27 / 32
27. ウィンフォードが準備したもの
しおりを挟む 入って来たのは先ほど出て行ったケランと、後ろに女性がいた。
「レナ、紹介するよ、彼女はサーザ。これからレナについてくれる。一応役割としたら侍女で、身の回りの事をしてくれるけれど、護衛も兼ねているからちゃんとサーザを連れて歩くんだよ。サーザと一緒であれば、王宮内ならどこへ行ってもいい。サーザ。」
そう言ったウィンフォードは、サーザに視線を移すと、サーザが一歩前へ出て挨拶をする。
「はい。私サーザと申します。誠心誠意お遣いさせていただきます。」
「え!や、そんな…は、はい。ではこちらこそよろしくお願い致します。」
レナは、自分と同じ年齢か年上のような、姿勢もピンとして礼儀正しい女性が自分に対して恭しくお辞儀をしてきたから戸惑ってしまう。
「レナ。戸惑うかもしれないが、何度も言うがこの国では異世界人は特別な存在なんだよ。だから、もっと堂々としていればいい。」
「はい。私はお遣いさせていただく身。ウィンフォード様のようにあごで使って下さって結構ですから。それが私の仕事でございます故何なりと。」
サーザはそう言ってにっこりと笑った。
「まぁ、概ねそういう事だ。あごで使ってやるとサーザは喜ぶぞ。」
「喜んでいるのではありません。それが仕事であり、お仕えさせていただく使命を果たす事は当たり前の事です。」
「サーザはいちいち全力投球過ぎるんだよな…」
サーザの後ろで、ケランがぼそりと呟く。サーザはそれを聞き逃さず後ろを向き、
「何か言いました?」
と睨んだ。それを見たウィンフォードは苦笑いをしながら、レナへと視線を送り、
「じゃぁ、今日はもう遅い。サーザ、レナをよろしく。あとはもろもろの説明もするんだ。」
と言った。
レナは、頷いてお礼を述べる。
「はい。ウィンフォードさん、いろいろとありがとうごさいました。」
レナはふわりと笑顔を向けて、立ち上がってお辞儀をする。
「レナ、気にするな。またな。…あ、レナ、アイビーには伝えておく。早急に王宮内で仕事が出来るようにするから。」
「え!あ、ありがとうございます!」
レナは顔をほころばせてそうもう一度言い、サーザに続いて部屋を出た。
「良かったですね。」
部屋を出て、前を歩くサーザがレナへと言葉を掛ける。
「え?」
レナはというと、違う事を考えていた。廊下は広く天井も高い。廊下の途中に花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられている。
(きっとこの王宮内にも、様々な職業の人がいるのね。掃除をする人に、生花をする人、あとは…)
ウィンフォードは王宮内で仕事が出来るようにすると言ってくれた。自分がもし、トリマーの仕事ではない事をするのなら、何が出来るかと考えていたのだ。
「いえ。ウィンフォード様が、レナ様の仕事を出来るように思案して下さると言われておりましたから。」
「サーザさん、その」
レナが口を開くとサーザは立ち止まり、レナの方を向き、レナの傍まで早足で戻って来た。
こう立ち並ぶと、サーザの方が背が少し高かったのでレナは威圧感を少し感じてしまい、身構える。
「サーザと、お呼び下さい。」
「…サーザ。私は様なんてそんな大層な」
「レナ様。私は今作法をすっ飛ばしまして敢えて言わせていただきます。先ほど、ウィンフォード様は言われておりましたよね、『異世界人は特別だ』と。つまりは貴族と同等、場合によってはそれ以上ともなります。私は仕える身と申しました。レナ様とお呼びする以外あり得ません。」
「…分かりました。」
「レナ様!私には、丁寧な言葉は無用ですよ。」
「え?でも…そう、そうね。お願いしま…お願い。」
「はい!」
まるで、良く出来ました、とでも言うようににっこりとしたサーザはまた、進み始めて言葉を繋いだ。
「希望は極力、レナ様に沿えるようにと申し遣っております。けれども明日からは、この国の事も少しずつお教えしますから、少しずつ学んでいって下さいね。きっと、これから生活する王宮では、街で過ごしていた時とは違って決まり事もありますから。」
「分かり…分かったわ。」
「フフフ。レナ様、きつく申し上げてしまいましたが、無理なさいませんよう。これから慣れていきましょうね。」
レナは、サーザは厳しくも優しい心の持ち主なんだなと思い、これからの王宮での生活も楽しく過ごせるといいなと思った。
「レナ、紹介するよ、彼女はサーザ。これからレナについてくれる。一応役割としたら侍女で、身の回りの事をしてくれるけれど、護衛も兼ねているからちゃんとサーザを連れて歩くんだよ。サーザと一緒であれば、王宮内ならどこへ行ってもいい。サーザ。」
そう言ったウィンフォードは、サーザに視線を移すと、サーザが一歩前へ出て挨拶をする。
「はい。私サーザと申します。誠心誠意お遣いさせていただきます。」
「え!や、そんな…は、はい。ではこちらこそよろしくお願い致します。」
レナは、自分と同じ年齢か年上のような、姿勢もピンとして礼儀正しい女性が自分に対して恭しくお辞儀をしてきたから戸惑ってしまう。
「レナ。戸惑うかもしれないが、何度も言うがこの国では異世界人は特別な存在なんだよ。だから、もっと堂々としていればいい。」
「はい。私はお遣いさせていただく身。ウィンフォード様のようにあごで使って下さって結構ですから。それが私の仕事でございます故何なりと。」
サーザはそう言ってにっこりと笑った。
「まぁ、概ねそういう事だ。あごで使ってやるとサーザは喜ぶぞ。」
「喜んでいるのではありません。それが仕事であり、お仕えさせていただく使命を果たす事は当たり前の事です。」
「サーザはいちいち全力投球過ぎるんだよな…」
サーザの後ろで、ケランがぼそりと呟く。サーザはそれを聞き逃さず後ろを向き、
「何か言いました?」
と睨んだ。それを見たウィンフォードは苦笑いをしながら、レナへと視線を送り、
「じゃぁ、今日はもう遅い。サーザ、レナをよろしく。あとはもろもろの説明もするんだ。」
と言った。
レナは、頷いてお礼を述べる。
「はい。ウィンフォードさん、いろいろとありがとうごさいました。」
レナはふわりと笑顔を向けて、立ち上がってお辞儀をする。
「レナ、気にするな。またな。…あ、レナ、アイビーには伝えておく。早急に王宮内で仕事が出来るようにするから。」
「え!あ、ありがとうございます!」
レナは顔をほころばせてそうもう一度言い、サーザに続いて部屋を出た。
「良かったですね。」
部屋を出て、前を歩くサーザがレナへと言葉を掛ける。
「え?」
レナはというと、違う事を考えていた。廊下は広く天井も高い。廊下の途中に花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられている。
(きっとこの王宮内にも、様々な職業の人がいるのね。掃除をする人に、生花をする人、あとは…)
ウィンフォードは王宮内で仕事が出来るようにすると言ってくれた。自分がもし、トリマーの仕事ではない事をするのなら、何が出来るかと考えていたのだ。
「いえ。ウィンフォード様が、レナ様の仕事を出来るように思案して下さると言われておりましたから。」
「サーザさん、その」
レナが口を開くとサーザは立ち止まり、レナの方を向き、レナの傍まで早足で戻って来た。
こう立ち並ぶと、サーザの方が背が少し高かったのでレナは威圧感を少し感じてしまい、身構える。
「サーザと、お呼び下さい。」
「…サーザ。私は様なんてそんな大層な」
「レナ様。私は今作法をすっ飛ばしまして敢えて言わせていただきます。先ほど、ウィンフォード様は言われておりましたよね、『異世界人は特別だ』と。つまりは貴族と同等、場合によってはそれ以上ともなります。私は仕える身と申しました。レナ様とお呼びする以外あり得ません。」
「…分かりました。」
「レナ様!私には、丁寧な言葉は無用ですよ。」
「え?でも…そう、そうね。お願いしま…お願い。」
「はい!」
まるで、良く出来ました、とでも言うようににっこりとしたサーザはまた、進み始めて言葉を繋いだ。
「希望は極力、レナ様に沿えるようにと申し遣っております。けれども明日からは、この国の事も少しずつお教えしますから、少しずつ学んでいって下さいね。きっと、これから生活する王宮では、街で過ごしていた時とは違って決まり事もありますから。」
「分かり…分かったわ。」
「フフフ。レナ様、きつく申し上げてしまいましたが、無理なさいませんよう。これから慣れていきましょうね。」
レナは、サーザは厳しくも優しい心の持ち主なんだなと思い、これからの王宮での生活も楽しく過ごせるといいなと思った。
1
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!
皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!
処刑される未来をなんとか回避したい公爵令嬢と、その公爵令嬢を絶対に処刑したい男爵令嬢のお話
真理亜
恋愛
公爵令嬢のイライザには夢という形で未来を予知する能力があった。その夢の中でイライザは冤罪を着せられ処刑されてしまう。そんな未来を絶対に回避したいイライザは、予知能力を使って未来を変えようと奮闘する。それに対して、男爵令嬢であるエミリアは絶対にイライザを処刑しようと画策する。実は彼女にも譲れない理由があって...
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜
水都 ミナト
恋愛
マリリン・モントワール伯爵令嬢。
実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。
地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。
「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」
※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。
※カクヨム様、なろう様でも公開しています。
婚約解消と婚約破棄から始まって~義兄候補が婚約者に?!~
琴葉悠
恋愛
ディラック伯爵家の令嬢アイリーンは、ある日父から婚約が相手の不義理で解消になったと告げられる。
婚約者の行動からなんとなく理解していたアイリーンはそれに納得する。
アイリーンは、婚約解消を聞きつけた友人から夜会に誘われ参加すると、義兄となるはずだったウィルコックス侯爵家の嫡男レックスが、婚約者に対し不倫が原因の婚約破棄を言い渡している場面に出くわす。
そして夜会から数日後、アイリーンは父からレックスが新しい婚約者になったと告げられる──
【完結】研究一筋令嬢の朝
彩華(あやはな)
恋愛
研究二徹夜明けすぐに出席した、王立学園高等科、研究科卒業式後のダンスパーティ。そこで、婚約者である第二王子に呼び出された私こと、アイリ・マクアリス。婚約破棄?!いじめ?隣の女性は誰?なんでキラキラの室長までもが来るの?・・・もう、どうでもいい!!私は早く帰って寝たいの、寝たいのよ!!室長、後は任せます!!
☆初投稿になります。よろしくお願いします。三人目線の三部作になります。
役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします
水都 ミナト
恋愛
伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。
事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。
かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。
そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。
クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが…
★全7話★
※なろう様、カクヨム様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる