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34. スティーナの新たな部屋
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スティーナは、ヴァルナルの手を繋がれながら、王族居住区の奥へと進む。以前来たヴァルナルの部屋の、すぐ隣の扉の前でヴァルナルは立ち止まり、スティーナへと声を掛ける。
「ここが、今日からスティーナの部屋だよ。
…この部屋が使われるようになるなんてね。ずっと、スティーナが来てくれる事を願っていた。あぁ、やっと願いが叶うよ!」
「ヴァルナルったら…!」
「気に入らなかったらスティーナの好きに替えていって構わないよ。俺が勝手にスティーナが好むかと思うものを準備させたんだ。女性が使う化粧台などの分からない部分は信頼の置ける者に任せたけれどね。」
「え?ヴァルナルが…?嬉しいわ!」
ヴァルナルのその言葉にスティーナは、少し照れながらヴァルナルへと視線を向け、言葉を掛ける。
ヴァルナルは、照れ笑いをしながら扉を開けてスティーナを部屋へと促した。
部屋に入るとそこはまた広く、真ん中には大きな毛足の長い絨毯が敷かれている。調度品も年代物ではあるがさすが高級感があり、壁紙も優しい色合いで明るく、ヴァルナルが考えてくれたとあって広い部屋ではあるが居心地が良さそうだとスティーナは思った。
部屋には荷物を整理しているヤーナや他の使用人がいて、ヴァルナルを見ると一斉に手を止めて頭を下げる。
「あぁ、構わないよ。急がせて済まないがスティーナが早く落ち着けるように頑張ってくれ。」
ヴァルナルは足を止めて使用人へとそう言って、また歩き出しスティーナを奥の窓際にあるこれまた重厚感のある布地のソファへと連れて行って座らせ、ヴァルナルはその傍に膝をついてスティーナの顔を見て話し出した。
「スティーナ、さっきは不安だっただろう?改めて言うよ、俺の兄が本当にごめん!いつかは態度や振る舞いを正してくれると信じていたんだが、ラーシュ兄さんは結局無理だったようだ。
これからラーシュ兄さんの処遇についての処理をしなければならないから、行かないと。傍に居られなくてごめん。」
「ううん、どうしようかと思った時にヴァルナルが来てくれたもの。安心したわ。ありがとう!
ヴァルナルこそ、辛い選択をしなければならないのでしょう?実のお兄様なんだもの。だから、無理しないでね。」
「スティーナ、ありがとう。うん、俺、スティーナがいればきっと辛い事でも頑張れるよ!
ラーシュ兄さんの事は、いつかどうにかしなければならなかった事だからね、王族として生まれているんだからさ。
むしろ遅いくらいだよね。でも俺が成人の儀をするまで父上は待っていたらしいんだ。その間にもしかしたら兄さんが自覚を持ってくれるかもしれないと期待したのかもしれない。」
「そうだったのね…。
王太子の立場となったのだものね、ヴァルナル、いってらっしゃい!」
「あぁ、なんていい響きなんだ!行ってくる!
今日はゆっくり休んで?夕食は一緒に食べたかったけど無理だろうなぁ…。
少し早いけどおやすみ!」
「フフフ。ヴァルナル、おやすみなさい!」
ヴァルナルは名残惜しそうにスティーナの手を一度握ると、しかし自身の頭を振ってすぐに手を離し、立ち上がって部屋を去った。
「スティーナ様、慌ただしくて申し訳ありません。粗方荷物は運び入れました。」
ヴァルナルの姿を目で追っていたスティーナに話し掛けたヤーナが、続けて、今日の夕食は部屋に持って来るからそれまでどうするかと聞いた。その間に、使用人達は音を立てないように部屋を出て行ったのでヤーナと二人だけになった。
王太子妃の部屋は、先ほどまであてがわれていた貴賓室よりは狭いが、それでも大きく感じる部屋だった。その為、使用人達も居なくなり、なんだか一気に静かになったと感じたスティーナであった。
「ちょっと休憩したいわ。
ねぇヤーナ、テレサとラーシュ様って仲が良かったのね。」
「そうですね、私もテレサ様の事はカトリ様のお屋敷へ行かれてからは存じ上げませんでしたから、驚きました。」
「イェブレン国で暮らすって大変じゃない?」
「私には分かりかねますが…もしも愛し合っておられるのなら、愛はどんな障害も乗り越えると言いますから、大丈夫なのではないでしょうか。」
「そう…そうね。テレサが選んだ道だもの、応援してあげなくちゃね。」
「はい。ラーシュ様も、テレサ様とご一緒であるならその…少しはしっかりなさるのではないでしょうか。」
「そうね、きっとそうだわ!助け合っていってくれるといいわね。」
スティーナは妹を想い、過酷な環境へ自ら選び向かう事となっても、そのように未来は明るいといいと切に願った。
「ここが、今日からスティーナの部屋だよ。
…この部屋が使われるようになるなんてね。ずっと、スティーナが来てくれる事を願っていた。あぁ、やっと願いが叶うよ!」
「ヴァルナルったら…!」
「気に入らなかったらスティーナの好きに替えていって構わないよ。俺が勝手にスティーナが好むかと思うものを準備させたんだ。女性が使う化粧台などの分からない部分は信頼の置ける者に任せたけれどね。」
「え?ヴァルナルが…?嬉しいわ!」
ヴァルナルのその言葉にスティーナは、少し照れながらヴァルナルへと視線を向け、言葉を掛ける。
ヴァルナルは、照れ笑いをしながら扉を開けてスティーナを部屋へと促した。
部屋に入るとそこはまた広く、真ん中には大きな毛足の長い絨毯が敷かれている。調度品も年代物ではあるがさすが高級感があり、壁紙も優しい色合いで明るく、ヴァルナルが考えてくれたとあって広い部屋ではあるが居心地が良さそうだとスティーナは思った。
部屋には荷物を整理しているヤーナや他の使用人がいて、ヴァルナルを見ると一斉に手を止めて頭を下げる。
「あぁ、構わないよ。急がせて済まないがスティーナが早く落ち着けるように頑張ってくれ。」
ヴァルナルは足を止めて使用人へとそう言って、また歩き出しスティーナを奥の窓際にあるこれまた重厚感のある布地のソファへと連れて行って座らせ、ヴァルナルはその傍に膝をついてスティーナの顔を見て話し出した。
「スティーナ、さっきは不安だっただろう?改めて言うよ、俺の兄が本当にごめん!いつかは態度や振る舞いを正してくれると信じていたんだが、ラーシュ兄さんは結局無理だったようだ。
これからラーシュ兄さんの処遇についての処理をしなければならないから、行かないと。傍に居られなくてごめん。」
「ううん、どうしようかと思った時にヴァルナルが来てくれたもの。安心したわ。ありがとう!
ヴァルナルこそ、辛い選択をしなければならないのでしょう?実のお兄様なんだもの。だから、無理しないでね。」
「スティーナ、ありがとう。うん、俺、スティーナがいればきっと辛い事でも頑張れるよ!
ラーシュ兄さんの事は、いつかどうにかしなければならなかった事だからね、王族として生まれているんだからさ。
むしろ遅いくらいだよね。でも俺が成人の儀をするまで父上は待っていたらしいんだ。その間にもしかしたら兄さんが自覚を持ってくれるかもしれないと期待したのかもしれない。」
「そうだったのね…。
王太子の立場となったのだものね、ヴァルナル、いってらっしゃい!」
「あぁ、なんていい響きなんだ!行ってくる!
今日はゆっくり休んで?夕食は一緒に食べたかったけど無理だろうなぁ…。
少し早いけどおやすみ!」
「フフフ。ヴァルナル、おやすみなさい!」
ヴァルナルは名残惜しそうにスティーナの手を一度握ると、しかし自身の頭を振ってすぐに手を離し、立ち上がって部屋を去った。
「スティーナ様、慌ただしくて申し訳ありません。粗方荷物は運び入れました。」
ヴァルナルの姿を目で追っていたスティーナに話し掛けたヤーナが、続けて、今日の夕食は部屋に持って来るからそれまでどうするかと聞いた。その間に、使用人達は音を立てないように部屋を出て行ったのでヤーナと二人だけになった。
王太子妃の部屋は、先ほどまであてがわれていた貴賓室よりは狭いが、それでも大きく感じる部屋だった。その為、使用人達も居なくなり、なんだか一気に静かになったと感じたスティーナであった。
「ちょっと休憩したいわ。
ねぇヤーナ、テレサとラーシュ様って仲が良かったのね。」
「そうですね、私もテレサ様の事はカトリ様のお屋敷へ行かれてからは存じ上げませんでしたから、驚きました。」
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「私には分かりかねますが…もしも愛し合っておられるのなら、愛はどんな障害も乗り越えると言いますから、大丈夫なのではないでしょうか。」
「そう…そうね。テレサが選んだ道だもの、応援してあげなくちゃね。」
「はい。ラーシュ様も、テレサ様とご一緒であるならその…少しはしっかりなさるのではないでしょうか。」
「そうね、きっとそうだわ!助け合っていってくれるといいわね。」
スティーナは妹を想い、過酷な環境へ自ら選び向かう事となっても、そのように未来は明るいといいと切に願った。
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