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ティアとの出会い エル視点
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俺は、ダニエル=タスリン。容姿は金髪青目。この国の国王陛下の弟だ。8歳年上の兄とは仲はそれなりに良い。むしろここ十何年は構い過ぎと思うくらいだ。
昔から王宮が嫌だった。
俺が10歳の頃。
母上が亡くなり、父上も体が弱って亡くなって。俺は人間不信になっていたんだ。もしかしたら、母上も父上も、欲望にまみれたやつらが何か手を下したのかもしれないって。
そして兄上が18歳で国王陛下になり。俺はスペアの存在だったのが、邪魔な存在となった。
俺がいると、良からぬ事を考え出す奴がいたのだ。俺に、【本当に国王に相応しいのはあなただ】と言ってくる奴らがいた。そんな気さらさらないのに。
反対に、俺を邪魔だと思う奴もいたな。毒を飲まされそうになったり、部屋に帰るとなぜか見知らぬ女がベッドにいたりもした。俺は、心休まる時が無くなっていった。
そんな時、父上と同世代だったクロベルン辺境伯が【私と一緒に田舎へ行きませんかな?】と言ってくれたのだ。【来るなら、何でも自分で出来るようになっていただく必要がありますがな。】と。俺は、王子だということに嫌気がさしていたし、別に王宮から離れられるならどこでも良かったからついて行く事にしたんだ。
辺境伯が言った言葉は嘘じゃなく、何でも自分で出来るようにと、少し辺境伯の邸でお世話になったあと、辺境伯の私兵団の寮に入れられ、そこで寝食を共に暮らしていた。稽古は辛い事がほとんどだったが、結果的にすごく有難かった。
王宮は、欲望が蠢きすぎる。少しずつ成長する俺に、初めは【兄上のように優秀であれ】と家庭教師を始め、大人達が期待を降り注ぎ、俺がそこそこ成長すると【第一王子殿下を差し置いて国王になりたいのではないか】と猜疑心を持った大人達に心無い言葉を言われたりした。
母上と父上が亡くなったのも、そんな大人達が画策したのではないかと俺は悩んみ、心が荒んでいたんだ。
そんな時だ。辺境伯に言われ、初めは辺境伯の領地の屋敷で一ヶ月ほどか。生活をさせてもらった。初めての田舎生活。戸惑う事も多かったが、澄んだ空気と、あの嫌な大人達の目がない分俺は開放的になれた。
そこには2歳になる辺境伯の娘のミーティアもいた。ミーティアは2歳なのにいつも屋敷の敷地内をうろうろし、姿が見えないといつも捜索されていた。たいていは図書館で本を読み漁っているか、敷地内の庭を散策しているらしかった。
俺は、小さくて可愛いらしく、触れたら壊れそうなミーティアを遠目で見る事しか出来ず、捜索する時にはたまに加わるだけだった。
そんな暇を持て余した俺に、辺境伯は【うちの私兵団で鍛えてみないか】と言ってきた。確かに、何もする事がなくダラダラと過ごしているのは性に合わなかったので、二つ返事でそうする事とした。
しかし、10歳の俺が、体つきの良い屈強な男たちの中に混じってなんてとてもじゃないが練習について行けなかった。だから、死にもの狂いで体力を付けた。屋敷に帰る体力もなく、併設された寮で、私兵と共に生活をした。そこにいる者達は、初めは俺が小さいからかバカにして見向きもしなかった。だが、俺が汗を流し、時には涙も流し基礎体力作りをしていると、【ここはこうした方がいい】などとアドバイスをくれる者が一人、二人と増えてきた。
辺境伯の一人息子のスヴェンは俺より二つ年上で、辺境伯に言われていたのか良く声を掛けてきた。
始めは馴れ合うつもりはなかったが、本音を言える相手がいるのは思いの外心地よく、スヴェンはかなりの魔法の使い手でもあったため共に私兵団で鍛え、たまに森から出てくる〝闇の獣〟と戦う討伐隊に加わる事ができるようになってきた。やっと、生きてていいんだと思うようになったんだ。
昔から王宮が嫌だった。
俺が10歳の頃。
母上が亡くなり、父上も体が弱って亡くなって。俺は人間不信になっていたんだ。もしかしたら、母上も父上も、欲望にまみれたやつらが何か手を下したのかもしれないって。
そして兄上が18歳で国王陛下になり。俺はスペアの存在だったのが、邪魔な存在となった。
俺がいると、良からぬ事を考え出す奴がいたのだ。俺に、【本当に国王に相応しいのはあなただ】と言ってくる奴らがいた。そんな気さらさらないのに。
反対に、俺を邪魔だと思う奴もいたな。毒を飲まされそうになったり、部屋に帰るとなぜか見知らぬ女がベッドにいたりもした。俺は、心休まる時が無くなっていった。
そんな時、父上と同世代だったクロベルン辺境伯が【私と一緒に田舎へ行きませんかな?】と言ってくれたのだ。【来るなら、何でも自分で出来るようになっていただく必要がありますがな。】と。俺は、王子だということに嫌気がさしていたし、別に王宮から離れられるならどこでも良かったからついて行く事にしたんだ。
辺境伯が言った言葉は嘘じゃなく、何でも自分で出来るようにと、少し辺境伯の邸でお世話になったあと、辺境伯の私兵団の寮に入れられ、そこで寝食を共に暮らしていた。稽古は辛い事がほとんどだったが、結果的にすごく有難かった。
王宮は、欲望が蠢きすぎる。少しずつ成長する俺に、初めは【兄上のように優秀であれ】と家庭教師を始め、大人達が期待を降り注ぎ、俺がそこそこ成長すると【第一王子殿下を差し置いて国王になりたいのではないか】と猜疑心を持った大人達に心無い言葉を言われたりした。
母上と父上が亡くなったのも、そんな大人達が画策したのではないかと俺は悩んみ、心が荒んでいたんだ。
そんな時だ。辺境伯に言われ、初めは辺境伯の領地の屋敷で一ヶ月ほどか。生活をさせてもらった。初めての田舎生活。戸惑う事も多かったが、澄んだ空気と、あの嫌な大人達の目がない分俺は開放的になれた。
そこには2歳になる辺境伯の娘のミーティアもいた。ミーティアは2歳なのにいつも屋敷の敷地内をうろうろし、姿が見えないといつも捜索されていた。たいていは図書館で本を読み漁っているか、敷地内の庭を散策しているらしかった。
俺は、小さくて可愛いらしく、触れたら壊れそうなミーティアを遠目で見る事しか出来ず、捜索する時にはたまに加わるだけだった。
そんな暇を持て余した俺に、辺境伯は【うちの私兵団で鍛えてみないか】と言ってきた。確かに、何もする事がなくダラダラと過ごしているのは性に合わなかったので、二つ返事でそうする事とした。
しかし、10歳の俺が、体つきの良い屈強な男たちの中に混じってなんてとてもじゃないが練習について行けなかった。だから、死にもの狂いで体力を付けた。屋敷に帰る体力もなく、併設された寮で、私兵と共に生活をした。そこにいる者達は、初めは俺が小さいからかバカにして見向きもしなかった。だが、俺が汗を流し、時には涙も流し基礎体力作りをしていると、【ここはこうした方がいい】などとアドバイスをくれる者が一人、二人と増えてきた。
辺境伯の一人息子のスヴェンは俺より二つ年上で、辺境伯に言われていたのか良く声を掛けてきた。
始めは馴れ合うつもりはなかったが、本音を言える相手がいるのは思いの外心地よく、スヴェンはかなりの魔法の使い手でもあったため共に私兵団で鍛え、たまに森から出てくる〝闇の獣〟と戦う討伐隊に加わる事ができるようになってきた。やっと、生きてていいんだと思うようになったんだ。
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