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7. 刃物は高い

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 歩みを進め、鍛冶屋に着いた二人は、エイダが先に店に入った。

 どうやら、鍛冶屋に刃物全般が売っているらしい。
レナは入り口から、店の中に飾られた様々な種類の刃物を見て驚いた。

(本当にいろんな種類の刃物があるのね…!長い包丁みたいなものや、剣のような物や、小さい物だと糸切りばさみみたいなものとかがあるわ。でも…うーん……あ!あれが似ているわ!)

 ハサミはいろいろな種類があるが、レナがこれだと思う物が無かった。
ただ、似たようなハサミはあったがレナは人間の髪を切る物だろうと思った。

「いらっしゃい。何をお探しで?」

「済まないが今日は買わないがね、値段を見せてもらいたくて来たんだ。」

 奥のカウンターに座っていた恰幅のいい男性店員が立ち上がり、そう声を掛けられたエイダは答えた。

「なるほどね。うちはバリウェリーにある鍛冶屋で一番だと思っているよ!だから安心して選んでくれ!次回来た時に購入してくれるとありがたいな!よし、じゃあどういうのが欲しいんだい?さすがに刀剣では無いだろう?包丁かい?」

「いや、違うね。レナ、どういうやつなんだい?お目当てのはあったかい?」

 店員に聞かれたエイダがレナへと話を振った。
店内の商品をいろいろと見ていたレナも、はっとして店員とエイダを見つめ答えた。

「ええと…動物の毛を切るハサミなんて無いですか。」

 レナは、見た目無さそうだと思ったが、もしかしたら店の奥にあるかもしれないと淡い期待を持ちつつそう問いかける。

「動物?ヒツジかい?このハサミだったら、ヒツジの毛が良く切れると評判だよ。なんだ、ヒツジ飼いかい?」

 店員はそう言って、カウンターのショーケースに飾られた、持ち手が丸く湾曲している糸切りばさみのようなハサミを指指した。

「ヒツジ飼いじゃないよ!…レナ、どうだい?こういうハサミかい?」

「うーん…じゃぁ、人の髪の毛を切るハサミはありますか?」

「違うのか?人の髪の毛?あんた、理髪師か?だったらこっちだな。」

 今度は、レナも見た事あるハサミが出てきた。美容院で、鏡越しに見るとカットしてくれる人が持っているようなハサミだった。

(ヒツジとはちょっと毛並みが違うし、扱い慣れているのに似ている形のが、使いやすいだろうなぁ。刃先の長さが短くはあるけれど。)

 レナは見せてもらったハサミを見比べてそのように思った。
しかし、ハサミは置いてあるが値段が書いてはいない。なのでレナは店員に聞いてみる事にした。

「これって、お幾らなんですか?」

「あぁ、それは切れ味がいいし、ものがいいからな。」

 そう言った店員は右の掌を広げた。

「五?五ダルかい?」

 エイダは、その店員の掌を見て呟くと、店員は吹き出した。

「馬鹿言ったらいけねぇよ!五ダルじゃあそこいらで売ってるパンだって買えねぇ。パンだってだいたい三百ダル前後だろ?ここにあるのは皆、丹精込めた自信作ばかりさ!それは五十万ダルだね。」

「五十万ダル!?」

 ここのお金の呼び名がダルと言う。
 レナもパンを買ったり、靴磨きで稼いだ金額を見て、こちらの世界へ来る前と相場はなんとなくだが似たようなものだと思った。だから五十万ダルと言われ、

「えっ!?」

(ハサミが五十万円!?)

 とレナもとても驚き、そして落胆した。

(五十万か…そんなに貯めるまで、どのくらい日数がかかるのかなぁ。)

「なんだい?舐めてもらっちゃ困るぜ!うちは一流なんだからな!さぁ、たんと稼いだらまた来な!」

 エイダとレナはすごすごと店を出た。

「んー、刃物は高いと思ったんだが、あんなにするんだねぇ……。ま、レナのやっていたという、〝とりまあ〟はここでは難しいだろうし、しばらく私に付き合っておくれよ。」

 エイダはそう言ってレナの肩をぽんと叩き、慰めた。
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