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3. 領地の経営

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 お父様は、三ヶ月毎に領地と王都に滞在して仕事をなさっています。
伯爵領のカントリーハウスで領地経営の仕事と、王都のタウンハウスで王宮へ通って大臣としての仕事をこなしているのです。

 伯爵領の主な特産品はブドウ。そのブドウはそのまま販売したり、加工品としてブドウジュースやブドウ酒、ブドウジャムなどを販売します。
その世話は領民皆でやっていて、お父様だけでは手が回らない細かな管理はうちの家令のダルがやってくれています。

 ダルは、お父様より少し若い年齢ではあるけれど黒い髪に幾つも白髪が増えてきています。かなり忙しくてやりくりが大変なのかもしれないわ。
カントリーハウスの全使用人の長でもあるから、私も、少しずつブドウ経営の事について学びながら手伝いをし、ダルの負担を少しでも減らせるように領地を今ではほとんど毎日回ったりしている。


 そんなお父様が、私が十歳位の頃から、私を伴って社交に繰り出してくれた。
家族で出席する会には家族で参加するが、会場で私を連れて、仕事上関係がある人達や、お父様の仲の良い人達に挨拶回りをしてくれるのだ。
それは、暗に私の顔を売って縁を繋ぎなさいということだと理解していた。
クレムフィス伯爵領地を継ぐ、もしくは六歳下の弟のセインが継いだ領地の経営を手伝うかもしれないから。

 弟は、私が家庭教師の先生に教わるようになって一年ほど経って、生まれたのです。

 この国は、長らく長子もしくは男が跡取りであった。
長子が女であっても跡取りになれる。

 しかしうちのクレムフィス家の場合は、お父様はお姉様は病弱という理由で跡継ぎから除外している。
だから、弟のセインを跡継ぎとすればいいのだが、最近、そんな風習は関係なく優秀な者が跡継ぎになっている家もチラホラと出てきた。
もちろん、当主が指名し、国王陛下に許可をもらって。
お父様は、私が幼い頃に勉学に励んでいてしかも家庭教師に言われた事もあったからか、私を優秀だと思っている節がある。

 セインが大きくなってから、私とセインどちらを後継者にしようか決めるのだろう。以前もそう言っていたし。私の中では、領主はセインになるのだろうと思っている。

 優秀な者が跡継ぎとなり、領主となっても所詮まだまだ偏見の塊であり、女性だからなどと蔑視される傾向も往々にしてある。
それに、セインも、小さいのによく図書室に行っているみたいだからきっと大きくなったら私よりも優秀になると思うわ。

 けれど、私は、今のところお父様と一緒に社交会場を回れるのを喜んでいた。
例え難しい話であっても、お父様と回っていれば苦にならなかった。普段忙しいお父様と一緒の時間を過ごせるから。
また、そこで出会う子供達もやはり、私と同じような次期後継者(仮)のような人達だから、話していても有意義だった。
領地の為と勉強しているだけあって話をしていても面白い。たまに、本当に後継者候補か?と思うほど、頭がスッカラカンの人もいたけれども。

 私は、その中で、キャロリーナ=ソグラン侯爵令嬢と一番仲良くしてもらっている。
その人はお姉様と同じ年齢で二歳年上であっても、私を見下したりはしないし、女性の次期後継者として凛としており、男性とも対等に話をしていてとても凛々しく見えた。

 その方は兄弟姉妹は他にいなかったから、私とは違って、しっかりとした後継者としての自覚もあったのかもしれない。


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