう声を掛けようと思って、ラグンフリズに礼を言って空き教室を去った。
ラグンフリズもまた、クラーラの後ろ姿を見ながら、決意して空き教室を出て行った。
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