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19. この国
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あれから、サーザに『ここがレナ様の部屋となります』と言われて通されたのは、王宮の本棟から続く渡り廊下を渡った東棟の二階の一室だった。
部屋はそれなりに広く、入り口入ってすぐには扉の付いていない壁で仕切られた小部屋のような場所があり、そこが侍女の待機する部屋として作られている。
正面には大きな窓が壁一面に設置されておりカーテンを開けると庭が望めて景色もとてもいいが、今は夜なので閉められていた。近くにはソファが窓に向けて置かれている。外を眺める為だ。
左側の壁際には、広いベッドがある。
右側は部屋が繋がっていて、風呂とお手洗い、それに小さめのウォークインクローゼットと化粧台があった。
調度品も、小さな花柄でとても落ち着いていた。
「こんなに素晴らしい部屋…使っていいの?」
「はい。むしろ使っていただかないと困ります。せっかく宛がわれたのですから。」
とにっこりと笑って言ってくれるので、
(まぁ、そうよね。慣れるしかないか…。だってこの部屋だけで、大橋れなの時に住んでいた部屋が幾つ入るか…もう、この世界で生きていくのだから、慣れなきゃね。)
そうは言っても、贅沢には慣れないようにしようと心に誓う。
(自分で働いたら絶対に住めないわよね、こんな素晴らしい部屋には。だからせめて、自分の出来る事をしなくちゃ。)
レナは改めてそう思った。
☆★
翌日。
レナはこの部屋で朝食を食べ、サーザからこの国の王族の話をまず学んだ。
スウォンヒル国の現在の国王は、ドラモンド国王陛下で、息子が一人いて、ダルトン皇太子だ。王妃もいるがなかなか外には出て来ない。
ちなみにウィンフォードの父は、ドラモンド国王陛下の弟だ。
ドラモンド陛下の祖父が国王陛下だった時代に、近隣のとある国が反乱軍によって破られ、それにより王族の血が途絶え、民衆の中から新たな王が輩出される。
その人物は異世界人であり、その人物が首謀者となり民衆を煽って反乱を起こし国王となったと言われている。
それを恐れたスウォンヒル国の当時の国王は、規制を強化する。
異世界人だったとある国の国王はイヌをこよなく愛していたそうで、動物には何か良くない人を騙す力があるのではないかと根も葉もない噂を信じ、動物と理由なく関わってはいけないという決まり事を作ったのもそれの一つだった。
「だから、異世界人も保護という監視下に置くって事ね?」
「でも今はそこまで規制していいのかどうかという意見もあるそうですよ。動物の件もそうです。」
「確かにね。当時は脅威だったでしょうけど、動物には癒す力はあっても人を騙す力なんて有るわけ無いのに。」
「そうですね。人は、疑心暗鬼になると、あり得ない事でも何でも信じてしまいますからね。…さ、では休憩をしましょうか。紅茶を持って参ります。」
そう言ったサーザは、部屋から出て行った。
レナは部屋に一人になり、座っていたソファから外を眺める。
(脅威…きっと当時の国王が良くない政治でもしていたんじゃないの?だから異世界人は声を上げたのではないかな。……ん?私、大丈夫かな。王族にとって、嫌な存在ってか脅威になってない?)
いやいやそんな事ないわ、と頭を横に振って、暗くなる考えを頭から無くそうとレナはして、庭を見やる。
(だって、動物が可哀想だわ。あ、ネコ!ん?あっちにはイヌ。わーよく見ると、この王宮内にも野良っているのね!)
レナは、心を和ませようと庭に視線を向けるとネコやイヌが気ままに歩いていたり、日なたぼっこをしていた。しかし、全体的に毛はボサボサで汚れているのか黒や茶色の動物が多い。
と、サーザが閉めていったはずの扉がいきなり開いて、
「ちょっと!入るわよ!バリウェリーで動物の理髪師だったのはあなた?」
と大きな声を上げて誰かが入って来た。
その声に驚きレナが振り向くと、金髪の女性が仁王立ちで立っていた。
部屋はそれなりに広く、入り口入ってすぐには扉の付いていない壁で仕切られた小部屋のような場所があり、そこが侍女の待機する部屋として作られている。
正面には大きな窓が壁一面に設置されておりカーテンを開けると庭が望めて景色もとてもいいが、今は夜なので閉められていた。近くにはソファが窓に向けて置かれている。外を眺める為だ。
左側の壁際には、広いベッドがある。
右側は部屋が繋がっていて、風呂とお手洗い、それに小さめのウォークインクローゼットと化粧台があった。
調度品も、小さな花柄でとても落ち着いていた。
「こんなに素晴らしい部屋…使っていいの?」
「はい。むしろ使っていただかないと困ります。せっかく宛がわれたのですから。」
とにっこりと笑って言ってくれるので、
(まぁ、そうよね。慣れるしかないか…。だってこの部屋だけで、大橋れなの時に住んでいた部屋が幾つ入るか…もう、この世界で生きていくのだから、慣れなきゃね。)
そうは言っても、贅沢には慣れないようにしようと心に誓う。
(自分で働いたら絶対に住めないわよね、こんな素晴らしい部屋には。だからせめて、自分の出来る事をしなくちゃ。)
レナは改めてそう思った。
☆★
翌日。
レナはこの部屋で朝食を食べ、サーザからこの国の王族の話をまず学んだ。
スウォンヒル国の現在の国王は、ドラモンド国王陛下で、息子が一人いて、ダルトン皇太子だ。王妃もいるがなかなか外には出て来ない。
ちなみにウィンフォードの父は、ドラモンド国王陛下の弟だ。
ドラモンド陛下の祖父が国王陛下だった時代に、近隣のとある国が反乱軍によって破られ、それにより王族の血が途絶え、民衆の中から新たな王が輩出される。
その人物は異世界人であり、その人物が首謀者となり民衆を煽って反乱を起こし国王となったと言われている。
それを恐れたスウォンヒル国の当時の国王は、規制を強化する。
異世界人だったとある国の国王はイヌをこよなく愛していたそうで、動物には何か良くない人を騙す力があるのではないかと根も葉もない噂を信じ、動物と理由なく関わってはいけないという決まり事を作ったのもそれの一つだった。
「だから、異世界人も保護という監視下に置くって事ね?」
「でも今はそこまで規制していいのかどうかという意見もあるそうですよ。動物の件もそうです。」
「確かにね。当時は脅威だったでしょうけど、動物には癒す力はあっても人を騙す力なんて有るわけ無いのに。」
「そうですね。人は、疑心暗鬼になると、あり得ない事でも何でも信じてしまいますからね。…さ、では休憩をしましょうか。紅茶を持って参ります。」
そう言ったサーザは、部屋から出て行った。
レナは部屋に一人になり、座っていたソファから外を眺める。
(脅威…きっと当時の国王が良くない政治でもしていたんじゃないの?だから異世界人は声を上げたのではないかな。……ん?私、大丈夫かな。王族にとって、嫌な存在ってか脅威になってない?)
いやいやそんな事ないわ、と頭を横に振って、暗くなる考えを頭から無くそうとレナはして、庭を見やる。
(だって、動物が可哀想だわ。あ、ネコ!ん?あっちにはイヌ。わーよく見ると、この王宮内にも野良っているのね!)
レナは、心を和ませようと庭に視線を向けるとネコやイヌが気ままに歩いていたり、日なたぼっこをしていた。しかし、全体的に毛はボサボサで汚れているのか黒や茶色の動物が多い。
と、サーザが閉めていったはずの扉がいきなり開いて、
「ちょっと!入るわよ!バリウェリーで動物の理髪師だったのはあなた?」
と大きな声を上げて誰かが入って来た。
その声に驚きレナが振り向くと、金髪の女性が仁王立ちで立っていた。
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