【完結】花に祈る少女

まりぃべる

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4. 花祈りの師

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「まあ…!スティーナは本当に素晴らしいね。偉いわよ!」


 スティーナは、花祈りのやり方や、極意を教えてもらう師であるイロナからそのような褒め言葉をいつももらっていた。褒めて伸ばす教え方なのか、怒られた事はなかった。




☆★

 初めてイロナと会った日は、スティーナは胸が張り裂けそうな程にドキドキとしたものだった。


「今日から、花祈りの先生が参ります。教えていただきましょうね。」


 ヤーナに言われ、中庭にと連れて来られたスティーナは顔が強張り緊張していた。
 まだ七歳のスティーナには、それまで自分を訪ねて来た人は居なかったからだった。


(先生、ですって。どんな方かしら。)


 それまでにはスティーナは、六歳の頃から読み書きや足し引きをヤーナから教わっていたが、花祈りの事はまだ誰からも教わってはいなかった。
花祈りの事は、花祈りをする人にしか分からない事も多くある為に、経験者から引き継がれ教わるのが常であったのだ。
 そして相手の言うことが理解出来ると思われる年頃になると、初めて教わる事が出来るのだ。



「スティーナです。よろしくお願いします。」


 その師は、イロナと言って年齢は五十歳に手が届くほどだった。髪は全体的に白く、長い髪を首辺りで一つにまとめ上げていた。

 中庭を一望出来る、少し高台になった四阿にイロナは座っていた。スティーナに姿勢を向けたイロナに、そのように挨拶をした。


「まぁ!可愛らしいお嬢さんだ事!私はイロナと言うわ。
…いい?スティーナ。たった今から私はあなたの師であり、祖母よ。分かった?」


 そう言ったイロナは、席を立ってスティーナの元まで歩み寄り、ぎゅっと抱きしめた。


「スティーナ。あなたはこれから、数奇な運命を背負う事となるでしょう。辛い事も苦しい事もあるかもしれませんが、信頼出来る味方に頼りなさい。
もちろん私もあなたの味方ですよ。」


 そう言って、スティーナの頭をゆっくりと撫でる。
スティーナは今までそんな事をされた記憶が無かったので驚いたが、とても心地良く、胸が温かくなってイロナの体に手を回した。


「はい…!」


 言っている事はあまり良く分からなかったスティーナであったが、それでも頭を撫で続けられたスティーナはとても嬉しく感じたのだった。


「さ、こちらへいらっしゃい。
まずは大切なお話をするわ。」


 そう言って、スティーナの手を持って四阿の椅子に座らせたイロナは、隣に座ってスティーナの顔を覗き込んで手を握りながら話し出した。


「私達〝花姫〟は、真っ直ぐな心を持たなければなりません。邪な考えの願いは、断固として拒否しなければ成りませんよ。私達の力は、間違った使い方をすれば世界を壊しかねませんからね。」

「真っ直ぐな心…」

「スティーナなら大丈夫。あなたは心優しい子だと聞いているわ。
けれどね、これから大きくなるにつれて、様々な誘惑もある事でしょう。それに負ける事のないように。
それから、全ての人の願いは叶えられないと覚えておきましょうね。」

「はい…。」

「さ、今日の座学はこれでおしまい!
喉が渇いちゃったわね。
スティーナ、紅茶を一緒に飲みましょう。あなたの事を教えてくれる?」


 そう言ったイロナは、傍に控えている使用人に目配せをして、紅茶の準備をさせたのだった。
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