上 下
18 / 32

18. サーザと言う侍女

しおりを挟む
 入って来たのは先ほど出て行ったケランと、後ろに女性がいた。

「レナ、紹介するよ、彼女はサーザ。これからレナについてくれる。一応役割としたら侍女で、身の回りの事をしてくれるけれど、護衛も兼ねているからちゃんとサーザを連れて歩くんだよ。サーザと一緒であれば、王宮内ならどこへ行ってもいい。サーザ。」

 そう言ったウィンフォードは、サーザに視線を移すと、サーザが一歩前へ出て挨拶をする。

「はい。私サーザと申します。誠心誠意お遣いさせていただきます。」

「え!や、そんな…は、はい。ではこちらこそよろしくお願い致します。」

 レナは、自分と同じ年齢か年上のような、姿勢もピンとして礼儀正しい女性が自分に対して恭しくお辞儀をしてきたから戸惑ってしまう。

「レナ。戸惑うかもしれないが、何度も言うがこの国では異世界人は特別な存在なんだよ。だから、もっと堂々としていればいい。」

「はい。私はお遣いさせていただく身。ウィンフォード様のようにあごで使って下さって結構ですから。それが私の仕事でございます故何なりと。」

 サーザはそう言ってにっこりと笑った。

「まぁ、そういう事だ。あごで使ってやるとサーザは喜ぶぞ。」

「喜んでいるのではありません。それが仕事であり、お仕えさせていただく使命を果たす事は当たり前の事です。」

「サーザはいちいち全力投球過ぎるんだよな…」

 サーザの後ろで、ケランがぼそりと呟く。サーザはそれを聞き逃さず後ろを向き、

「何か言いました?」

 と睨んだ。それを見たウィンフォードは苦笑いをしながら、レナへと視線を送り、

「じゃぁ、今日はもう遅い。サーザ、レナをよろしく。あとはもろもろの説明もするんだ。」

 と言った。
 レナは、頷いてお礼を述べる。

「はい。ウィンフォードさん、いろいろとありがとうごさいました。」

 レナはふわりと笑顔を向けて、立ち上がってお辞儀をする。

「レナ、気にするな。またな。…あ、レナ、アイビーには伝えておく。早急に王宮内で仕事が出来るようにするから。」

「え!あ、ありがとうございます!」

 レナは顔をほころばせてそうもう一度言い、サーザに続いて部屋を出た。



「良かったですね。」

 部屋を出て、前を歩くサーザがレナへと言葉を掛ける。


「え?」


 レナはというと、違う事を考えていた。廊下は広く天井も高い。廊下の途中に花瓶が置かれ、色とりどりの花が生けられている。

(きっとこの王宮内にも、様々な職業の人がいるのね。掃除をする人に、生花をする人、あとは…)

 ウィンフォードは王宮内で仕事が出来るようにすると言ってくれた。自分がもし、トリマーの仕事ではない事をするのなら、何が出来るかと考えていたのだ。


「いえ。ウィンフォード様が、レナ様の仕事を出来るように思案して下さると言われておりましたから。」

「サーザさん、その」

 レナが口を開くとサーザは立ち止まり、レナの方を向き、レナの傍まで早足で戻って来た。
こう立ち並ぶと、サーザの方が背が少し高かったのでレナは威圧感を少し感じてしまい、身構える。

「サーザと、お呼び下さい。」

「…サーザ。私は様なんてそんな大層な」

「レナ様。私は今作法をすっ飛ばしまして敢えて言わせていただきます。先ほど、ウィンフォード様は言われておりましたよね、『異世界人は特別だ』と。つまりは貴族と同等、場合によってはそれ以上ともなります。私は仕える身と申しました。レナ様とお呼びする以外あり得ません。」

「…分かりました。」

「レナ様!私には、丁寧な言葉は無用ですよ。」

「え?でも…そう、そうね。お願いしま…お願い。」

「はい!」

 まるで、良く出来ました、とでも言うようににっこりとしたサーザはまた、進み始めて言葉を繋いだ。

「希望は極力、レナ様に沿えるようにと申し遣っております。けれども明日からは、この国の事も少しずつお教えしますから、少しずつ学んでいって下さいね。きっと、これから生活する王宮では、街で過ごしていた時とは違って決まり事もありますから。」

「分かり…分かったわ。」

「フフフ。レナ様、きつく申し上げてしまいましたが、無理なさいませんよう。これから慣れていきましょうね。」

 レナは、サーザは厳しくも優しい心の持ち主なんだなと思い、これからの王宮での生活も楽しく過ごせるといいなと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...