上 下
5 / 25

5. 試しに

しおりを挟む
 あの後、サイモンにもらった籠に入った大量のロダトを持って、私は厨房に行った。
途中、お母様が『ねぇアイネル、かもみいるってなぁに?』とわくわくした顔つきで聞いてきたので、もしかしたら紅茶になるかもと伝えたら、『じゃあ早速試してみましょう。』と言ってくれたからだ。

 厨房に行くと、私とお母様が来たことで使用人が驚いてしまった。
が、事情を話すと、『ロダトを洗うのと、お湯を持っていきますから、談話室にいらして下さい。』と言ってくれた。
私は、夢の中では一人で何でもこなしていたから自分でやると言いたかったが、本当に出来るかはわからない。夢は、現実味を帯びてはいたが所詮夢かもしれないのだ。
それに、使用人の仕事を取ってもいけないと思った。昼食の準備もあるだろうから、紅茶にする分だけを渡してお母様と談話室へと向かった。


 談話室のソファに座るとお母様は、

「なんだか、アイネルといると楽しい事が増えそうね!」

 と言ってくれた。
私の長い夢を、馬鹿にせず肯定して一緒に試そうとしてくれる事が素直に嬉しかった。
けれど、夢では美味しく感じたあの紅茶も、そうではなかったらどうしようと今さらながら思った為、

「お母様、そう言って下さって嬉しいです。でも、所詮夢なので…美味しくなかったらすみません…。」

 と、伝えた。

「あらぁ。それはそれでいいじゃない?面白くて。」

 と、お母様はコロコロと笑ってくれた。

 コンコンコン

「失礼いたします。」

 そう言って先ほどのお願いしていた、紅茶の準備が出来たようでワゴンを引いて一式準備して持ってきてくれた。

 普段の茶葉の代わりに、ロダトの花びらと茎を湯の中に入れてもらい、あとは普段するように準備してもらった。

「いただきます。」

 んー!!これよ、これ!
夢で飲んだものより、味が爽やかで、とても美味しく感じた。
けれど、この国で今まで飲んできた紅茶とは味が違うから、お母様はどう思うのかしら?と、お母様の顔を見て評価を待った。

「まぁ!普段飲む紅茶とはまた違うわね。でもこれはこれで美味しいわ!」

 そうお母様は言って、すぐさまゴクゴクと飲んでいる。気に入ってくれたのかもしれない。

「そうですか!よかったです。これはハーブティーと言います。まぁ、ハーブとは、薬草とか香草という意味ですからこの他にもいろんな種類がありますけれど。私はこれを良く飲んでいました。眠れない夜に飲むと、良く眠れるのですよ。」

「まぁ!こんな小さな草花に、そんな効能があるの?捨てなくてよかったじゃない!忙しいからか、ヘンツはあまり眠れないらしいのよね。」

 ヘンツとは、お父様の事でしたよね。

「そうでしたか…。では飲まれると良く眠れるかもしれませんね。あとは、お肌に付けると美肌になるのですよ。」

「まぁ…!そんな事も出来るの?……ねぇ、もしかしたら、うちのお庭に他にもそうやって使えるもの、あるかしら?」

「まだ、全部見ておりませんが、出来ると思いますよ。あ、ここから見えるあのバラは、これみたいに飲む事も出来ますし、バラの化粧水も出来ますよ。それも、香りがいいしもちろん美肌効果もありますから。」

「あら!そうなの?素晴らしいじゃないの!!それはいいかもしれないわ。ヘンツにも聞かせてあげましょう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。

まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。 私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。 お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。 けれど、彼に言われましたの。 「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」 そうですか。男に二言はありませんね? 読んでいただけたら嬉しいです。

婚約破棄ってこんな日にするのね。私は何とお答えすればよろしいのでしょうか。

まりぃべる
恋愛
私は、ユファ=ライヴァン子爵令嬢です。 チルチェイン=ヤーヌス伯爵令息が、婚約者だったのですけれど、婚約破棄したいと言われました。 こんな日に!? 私は、何とお答えすれば良いのでしょう…。 ☆現実とは違う、この作品ならではの世界観で書いております。 緩い設定だと思ってお読み下さると幸いです。

(完)妹が全てを奪う時、私は声を失った。

青空一夏
恋愛
継母は私(エイヴリー・オマリ伯爵令嬢)から母親を奪い(私の実の母は父と継母の浮気を苦にして病気になり亡くなった) 妹は私から父親の愛を奪い、婚約者も奪った。 そればかりか、妹は私が描いた絵さえも自分が描いたと言い張った。 その絵は国王陛下に評価され、賞をいただいたものだった。 私は嘘つきよばわりされ、ショックのあまり声を失った。 誰か助けて・・・・・・そこへ私の初恋の人が現れて・・・・・・

処理中です...